いらっしゃいませ。そしてお帰りなさいませ。
庄内多季物語工房へ、ようこそおいで下さいました。
山形県庄内地方は、澄んだ空気と肥沃な土壌、そして清冽(せいれつ)な水に育まれた、新鮮で滋味豊かな野菜や果物の宝庫です。
それに加えて、時に圧倒的な光景に遭遇する土地でもあるのです。
今回、物語収穫人である私、佐藤美月が遭遇致しました圧倒的な光景は、どうぞこちらから、ご堪能下さいませ。
私の場合、季節によっては、出勤時間が黄昏時の真っ只中になることがあります。
それと言うのも、勤め先では交替勤務を採用していて、日勤のシフトは勿論のこと、夜勤のシフトも担当することがあるからです。
夜勤のシフトの時には、大体19時過ぎに、自宅の駐車場から愛車で出発しています。
その時に既に、熾火(おきび)のように燃え盛る情熱的な夕焼けの腕(かいな)に、すっぽりと抱かれることがあるのです。
その日は、夕焼けからの招待状は、自宅の窓辺へと、既に届いていました。
透明感のあるマンダリンオレンジに染まった夕焼け空が、繊細なグラデーションを描きながら、幾つもの層になって、世界を包み込んでいたからです。
まるでマンダリンオレンジに輝く光が、洪水になって、いちどきに押し寄せて来ているようでした。
そんな夕焼けの圧倒的な美しさに胸を震わせつつ、愛車に乗り込んで出発し、陸橋に差し掛かった時でした。
その歩道で立ち止まっている、青い体操着服姿の男子高校生二人が、目に止まりました。
一人が、夕焼け空に向かってスマホを翳(かざ)していて、もう一人は手ぶらでしたが、隣の友人と同じ方向に顔を向けていました。
部活帰りなのかなあと思いつつ、愛車で彼らをするりと追い越した時に見えたのは、スマホの画面に映っている、マンダリンオレンジの光に、ひたひたと濡れそぼっている夕焼け空でした。
一期一会の夕焼け空を、青春の日の記念として、スマホのカメラに収めようとしているところでした。
それは、まだ若い純真な彼らの心を、美しい夕焼け空が鷲掴みにしている瞬間でした。
その時、雄大で美しい光景に感動する心は、世代を越えても変わらないのだと思い、ほんのりと嬉しくなりました。
それから、陸橋を過ぎたT字路で左折すると、間もなく差し掛かるのが、鶴岡サイエンスパークです。
その広々とした敷地には、鶴岡市が誘致した、慶應義塾大学の研究所が建っているのですが、木々もこんもりと生い茂っていて、公園のように緑地の多い、憩いの場所でもあります。
歩道も広く取られていて、犬のリードを引きなから、のんびりと散歩している人達を良く見掛けます。
その時も、然り気無くセンスの良い服装に身を包んだ、上品そうな熟年のカップルが、歩調を合わせてのんびりと散歩しているところでした。
きっとそのカップルの間では、夕焼けが綺麗だねえ、そうだねえという微笑ましい会話が交わされているのだろうと予測されました。
彼らの人生にも、夕焼けが登場しているところでした。
そんなふうにして、夕焼けに意識を向けていると、沢山の人達の人生と繋がれるようになるのかも知れません。
そこから五分ほど走ると、早くも街中を出て、ひたすら農道を走る流れに突入します。
その間にも、夕焼けの寿命は刻々と削り取られていき、自宅を出てから十分ほど経った頃には、ワイン色の夕闇がしっとりと広がっていて、田園を見下ろす山々の陰影が濃くなっていました。
その時に私の愛車は、夕焼け観測所から速やかに切り替わって、夕闇観測所へと変化していきました。
その小さな移動式の観測所は、時々刻々と変化していくのが特徴で、青空観測所になる時もあれば、三日月観測所になる時もあります。
または、雨粒観測所になる時もあれば、彩雲観測所になる時もあります。
それは、片道僅か三十分ほどの開館時間に過ぎませんが、そこから観測出来る雄大な光景は、常に美しく変化に富んでいて、私の心を鷲掴みにし、豊かに耕してくれているのです。
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佐藤美月は、小説家・エッセイスト・ライター・コラムニストとして、活動しております。
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