夕陽の王国に捧げるタペストリー〈全十幕~第八幕~〉 | 佐藤 美月☆庄内多季物語工房 ~心のエネルギー補給スペースへようこそ~

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「ああ。そうしたけりゃ、そうするが良い。

誰も止めやしないさ

「…‥だけど、今まで、夕陽の王国への貢ぎ物に選ばれた娘で、地上に戻ってきた人は、誰一人として、いなかったわ。

彼女達は、一体何処に行ったの?

すると男は、何食わぬ顔で、肩を竦めてみせた。

「…‥さあな。それは彼女達が、俗世間に戻らないことを、選択したからだろう。

俺の知ったことじゃない。

とにかく今聞いているのは、あんたの意向だ。

一体、どうしたいと思ってるんだ?

シルフィーの両目からは、大粒の涙が、みるみるうちに伝い落ちた。

「…‥どうしたいもこうしたいも、ないわ。

この五年間、私の傍にいたのは、あなただけだった。

私は刺繍をしながら、ずっとあなただけを想い続けたの。

あなたに心を残したままで、地上に戻っても、生きていくのが空しいだけだわ。

私が選ぶ道は、たった一つよ。

あなたの傍で、あなたと共に生きること。

…‥私を、夕陽の王国に連れて行って

男は、シルフィーの言い分を聞くと、うんざりしたように、溜息を漏らした。

「夕陽の王国には、生身の人間は、立ち入れないことになっている。

気温が高温過ぎるんだ。

どのみち、夕陽の王国に入る手前で、全身が溶けて、死んでしまうだろう。

…‥それでも、俺と一緒に、来ると言うのか?


お月様あしあとお月様あしあとお月様あしあとお月様あしあとお月様あしあとお月様あしあとお月様あしあとお月様


・・・夕陽の王国に捧げるタペストリー〈全十幕~第九幕~〉へと続く・・・



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