イースター休みを迎えているオークビルからこんにちは。今日はGOOD FRIDAYというお休みで、朝の内、教会のミサに行く人で道路はけっこう賑わっていました。
我が家では本日さして凝った料理をする予定はないので(日曜には何か作るかも)、頑張って記事を書きあげたいと思います。果たして男子まで行きつけるのか?
あ、そうだそうだ。昨日、りくりゅうがスターズ・オン・アイスを降板するというニュースが入ってきましたね。原因が木原選手の体調かと思いきや三浦選手の肩の負傷だったと判明。世界選手権フリー演技の前の6分間練習でスロー3ルッツを試みた際に転倒し、亜脱臼を負っていた、ということでした。
日本に帰ってファンの前で銀メダル獲得の報告をするとともに、カムバックしたりくりゅうの滑りを披露したかっただろう、と推測されます。二人とも本当に残念に思っていることでしょう。
ファンにとっては降板もさることながら、三浦選手の負傷はショッキングなニュースだったと思いますが、これを知った上で改めてあのフリーの演技を観ると、アスリートとしての三浦選手の気持ちの強さに驚嘆します。また演技終了後の彼女の一連の表情についても我々は別の感情がこみ上げてきますよね。
この時の様子に関してはいずれ本人から語られるかも知れません。それまでは一刻も早く回復するように、そして二人とも日本でのオフ期間を癒しと充電のためにフル活用してくれることを祈りましょう!
ついでに、と言ってはなんですが、私も来週の月曜日には日本に向けて出発します。横浜でのスターズ・オン・アイスの初日公演に今のところ、足を運ぶ予定ですので、会場で白髪頭のデカいオバちゃんを見かけたらぜひお声を掛けてやってください。
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モントリオール・ワールドで一番、遅くに始まったのがアイスダンスでした。
試合は金曜にリズムダンス、土曜にフリーダンスという日程でしたが、今大会で懸念されたのはカナダのローランス・フルニエボードリー&ニコライ・ソーレンセン組に関するメディアの報道の仕方、でした。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、ちょうど1月のカナダ選手権直前にUSA TODAYという媒体で「ソーレンセン選手がカナダのスポーツ・インテグリティ委員会から(過去に起きたとされる)性暴力の疑いで調査を受けている」という衝撃的なニュースが報道され、結果的にフルニエボードリー選手と大会を棄権する事態になりました。
その後、四大陸選手権、そしてモントリオール・ワールドに出場が決まったわけですが、おそらく記事を書いたアメリカの記者が大会取材に現れるであろうことが予想されました。
まあ詳しいことは省きますが、おおむねミックスゾーンなどでの騒ぎは起らず、無事にアイスダンス競技が執り行われたので安心しました。
またいつかこのテーマについて書いてみたいこともあるので、準備が出来たら記事をアップします。
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さて、このアイスダンスに関してもほぼ、私の個人的な興味に基づいて掻い摘んでいくだけになりますので、ご了承ください。
過去5年ほどのグランプリ大会や主要大会に行くと、だいたい3組に1つの割合でモントリオールのIAM(Ice Academy of Montreal)に所属するチームが出場しているのだ、ということに気づきます。そのため、キスクラやミックスゾーンには常にこのアカデミーのコーチやスタッフが集っていて、その勢力の強さに驚かされます。
アイスダンスはフィギュアスケート4種目の中でも最も「政治力」がものを言うとされていますが、これだけ多くのチームを抱えているのはそれぞれの所属連盟とチャンネルを作り、その国々のジャッジを味方につけるためだ、というのが巷の評判です。
平昌(ヴァーテュー&モイヤー)・北京(パパダキス&シズロン)で優勝したのはいずれもここのチーム。世界選手権は2015年から2024年までの9大会中8回、ヴァーテュー&モイヤー、パパダキス&シズロン、そしてチョック&ベイツの3組が優勝しています(2021年大会はパパシズが欠場してロシアのシニツィナ&カツァラポフが優勝)。
それだけではなく、トップ10に入ったチームの所属先を調べると、IAMの圧倒的な強さが浮き彫りになるはずです。
そんな中、カナダのトップチームであるパイパー・ギレス&ポール・ポワリエはある意味、異色なのだと言えましょう。コーチのキャロル・レーンが最近のインタビューで面白いことを言っていて、「私はアイスダンスの『コストコ』になるつもりはありません。うちはもっと『ブティック(小規模な専門店)』志向なのです)」と、IAMに対する強烈な皮肉をかましていました。
キャロルさん、イギリス人特有の辛辣なユーモアのセンスを持っていらっしゃいます。
私は長年、このパイポーたちのファンを自称していて、彼らが2019年のGPスケートカナダでグランプリ大会初優勝を納めた時にミックスゾーンで大もらい泣きをしたのでした。二人ともとっても良い人たちで、いつも笑顔を見せ、決して文句を言わず、常にポジティブであるところが人気の秘訣です。
なので今大会でも何とか、納得の行く演技をして良い結果を得てほしいと思っていました。
ところがRDでは自国開催のワールドのプレッシャーがあってか、いつもの彼らの溌溂とした滑りが見られませんでした。どこか慎重で、ツイズルにもキレがなかった。ああー、これはヤバい、と思ったことでした。
首位がチョック&ベイツ、2位がイタリアのギニャール&ファブリ、そして3位がパイパーとポール。昨年の埼玉の再現か?と落胆したのですが、フリーダンスでその予測が引っくり返りました。
今シーズンのパイパー達は「嵐が丘」というFDのプログラムを演じているのですが、昨年の「エヴィータ」よりも少々難解であると言われていました。キャロルさんの解説では、憎み合いながらも愛し合い、決してお互いから離れられないヒースクリフとキャシーの物語を描いているのだそうですが、あまり馴染みのない音楽であるために、賛否両論ありました。
しかしシーズンが進むにつれ、私はどんどんこのプログラムに惹かれていきました。なんと言ってもパイパーの狂気じみた表情や、プログラムのディーテールが素晴らしい。そしてポールは大柄ではないけれど、どんな難しいリフトやホールドでも決して滑りが乱れず、パイパーをしっかりとサポートできる強者です。
モントリオールのFDの夜、最終滑走者として大歓声の中、パイパーたちは今シーズン最高の演技を見せてくれました。鳥肌が立つとはこのことです。私はきっと彼らがフリーダンスで首位になるだろうと思ってはいましたが、順位が変わるかどうかは咄嗟に計算できませんでした。
結果的にひとつ上がって見事、銀メダルに。ああ、涙、涙。おめでとう、パイパー、ポール。
彼らも今、日本でスターズ・オン・アイスに出演中ですね?日本のファンの皆さんの前で演技できることをいつも嬉しく思っている彼らですから、きっと満喫していることでしょう。
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もうひと組、特筆に値するのがカナダの3番手(まあ今となっては2番手、ともいう)マージョリー・ラジョワ&ザカリー・ラガ組です。
ここ数か月、マージョリー選手が脳震盪の後遺症で練習ができず、ナショナルズと四大陸選手権を続けて欠場していました。しかしグランプリシーズンの成績をもとに無事、ワールドに選出され、今大会で久しぶりに彼らの演技を観ることができました。
今シーズンの80年代音楽をテーマとしたRDでは、ラジョワ&ラガ組の「スリラー」が私は一番、ハマっている、と思っていました。衣装も完璧に再現されているだけに、演技力はずば抜けている彼らにはぴったりのプログラムでした。
そしてフリーダンスでは2シーズン続けてしっとりした曲調のぷグラムを演じています。昨シーズンの「ホワイト・クロウ」が披露された時には「え、マージョリーたちってこういうキャラも演じられるんだっけ?」という驚きがありましたが、ザカリーは実はプロレベルのピアニストであることを知り、納得しました。
正直、今大会のフリーダンスでは最近台頭して来ているイギリスのフィアー&ギブソンよりも上に行くのが妥当だと思いましたが、5位に甘んじました。今後、その序列が変わることを願っています。(ちなみにフィアギブもラジョラガもIAM所属です)