1月前半のフィギュアスケート大会:ヨーロッパ選手権とカナダ選手権③ | 覚え書きあれこれ

覚え書きあれこれ

記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

カナダ選手権のペア以外の競技についてざっと感想を述べます。

 

従来、カナダのフィギュア界はアイスダンスが最も安定して良い成績を残してきました。平昌オリンピック後にスター選手が揃って引退した後も、この種目だけはワールドで表彰台に近い順位を保ち、メルトダウンが少なかったのです。

 

中でもカナダのトップチーム、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組は過去二度(2021年ストックホルム、2023年さいたま)のワールドで銅メダルを獲得しており、今大会でも圧倒的な優勝候補でした。

 

なのでむしろ、2位、3位がどうなるのか、というところが注目点だったのですが、皆様もご存知の通り新年早々に二番手のニコライ・ソーレンセンに関する不穏なニュースが舞い込み、フルニエ・ボードリーとのエントリーが取り消されました。

 

その直前に、マージョリー・ラジョワ&ザカリー・ラガ達も棄権がアナウンスされ、一気にアイスダンス競技のエントリーが少なくなってしまいました。

 

ラジョワ&ラガの棄権はマージョリーが脳震盪を負ったため、とされていますが、その後四大陸選手権にエントリーされたので回復に向かっていると思われました。ところが本日(カナダ時間の1月19日)にその出場が取り消され、とても残念です。

 

またソーレンセンたちも四大陸に出場すると発表され、カナダ連盟の決定は大きな波紋を呼び起こしています。今後、まだ動きはあるかも知れません。

 

ギレス&ポワリエはこれまで突飛な衣装を用いたり、キャラクター色の強いテーマを選んだりしてきていたので、今シーズンの「80年代音楽」が課題となったRDではどのようなプログラムを披露するのかが期待されていました。

 

個人的にはプログラム後半にフィーチャーされている「Addicted To Love」は大好きな曲なので嬉しいのですが、どうもパイパーの衣装の方向性が解せない。ロバート・パーマーの公式動画に出て来るような雰囲気を期待していたんですよね。

 

 

 

 

 

ところが実際はこういう感じ:

 

 

 

 

いつかパイパーにこの衣装のコンセプトを聞いてみたいと思いました。

 

一方、フリーダンスの「嵐が丘」は今シーズン一番好きなプログラムです。まさに彼らにしか演じられない、ドラマチックな振り付けで、見るたびにゾクゾクします。

 

 

 

 


結局、表彰台の2位と3位に上がったのはいずれもIce Academy of Montreal のマリージャード・ロリオー&ロマン・ルガック、そしてアリシア・ファブリ&ポール・アイヤーでした。

 

 

 

 

 

 

2位のロリオ―達は本日の時点で四大陸への選出が発表されています。

 

 

 

 

彼らのフリーダンスはティム・バートンの映画「Corpse Bride」のサウンドトラックを用いていて、とても面白いです。

 

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さて、シングルは女子も男子もかなり深刻な状態で、誰一人としてSPとFSの両方をちゃんと揃えた選手がいませんでした。(あるいはノーミスであったとしても難度が低かった、か)


男子はローマン・サドフスキー選手がとにかく大自爆。今シーズン、彼はまず脚を怪我して、それから回復したと思ったら今度はロスバゲやフライトの遅延で試合に出られなかったり、とさんざんなハプニングに見舞われました。しかしようやく出場したナショナルズでもSPから迷走し、フリーでも挽回できませんでした。なんと言ってよいやら。


昨年はキーガン・メッシングに次いでの準優勝だったコンラッド・オーゼル選手。彼もまた、大技を生かせない癖があって実に歯がゆいスケーターです。SPでつまずき、フリーでは巻き返しをはかりましたがあまりにも出遅れました。


優勝はウェスリー・チウ選手。過去二度のナショナルズ銅メダリストなのでそう驚くべきではないのかも知れません。ただジュニア・ワールドでも過去二度、SPでは2位に入ったりしていましたが、フリーで持ち崩す、というパターンでした。そういえばNHK杯にも出ていましたね。

 

 

 

 


ウェスリー選手はとても綺麗なスケーティング・スキルを持っていますが、ちょっと線が細いというか、インパクトがあまりないのが残念です。まだ21歳なのでこれからパワーが出て来るのでしょうか?

 

2位はアレクサ・ラキック選手、19歳。今年からシニアで戦っています。かつてケヴィン・レイノルズを育てたジョアン・マクラウドコーチに師事しています。フリーでクワッドを入れて来ましたが着氷できず、しかしSPとFSをほぼまとめて来たのでこの順位に留まりました。

 

そして話題をさらったのが3位に入ったアントニー・パラディ選手。2007年3月生まれ、現在16歳。

 

以前からなかなか大胆な衣装や化粧、マニキュアなどを駆使して人々の注目を浴びていましたが、今大会ではショートで3位につけ、しかもフリーで途中、スケート靴の紐が切れるというアクシデントに遭遇しました。

 

ところが焦るわけでもなく、ごく冷静にレフリーに近づいていき、マイナス5点のペナルティを承知の上で中断を求めました。

 

そしてベンチで紐を修理して、また中断した箇所から最後まで滑り切り、見事に3位に。

 

彼の演技はこの動画の2:09:06からです。どうぞパラディ君の落ち着いた振る舞いをご覧ください。

 

 

 

 

 

ナショナルズの結果を受けて、四大陸にはチウ選手、オーゼル選手、そしてサドフスキー選手が派遣されます。おそらくチウ選手はよっぽどのことが無い限り、ワールドに選出されると見られています。となると残りのひと枠を二人で争う、ということになりますね。

 

パラディ選手とラキク選手はジュニア・ワールドへの派遣が決まりました。

 

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そして最後に大波乱が起こった女子シングル。今年のワールドではひと枠しかないところ、異議なくマドリン・スキザス選手がそれを手にすると思われたのですが、フリーで大崩れして2位に終わりました。

 

首位に躍り出た、というか残されたのがSPで二位だったカイヤ・ライター選手。オータム・クラシックで憧れの坂本選手に触発されたのか、フリーの衣装を新調したのがこれ:

 

 

Olympic.com より

 

 

似すぎだろ。↓

 

 

 

 

Asahi Shimbun より

 

 

早速、カナダ連盟の広報のカリンちゃんに写真を送ったところ、彼女も笑っていました。今度、カイヤちゃんに「カオリ選手へのオマージュだったのか確認しといて」と頼んでおきました。

 

なお、問題はチャンピオンになったライター選手がワールドに行こうにもSPのミニマムを持っていない事なのです。そういう事態を見越してもっとB級大会に行かせておけば良かったのに、とこれまたカナダ連盟が非難されています。

 

彼女はユースオリンピックに出場が決まっているのでバヴァリアン・オープンに行けるでもなし。ジュニアワールドにも行くのでミニマムを獲れる機会がほとんど残されていません。

 

スキザス選手は一方、四大陸選手権に出場して、ナショナルズでの惨憺たる結果が一度きりの迷走であったことを示さなければなりません。さあどうなる?

 

 

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なお、この度のナショナルズの観客数があまりにも少なかったことがそこかしこで取り上げられていました。大会期間中、カルガリーが体感マイナス50℃という史上まれに見る大寒波に見舞われたことは事実だとしても、ガラガラの客席は本当に寂しい限りでした。

 

選手たちにとってもシーズン最大のイベント、であるケースがほとんどで、もっと盛り上がった雰囲気の中で演技したかったことでしょう。

 

チケットが高すぎた、宣伝がほとんどされていなかった、近郊のスケートクラブに無料招待券を配るべきだった、などなどの批判が殺到していましたが、連盟は事態を深刻に受け止めていることと思いたいですね。

 

 

最後になりましたが、大会が全て無料のライストで観戦できたのは良かったと思いました。Dailymotion というちょっとマイナーな媒体だったのは問題だったかも知れませんが、ホストと解説者にはテッド・バートンとケイトリン・オズモンドがシングル競技を、そしてカースティン・ムアタワーズとケイトリン・ウィーヴァーがカップル競技を担当し、良い仕事をしていました。

 

現役時代にワールドレベルで活躍したスケーター達だけあって、当然のことながら技術的な面でのコメントが冴え、視聴者に多くの学びの機会を与えてくれました。

 

特にケイトリン・オズモンドはなかなか鋭く、ユーモアたっぷりながらもミスをしっかりと指摘して、楽しく聞くことが出来ました。後輩たちもきっと2018年に世界女王に輝いたケイトリンのコメントに素直に耳を傾けることでしょう。

 

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以上でカナダ選手権の感想記事を終えます。(シンクロのジュニア、シニア大会も同時に開催されていたのですが、見ていなかったのでスルーします。悪しからず。)

 

 

さあ、来週は全米選手権、そして翌週はいよいよ四大陸選手権が待っています。

 

次の記事では現在のオークビル・リンクの模様を少し、お伝えしようかと思っています。

 

お楽しみに。