2022年NHK杯を終えて③:その他、雑感 | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

この度のNHK杯の模様はISUのライブストリーミングやアーカイブでフォローしました。

 

よって解説はISUの公式のものになるのですが、イギリス大会まではそれがマーク・ハンレッティさんでしたね。

 

 

 

 

プロのアイスダンサーであるマークさん、アイスダンス競技の知識はもちろんのこと、その他のシングルやペア競技の解説も素晴らしいです。下調べがしっかりできているし、選手の名前を正確に発音してくれる。そして技術的な面では的確なコメントをしつつも、視線が温かく、聞いていて心地よい。

 

そこへ行くと、テッド・バートンさんはそこそこ、良いのですが、あまりにも名前の発音のミスが多くて耳障り。とっても残念です。

 

日本の選手やイタリアの選手に関しては、たいてい書いてある通りに読めばよいのに、どうやったらここまで間違えられるのか、というのが多々、ありました。

 

挙句の果てにはオランダとフランスの国旗が似ているから、と選手の出身国まで間違えたりして。。。

 

頼みますわ、ほんまに。

 

まあしかし、ひとむかし前に比べたら全競技、ライブで見られるようになったのですから文句は言いますまい。この点において、カナダ人のテッドさんの功績はものすごく大きいんですよね。地味にジュニアGPのライストから始めて、徐々に主要大会のライストもするように、とISUを説き伏せたのは彼なのですからね。

 

 

解説で言えば、高橋成美さんの大会中のものは聞けなかったのですが、その後の動画で本郷理華さんとNHK杯を振り返っているものを見ました。面白い!

 

 

 

 

 

彼女のコメントは元選手(しかもペア)ならではの視点が盛り込まれていて、たとえばデス・スパイラルでの注目点などは本当に勉強になりました。

 

 

あと、大会アンバサダーを務めた宮原知子さんと田中刑事さんの人選はばっちりでしたね。インスタグラムでのレポーティングは秀逸でした。

 

 

 

 

意外な舞台裏のリアクションや、選手たちの素のコメントがとても新鮮でした。特に坂本選手のフリー後の姿が最高に楽しかったです。

 

今後もぜひ、この企画は続けてほしいです。

 

さいたまワールドでもどうですか?

 

 

 

さて、では競技別に感想を:

 

 

ペア

りくりゅうと同じく、スケートカナダに出場していたチャン&ハウ組がここでも銀メダル、そしてカナダの若手のホープ、マッキントッシュ&ミマール組が銅メダルを獲得しました。

 

ぶっちゃけて言うと、スコアで200点に到達しない組がGP大会でメダルを獲れるのはちょっと問題なのです。メーガン・デュハメルさんも言ってますが、SBSで二回転ジャンプを跳んでるのにびっくりします。しかもそれで優勝したり、ね。

 

メーガンの最新インタビューはこちら:

 

パート1
“Pair skating is in a major rebuilding phase now” Interview with Meagan Duhamel

 

パート2

“One thing I’ve learned as an athlete, and one thing I try to tell people, is a happy athlete is a successful athlete.” Interview with Meagan Duhamel

 

 

2018年の平昌五輪がペアの黄金期ではなかったか、とメーガンはインタビューで聞かれていました。銅メダルを獲ったデュハメル&ラドフォード組は確かにフリーでスロー4回転サルコーを跳んでるし、サフチェンコ&マソー組とスイ&ハン組の金メダル争いはとてつもなく高レベルでした。

 

平昌後、採点システムが変わったりしているので必ずしも比較はできませんが、北京五輪でもスイ&ハンは4回転ツイストを組み込んでいたし、ジュニアでは3-3の連続ジャンプを跳んでいるチームも出て来ていました。

 

ファイナルではようやく、りくりゅうとアメリカのクニエリム&フレイジャー組の争いで盛り上がるでしょうが、やはり多くのチームが熾烈な戦いをすることで全体のレベルが上がって来るわけですから、現状のままでは物足りないですよねえ。

 

 

まあそんな中、ブルック・マッキントッシュ&ベンジャミン・ミマール組の登場は明るいニュースです。もともとカナダはペア競技に強い国だったので、彼らが順調に育ってくれることを祈っています。

 

それにしても大きいわ、ベンジャミン君。そびえてる。

 

 

 

 

 

女子:

 

坂本選手が優勝候補だった大会でしたが、世界チャンピオンだからと言ってどの大会も優勝するとは限りません。シーズンにはアップダウンがあり、これはまだ前半なのですからファイナル、全日本選手権を経て後半に向けて調整してくることは間違いないでしょう。

 

特に日本女子の場合は国内での争いが厳しいわけですから、どこにピークを持ってくるのかを見極めるのは難しいですね。

 

この大会では何となく、坂本選手のジャンプが全て、斜めってるような感じがしました。しかし冒頭の2回転アクセルは、来ると分かっていても毎回、その飛距離に唖然とします。

 

優勝したイエリム・キム選手は、何シーズンも前から見ているからか、勝手にベテランだと思っていましたが、まだ19歳と聞いてびっくり。とてもエレガントな印象ですが、ジャンプはものすごくパワフルですね。

 

韓国の女子の特徴として、トリプル・ルッツ+トリプル・トウの連続ジャンプが得意、というのが私のイメージなんですが、彼女も大きなコンビネーションを跳びます。

 

自分が優勝したのだ、と気が付いた時のキスクラでの反応がとてもかわいかったですね。

 

住吉選手、フリーの冒頭の4回転ジャンプで激しく転倒した時は大丈夫かと心配になりましたが、そこからどうやって立て直して最後まで滑れたのか、不思議でさえあります。スケーターたちは本当にタフ、というか、本番中に氷に叩きつけられてもサバイバル本能が働くようで、即座に立ち上がり、音楽に遅れないようにプログラムを続けますよね。

 

痛みを感じるとか、息が乱れるとか、そういうことも全ていったんシャットアウトするのでしょうか。

 

何はともあれ、滑りぬいて、見事に勝ち取った銅メダルでした。日本女子の未来は明るい。

 

GPスケカナで優勝した渡辺選手、少し残念な結果となってしまいましたが、ファイナルの夢が絶たれたわけではありません。スポーツは最後まで戦って見なければわからない、とはよく言われることなので、今週のフィンランド大会をじっと見守っていることでしょう。

 

 

アイスダンス:

 

女子に続いて意外な結果、だったと言えるでしょう。アメリカのマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組が今シーズンは世界選手権でも優勝候補とされていただけに、ここでカナダのローランス=フルニエ・ボードリ&ニコライ・ソーレンセンに負けたのは番狂わせでした。

 

ただ、この2組は同じ練習拠点のリンクメイトでもあるので、おそらくお互いの間では力が拮抗していることを誰よりも察知していたことでしょう。

 

モントリオールの Ice Academy には今シーズンも多くのチームが各国から集まっていて、コーチたちの手腕が試されています。面白いことに、各チームのそのシーズンのプログラムを見ていると、微妙な「力の入れ具合」というものが浮き彫りになってきます。

 

例えば昨シーズンはスペインのスマート&ディアス、そしてもちろんパパダキス&シズロン組のプログラムが素晴らしい出来でした。ベテランのチームともなると、振付師の言いなりにはならずに自分たちのインプットもあるでしょうから一概には言えませんが、プログラムの作成に関して全ての組に同じ程度の力をコーチ陣が注ぐことは難しいと思います。

 

そういった意味で、今シーズンは何となく、イギリスのフィア&ギブソンに対する「推し」が強いような気がします。そしてアカデミーでは最も在籍歴の長いフルニエ・ボードリ&ソーレンセンにもようやく順番が回ってきた、のかも知れません。

 

このカナダのチームは、美男美女そろいのアイスダンス界においても群を抜いて美しい、と前から言われています。「動く彫刻」だとか、特にローランスは「フィットネスのモデルにもなれそう」だとかの形容を良く聞きます。

 

しかし何故か、プログラムに恵まれてきませんでした。それが今年のフリーのフラメンコは衣装もユニークで、ローランスの魅力を存分に生かしています。

 

 

 

 

 

 

しかし彼ら自身、まさかチョクベイに勝てるとは思っていなかったのでしょう。まずはSPでのローランス選手が大きく目を見開き、口をあんぐり。

 

 

 

 

フリーのキスクラでのニコライ選手の感極まった表情がこれまでの道のりの長さを物語っていました。

 
 

 

 

 

 

これからフィンランド大会に出場するパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組と、アイスダンスでカナダが世界選手権でのワンツーを占める可能性はありますね。

 

 

最後は男子:

 

女子でも言いましたが、世界チャンピオンになったからと言って次のシーズン、全ての試合で勝つことが出来るとは限りません。

 

ところがGPスケカナに続いて宇野選手はきっちりとやるべきことをやり、NHK杯でも優勝を決めました。貫禄ですね。

 

この記事でペア競技について書いたこととも共通するのですが、ひと昔前に比べてスコアのレベルはどうなのか、引退した選手や現在(何らかの理由で)出ていない選手と比べてどうなのか、は議論すべきかも知れません。

 

でも今、その場で戦っている選手にしてみれば、自分が出ているまさにこの試合で勝つか勝たないか、だけが問題なのです。そして実際、勝ったのであれば。誰に何を言われる筋合いもありません。

 

宇野選手の今シーズンのFSのプログラムは昨シーズンのSPの流れを受け継いでいますよね。振付師が同じだし、バロック風なテーマで前半ゆっくり、後半怒涛のたたみ掛け、というパターンも似ています。身体の動かし方にも既視感がある、というのは否めませんが、それを言えばパパダキス&シズロンも同じです。

 

他の誰にもできない演じ方、というものを持っているのであればそれを生かすのは当然のことであって、宇野選手は一つのジャンルを極めている、という感じがします。

 

今年はファイナルも勝てる、でしょう。

 

そして山本選手はおそらく全てのスケート関係者たちが応援したくなるストーリーの持ち主ですね。彼が世界ジュニア選手権に出発する日に負傷したことをはっきりと覚えています。衝撃的なニュースでした。

 

あれからどれほどの辛い日々を送ったことでしょうか。何度、暗闇に突き落とされたような気持になったでしょうか。想像さえつきません。

 

しかしようやく光の当たる場所に戻って来て、かつてジュニアの大会でしのぎを削り合った選手たちと同じ舞台に立っている。そしてSPでは世界王者を抑えて誰よりも高い得点を獲得した。

 

仲間たちはみな、山本選手の辿ってきた茨の道を知っている。だからこそ、彼のフリーでの演技を見守り、我がことのように喜んだのでしょう。

 

ああ、スポーツっていいわ。

 

 

3位に入ったジュンファン選手。すっごくカッコよいですねええ、フリーが特に。なんですか、あのジャッジをジッと見つめるエンディング。神戸の母が「ちょっとあの3位の子、綺麗だったわねえ」と、(親子の日課である)朝のライン電話でわざわざ言うほどでした。

 

この選手もかなり長い間、シニア大会に出ているので年齢がまだ21歳だと聞くとちょっとびっくりします。なにせ2018年の平昌大会前から注目されてきましたからね。

 

フリーでは美しい4回転ジャンプ、そしてイナバウアーを見せてくれました。トリプル・アクセルへの入り方が何故か長いですが、エレメンツを揃えることが出来ればカリスマは十二分に備わって来ています。さあどうなるか。

 

なお、この他では私は男子選手の中でアダム・シャオ・イム・ファ君に注目しています。ジュニア時代のアダム君には2018年のジュニアGPFバンクーバー大会で会っていますが、あの頃は演技後のインタビューで「自分のエネルギーをコントロールするのが課題」と言っていたようにとてつもない身体能力の持ち主のようです。

 

難しいコレオグラフィーをこなすことによって、ただただ全速力で爆走してジャンプを跳びまくる、という傾向にブレーキをかけているのか?とてもユニークなプログラムを二つ、揃えてきています。

 

それが功を奏してフランス杯を制し、ケヴィン・エイモズ選手とフランスチームをけん引する存在になってきました。

 

以前の記事でも書いたのですが、ぜひ、パトリック・チャンさんのような人にスケーティングのコーチになってもらいたい。そうすればなんだかものすごいスケーターになりそうな気がします。

 

最後にひとつ:

 

男子の表彰式の後、宇野選手のコーチ、ステファン・ランビエールさんが登場していたのですが、ふと見るとえらくお洒落なシャツを着てらっしゃる。でもその柄が宇野選手の衣装とほぼ「お揃い」みたいに見えて「もしかして張り合ってる?」と微笑ましかったことでした。

 

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ偏ったダイジェストですが、以上でNHK杯の雑感記事を終えたいと思います。

 

読んでくださってありがとうございました。