2022年GPスケートカナダ(ミシサガ大会):記憶をたどって10月30日(土)その③ | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

GPスケカナ、ペア競技フリーの日のレポの続きです。

 

前記事ではフリーの演技後、りくりゅうのお二人をテレ朝のブースやミックスゾーンに連れて行った話をしましたが、記者会見で通訳をすることを見越して、彼らの言っていることを一生懸命、聞き取っていました。

 

テレビの放送や他の記事でも出ていたこととは思いますが、私が聞いた限りでは、
 
カナダは自分たちにとって本当に特別な場所で、二つ目のホームのようなところ
 
カナダで行われた今回の大会が(本来の)ホーム(=日本)よりも「ホームらしい」試合だったかもしれない
 
名前が呼ばれた時に大きな歓声が聞こえたり、バナーが見えたり、チームメイトや多くlの人たちが応援に来てくれていたのが分かった
 

 

これに関しては、カナダのジャーナリストのベヴァリー・スミスさんも:

 

(会場の)観衆からは大きなエレメントが決まるたびに応援の声が上がり、(最後は)スタンディング・オベーションが起こった。まるで自分たちの国の代表であるかのように。もはや、彼ら(三浦&木原)はカナダ人のファンにとって「うちの子達」みたいなものになったのだ。

 

 

 

と言っています。嬉しいですね。
 
 

 

 

 
 
なお、木原選手の以下のコメントには本当に驚いたのですが
 
9月の半ばまでペアとしての練習が出来ずに不安だったり、フリーの全てのエレメンツを入れての通し演技は、2週間前から始めて、今日の本番を含めて5回しかやっていなかった
 
この点に関しては記者会見でも言っていました。
 
そして「コーチも泣いていたみたいでしたが?」との質問に:
 
練習がままならなかった時期もあって、コーチたちはそれをずっと傍らで見ていてくれて
 
自分たちが不安で緊張していた時も、「大丈夫、ここまで出来ているんだから」と励ましてくれた
 
GP大会で優勝した初めての日本人ペア、ということに関してはただただ嬉しいけれど、これだけで終わらせない
 
今大会ではレベルが取れるかどうかよりも「楽しみたい」ということを優先していたけれど、次は楽しみながらもしっかりとレベルを取って行きたい
 
などと話していました。
 
なお記者会見での一問一答が載っているのはこちら:
 

 

 

 
個人的に面白かったのは、三浦選手がNHK杯に向けての抱負を聞かれて、レベルの取りこぼしを無くすこと、と
 
「フリーの曲で最後、間に合うように終えることを目指す」
 
と言ったことでした。会見の会場が温かい笑いに包まれた瞬間でした。
 
ところでSleeping At Last のツイッターでりくりゅうの優勝について触れられていたんですよね!これって凄くないですか?
 

 

 

 
なお、報知新聞の記事内では少し、ニュアンスが伝わっていないと思うのですが、オリンピック・チャンネルのニック・マッカーヴェルさんが聞いたのは(ロシアや中国などの、従来のペア強豪国からの試合参加がないに等しい今シーズン)、世界的に見てペアの層が薄いけれど、それで自分たちのモチベーションが違ってきたり、準備の仕方が変わってくる、ということはあるか?ということでした。
 
木原選手の答えは記事に書かれているとおりですが、2位のハウ選手は「誰それが出ない、ということで僕らのモチベーションが変わるかどうか、というのもおかしな話で、自分たちのやるべきことは同じだと思う」と言っていたのと、3位のマッチ選手が言ったのは「確かにフィールドが開けて、今まで注目されてこなかった国のペアにもスポットライトが当たり、自分たちのことをアピールする良いチャンスにはなる」と言っていました。
 
このトピックに関しては私自身も思うところがあるのでまた別の機会に。
 
会見の最後は写真撮影がありましたが、私は次の男子の試合が迫っていたのですぐにまた持ち場へと戻っていったのでした。
 
****
 
 
最後の男子フリーの試合が始まり、2022年のスケカナもクライマックスを迎えます。
 
前日のSPではさんざんだったスティーブン・ゴゴレフ選手がようやく挽回して、150点を超えるスコアを叩き出したところで会場も良い雰囲気に包まれました。
 
取材に現れる姿も昨日とは打って変わって颯爽としていました。最終的にはこの日、5番目のスコアだったんですよね。
 
デニス・ヴァシリエフス選手はフリーもちょっと荒れて、128点台の低スコア。これは悲しい。
 
第2グループの6分間練習では、すでに皆様ご存知のように三浦選手がスケート靴のひもが切れるというアクシデントに見舞われたのですが、メディア取材に対応していた私達には事態が把握できていませんでした。
 
このグループの最初の滑走者はコンラッド・オーゼル選手。彼もこの日はかなりひどい演技となりました。彼は今シーズンから練習拠点を変えて、2018年の世界女王ケイトリン・オズモンドのコーチ、ラヴィ・ワリアに師事しています。
 
ジュニア時代から高難度ジャンプを武器としていたオーゼル君ですが、どうも背中の柔軟性がなくて力がずっと入ったまま、という印象を受けます。そのせいで「余裕がない」様に見えて損をしている気がするんですよね。
 
プルキネン選手の演技は、ものすごく期待させる部分と、ジャンプが微妙に決まらずに「もったいない」と思わされる部分が入り混じっていました。昨年のワールドでは確かフリーで3位に入る演技をしたんでしたよね?今シーズンこそは、と思っているのですが。。。
 
さあ、そしてキーガン・メッシング選手の出番です。冒頭の4回転トウループが綺麗に決まり、そこで波に乗って次の4Tもコンビネーションで下りました。
 
ところが次の3アクセルが予定ではコンビネーションだったものの単発となり、そこからいきなり私たちの手に持っている構成表から大きく変わっていきました。3ルッツが3ループになったり、コンビネーションが加えられたり、と本当にアドリブ満載。しかしそれでも何とかまとめて良いスコアが出ました。キーガン、嬉しそうにキスクラで恒例の息子さんの写真を見せるのかと思いきや、奥様が第二子を妊娠中ということでいきなり超音波の画像をテレビカメラの前にかざします。
 
まあ、彼らしいと言えばそうなんですが。
 
なお、今大会にはキーガンの親友でもあり、カナダ代表のOBのナム・ニューエン君がビデオグラファーとして参加していました。舞台裏のそこかしこに現れては驚かせてくれました。
 

 

 

 

スケカナにこうやってOBやOGが大会スタッフや解説者となって戻って来るのは、とても喜ばしいことです。

 

 
さて、マッテオ・リッツォ選手が3位を死守するか?大写しになった彼の衣装の襟がものすごく凝った色彩であることにまずびっくり。何とも言えないセンスの良さです。
 
この日、四回転は二本で、トウループとループを投入してきました。後者に関してはものすごく鮮やかで、今後は彼の十八番のジャンプ、となりそうな予感がしました。冒頭の4回転トウループを除けばすべてのエレメンツにプラスのGOEが付き、キーガン選手をトータルスコアでわずか0.3ポイント上回り、暫定首位に。これでメダルが確定しました。
 
残すところ、日本人選手二人。
 
宇野選手のフリーの演目は王道の「G線上のアリア」から後半はカウンターテナーのヤクブ・ヨーセフ・オルリンスキの歌う「Mea Tormenta, Properate」へと移行します。
 
オルリンスキに関してはたまたま動画で彼がフランスのどこかの広場でライブを行うものを見て知っていたので、宇野選手が彼の歌に乗せて滑ると聞いて驚きました。(余談ですが、フランスのテレビ番組でオルリンスキがこの動画の状況について、普段着で舞台に上って、「音声だけって聞いてたから(短パン・スニーカーの)いい加減な格好して行ったら、映像も公開されちゃって」と笑って言っていました。)
 

 

 

 
宇野選手のこの日のフリーは、ジャンプが完ぺきではなかったものの、持ち味のスケーティング・スキルは冴えていました。
 
CBCの解説ではキャロル・レーンさんがうっとりと言います:
 
Shoma always has so much time to finish his movements and he take you along as he begins the journey of his program
ショウマはいつもゆったりと時間を掛けてひとつひとつのしぐさを仕上げます。そして見ている側を誘って、プログラムの旅路へと連れて行ってくれるんですよね
 
 
後半の4回転トウループ+3回転トウループのコンビネーションが決まって「おおおっ!」というどよめきが観客席から上がりましたね。2つ目のジャンプが2回転にならなくなったのが大きな進化であるように思います。
 
どの試合だったかでランビエールコーチが「なぜ?なぜ?(3回転じゃなくて2回転になっちゃったの?)」と聞いていた姿が思い出されますが、もうそんな心配はなくなるのかも知れません。
 
そして最後のステップシークエンスからスピン、フィニッシュはFlashy!」(派手でカッコいい!)とCBCのカート・ブラウニングさんが言います。
 
リンク裏ではランビエールコーチが走って宇野選手をキスクラに迎えに行きます。トータルで273点という高得点が出て、最終滑走の三浦選手の登場を待つだけとなりました。
 
ここからの展開は、CBCのアッシャー・ヒルとケヴィン・レイノルズが面白い動画を作っているのでご覧ください:
 
 

 

 

 
どうやら舞台裏でCBCのカメラが三浦選手の靴紐が切れた様子を映し出していたようで、佐藤コーチが懸命に紐を結び直しているところも出ていました。
 
6分間練習の最後の1分だけ、三浦選手は氷の上に出て行って4回転ジャンプを一本決めます。それから自分の滑走時間までの40分ほどを利用して、テープでさらに補強したと思われます。
 
私はこの時点でもまだ何が起こったのか知らなかったのですが、キスクラ裏でモニターを見ながら、予定構成表と睨めっこをしていると
 
「あれ、冒頭からジャンプが変わってる?」
 
と焦りました。
 
記者会見ではおそらく三浦選手の通訳をすることになると思われていたので、彼がどういう順序でどのジャンプを跳ぶのかを把握している必要があったのです。
 
ところがいきなり4回転ループではなく、トリプル・アクセルからの3連続ジャンプ、そして次の4Tー3Tを決めると、4Sでかなり酷い転倒がありました。
 
結果的に構成は
 
4Lo
4T+3T
4S
3A+1Eu+3S
4T
3A
3F+3Lo
 
という予定だったものが
 
3A+1Eu+3S
4T+3T
4S
3A
4T
3F+2A
3Lo
 
に大幅に入れ替わったのでした。
 
要は4ループを回避したわけですが、とにかく私は必死で新しいジャンプを構成をメモっておきました。
 
単発の4Tでもステップアウトがあるなど、ノーミスとは行きませんでしたが、良く最後までスピードを落とさず、滑りぬきました。
 
佐藤コーチが到着して、キスクラへと入っていきます。スコアが出て三浦選手が2位になり、宇野選手の優勝が確定しました。
 
なお、この辺りのテレビ取材としては「宇野選手の順位が決まる瞬間を写したい」ということで、彼がキスクラ裏のモニターに見入っているところにカメラが寄って来ていたと記憶しています。
 
まあ、こういう場面をテレビは撮りたがりますからね。
 
 

 

 

 
 
記者会見や囲み取材は表彰式が終わるまでお預け、ということで、上位3人の選手たちを呼びに行きます。
 
すると途中で佐藤コーチにお会いして、お祝いの言葉をかけようとすると「靴紐が切れてどうなるかと思った」ということを聞かされたのでした。本当にコーチとしては心臓が止まる思いをされたことでしょう。
 
そこで宇野選手がテープを貸してくれた、という話も出たわけです。
 
表彰式はまず男子から。
 
そしてペアの3組も戻って来てメダルを受け取ります。ブルーノコーチやブライアンコーチも揃って、記念撮影をします。本当に皆、よい笑顔でした。
 

 

 

 
 
 
この直前に三浦選手がモフモフの上着を羽織って肩にはバッグを掛けていたという話はすでに披露しましたが、どうやらこの直前に階上のラウンジかどこかでカースティン・ムアタワーズとマイケル・マリナロに会っていた時の動画にそのいで立ちで写っていたようですね。
 
(この動画に現れているもう一人の男性はおそらくミッチ・イスラムさん、元カナダ代表のアイスダンサーで、りくりゅうの練習拠点に振付け指導にも来ています)
 
 
 
 
 
 
 
なお、表彰式の後に男子の記者会見があり、案の定、三浦佳生選手にはなぜジャンプ構成を変えたのか、という質問が出ました。ああ、準備しておいて良かった。
 
靴紐が切れたことで6分間練習が途中で終わってしまい、ジャンプの準備がままならなかった。修理した後も靴が柔らかく感じられたので、完全に自信のない4ループを回避することにして、新しい構成で挑んだ、ということでした。
 
それにしてもそんなに咄嗟にジャンプの順序を変えて、間違わないで滑れるもんなんでしょうか?とてもじゃないけど想像が出来ません。
 
そして会見後の取材では海外記者からも質問があった佳生選手。
 
自分の性格を説明するとしたら?と聞かれて「ノウキン」という答えを出したので、どう訳すべきか戸惑いました。良く聞けば「脳が筋肉」という意味なんですってね?
 
「イエスかノーか、って言われたらとりあえずイエス。問題にぶつかったら、まずは行動する。」
 
なのだそうです。すごい、元気があって気持ちいいですね。だって、まだ17歳なんだもん、若い若い。
 
この他でめぼしいネタと言えば、普段はあまり英語の個別インタビューを受けない宇野選手が、オリンピック・チャンネルのマッカーヴェル記者の取材に応じたことでしたか?
 
エキシビションの練習の合間に、ランビエールコーチと並んで座ってカメラに収まっていました。(通訳はスタッフの方が担当されていました。)
 
早々に、この時の動画が公開されたら良いですね。
 
 
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ふー、これで全部だっけ?
 
多分、書き忘れていることがたくさんありそうですが、もうさすがに一週間前に大会は終わっていますからね。
 
長い間お付き合いくださってありがとうございました。とりあえずこれで2022年GPスケートカナダの記事を終わりにします。