2022年GPスケートカナダ(ミシサガ大会):記憶をたどって10月30日(土)その② | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

フランス杯が終わってしまいましたが、最後の力を振り絞って、GPスケートカナダの10月30日、ペア(および男子:のはずでしたが、時間切れでひとまずペアだけになりました)のフリー演技について書きます。

 

 

この日の朝、メディアセンターを覗くと何人かのカメラマンさんたちが作業に勤しんでいらっしゃいました。その中で田中宣明カメラマンと少しお話をしました。

 

私の記憶が正しければ、田中さんは2013年に私がこの大会を手伝うようになってから毎年、選手の顔ぶれに関係なくGPスケートカナダにいらしています。そのため、カナダ連盟の広報のエマちゃんとも仲が良く、親しくおしゃべりをする仲です。

 

今回の写真のポジションの相談では、田中さんがペアとアイスダンスはリンク傍よりも客席の上段からの方が良いものが撮れる、ということで、エマに良さそうな場所を教えてもらっていました。

 

大会中、田中さんが多くの選手と言葉を交わしている姿を見かけますが、彼・彼女たちのジュニア時代(あるいはもっと幼い頃から)ずっと成長を見守ってきたからこそ、選手たちも田中さんを信頼しているのでしょう。


「SPのりくりゅうの良い写真、撮れましたが?」

 

と聞くと、ちょうど幾つかをピックアップして編集して、彼らに送ったところだ、と言う田中さん。ノートパソコンのスクリーンには素敵なショットが映し出されていました。このような優しい心配りが彼の人柄を良く表していて、こちらもホンワカしてしまいます。

 

 

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さて、ペアのフリー演技の試合が始まり、私とYちゃんも緊張してキスクラ裏に待機します。

 

第一グループの滑走者たちが出てきて、ドイツ代表のエフィモヴァ&ブルーメルト組が棄権したことに気づきました。医療上の理由で、ということでしたが、確かに前日のSPでは表情が優れなかったので全くの驚きというわけではありませんでした。

 

このグループには前週のGPスケートアメリカで3位に入ったカナダのロラン&エティエ組が出ていたのですが、あまり点数が伸びずに最下位となりました。と言っても実はスコア自体はスケアメとさほど違わないんですよね。これを見るとペアの層の薄さは否めないな、と思います。

 

そして第2グループの選手たちが出てきます。裏で聞いていても、

 

「リィークゥ・ミウーラァー・アンド・リュイーチー・キハァーラァー」

 

というアナウンスがあると、とりわけ大きな声援が上がっているのが分かります。ワクワク。

 

ちなみにスケカナ(およびカナダ国内の主な試合)で場内アナウンスをしているのはスティーブさんというとっても背の高い男性で、この間初めて会場の食堂でお会いしました。別のテーブルでランチを取っていらしたんですが、姿は見えずとも声だけで「あ、アナウンサーの人だ」と分かったのが面白かったです。

 

挨拶をすると、「僕の声は知ってるけど、顔は見たことなかった、って良く言われるんだよね」と、ご本人も笑っていらっしゃいました。

 

キスクラ裏のモニターには6分間練習が映し出され、りくりゅうのフリーの新しい衣装も少し見えました。これも今シーズンに向けてモントリオールのデザイナー、マテュー・カロンさんに作ってもらったものです。

 

コンセプトは「ピュアなラブ・ストーリー」ということで、三浦選手のドレスは白を基調にローズとラヴェンダー色のお花やストーンがあしらわれています。木原選手の衣装は「これまであまり着たことのない色」、グレーがかったトップが徐々にエアブラシのグラデーションで紫に変わっていき、ズボンの色とマッチするようになっています。

 

第二グループの最初の滑走者はマッキントッシュ&ミマール組。女性の衣装が綺麗なローズ色です。本当に二人とも背が高く(164センチと193センチ‼)、彫刻的なラインを出すペアです。ショートよりもミスが出て、SBSのジャンプが3回転ではなく2回転になったり、スロージャンプで転倒などがあり、スコアを伸ばしきれませんでした。

 

それでもこの17歳と21歳の若いペアは良いデビューを飾ったと言えるのではないでしょうか。

 

次に滑ったのはイタリアのコンティ&マッチ組。またまた綺麗な衣装です。「シネマ・パラディーゾ」の曲に乗せて、とても良い表情を見せて演技をします。このペアはSBSジャンプで3S-1Eu-3Sを跳ぶことが出来るらしく、予定構成表にはそう書いてありましたが、本番では二個目のジャンプを二回転に落としていました。シーズン後半では難しい方のコンビネーションを入れてくるのでしょう。楽しみです。

 

スロージャンプで転倒なども出ましたが、最後は笑顔で終えて、気持ちよさそうでした。スコアが出たキスクラでも喜び爆発。

 

3番滑走はアメリカのチャン&ハウ組。男性の方は以前、日本の古賀亜美選手と組んでいたそうですが、私はこの大会で見るまで知りませんでした。

 

フリーの曲は「Unchained Melody」でしっとりとしたプログラムでしたが、冒頭の連続ジャンプを3回転から2回転に落とし、次のSBSの3回転トウループでも転倒したため、イタリアのチームとの僅差の争いが予想されました。しかし全体的にはとても男女のラインが良くマッチしたペアだなあ、という印象です。

 

スコアが出ると、ほんの0.3点差でイタリアペアを抜いて暫定首位に。

 

いよいよりくりゅうの登場です。会場の声援がものすごく熱い。さすが「ホーム」の強みです。

 

Sleeping At Last の「Atlas:Two」の曲が響き、二人が滑り出します。もうこの時点でYちゃんと私は緊張も感動も最高潮(に近い)。

 

ツイストが決まり、次の連続ジャンプへとつながっていきますが、ここで三浦選手が最初の3回転トウループで手を僅かについてしまいます。木原選手はそれを見たからか、セカンドジャンプの2回転トウループを付けた後、3つ目はなし。三浦選手はシングルを2つ跳び、コンビネーションが失敗と評価されました。

 

でもこの時点でも笑顔が出ていたので、Yちゃんと「大丈夫、笑ってる、笑ってる!」と期待していました。

 

次のリフトでは二人の息がピッタリと合い、その他のペアとは全く違ったスピードと、龍一選手のリンクの端から端へとカバーする技が発揮されます。

 

そしてSBSの3回転サルコウが見事に決まり、しっかりと加点が付きました。

 

大会前の取材で「フリーの見どころは?」と聞かれた三浦選手は、

 

「初めてコレオシークエンスをプログラムの真ん中に持ってきて、後半に自分たちの得意とするスロージャンプが2本、入っているところ」

 

と言っていたとおり、とても効果的な音楽の編集でインストルメンタルが入り、二人のコレオが始まります。龍一選手が膝をついてグライドする部分が印象的。

 

そしてそこから怒涛の盛り上がりで3回転ルッツのスロー、リフト、そして3回転ループのスロージャンプと続きます。ダイナミックな大技が決まるたび、観客席から大きな声援が巻き起こっていくのが裏にも伝わってきます。

 

このように会場のエネルギーが渦のように沸き起こるようなパフォーマンスは、通常、大会に片手の指で数えるほどしかありません。その一つがりくりゅうのフリーでした。

 

最後は二人のトレードマークともなったリフトで、龍一選手が膝をついて璃来選手を持ち上げ、そして下す。

 

フィニッシュポーズでは時間が迫ってタイム・ヴァイオレーションを恐れた龍一選手が璃来選手の顔をグワッと両手で包んだのが可笑しかった。(本来はもうちょっとフンワリと終わるはず)

 

でも終わった!素晴らしかった!Yちゃんと私は号泣!

 

そしてりくりゅうたちも嬉しそう!

 

ブルーノコーチもブライアンコーチも感無量!

 

龍一選手が疲労困憊で氷上にへたり込み、璃来選手に優しく労われる。

 

本当に良く頑張った。

 

キャーキャー。

 

キスクラに戻ってくる途中で観客席から乗り出したマイケル・マリナロさん、そしてリンクメイトのヴェロニク・マレ選手ともハグをしていたようですが、リアルタイムでは私たちはまたドドドドと走ってくるブルーノコーチとブライアンコーチを迎え、カーテンをまくってキスクラへと通すのに追われていました。

 

ブルーノコーチは「ありがとう、ありがとう!」と大きな声で回りからの祝福に応え、二人を迎えに行きます。

 

賑やかな笑い声や話し声が聞こえ、どうやら皆でキスクラ席に座った模様。スロー再生が流れ、スコアがアナウンスされます。

 

昨日のSP、として今日のFSはいずれもパーソナル・ベストには届きませんでしたが、トータルでは最高点という快挙です。今日のフリーは連続ジャンプでミスが出たもののPBを少し下回るだけ、ということで、どれだけ良い演技であったかが伺われます。

 

圧倒的な点差で優勝が決まり、りくりゅうにとって、そして日本人ペアにとって、初めてのグランプリ大会での金メダルとなりました。考えれば考えるほど、凄いことです。

 

そして二人のSNSを振り返っても、3回転のスロージャンプを負傷後、初めて、2カ月ぶりに、試みて着氷させたのが9月22日

 

 

 

 

試合までそれから一カ月とちょっとしか経っていなかったのです。

 

なのに、昨年のトータル・スコアを上回るとは、いくらそれまでの積み重ねがあったと言っても、とてつもない回復ですよね?

 

 

さあ、コーチと選手たちがキスクラ裏へと引き上げてきました。木原選手は笑顔ながらもちょっとヨタヨタしていて、途中に置いてあったソファに座ります。聞けば「足が動かない」ということで、とてもそのまま取材の場に連れて行けるような状態ではありませんでした。

 

靴を脱ぎ、少し時間を置いて、荷物をまとめて、そして無事にテレ朝のブースへ。

 

All photos by

2022 GP Skate Canada Media Team

Uploaded with permission

 

 

 

 

その次はミックスゾーンで取材を受けます。

 

 

 

 

そして最後はバーチャル取材のエリアへ。

 

 

 

 

そして記者会見が始まりました。

 

 

 

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。。。。と、ここで残念ながら、今日はこれからトロント市内へまたピアノ・リサイタルを聴きに行くので、時間切れになってしまいました。

 

次にパソコンの前に戻ってきたら必ず、ペアの記者会見の模様と男子フリー、表彰式、そして男子の記者会見の模様を記事にします。

 

ではでは