(さきほど、日本のお友達から「貼り付けてある動画が見られない」との指摘を受けました。ISUの公式動画は日本では視聴できないんでしたねえ。失礼しました。)
GPスケートアメリカのペア予想記事で、ジャッキー・ウオンさんが
「日本ペアの台頭」
と題づけて、三浦&木原ペアを「銀メダル候補」と挙げた時には、さすがに「銅メダルじゃなくて?」と思った私でした。
それがしっかりと当たったのですから、ジャッキーさん、さすがです。
思えば2019年のオータムクラシックの時に、会場だったオークビルのアリーナで練習している三浦&木原ペアを垣間見たジャッキーさんが、なかなか良いチームだね、とすでに言っていたのでした。
During my Oakville adventures for Autumn Classic, I got to visit with the pair teams coached by Bruno Marcotte and Meagan Duhamel - of note, the new pairing of Riku Miura/Ryuichi Kihara. Only 1mo in and already lots of potential, could very well be a top 10-15 pair this season
— Jackie Wong (@rockerskating) September 14, 2019
それからもずっと注目していて、いつかこのペアは「来る」と思っていたのでしょうが、今回のラスベガス大会で久しぶりに生で彼らの滑りを見て、その成長ぶりにびっくりした、と。
皆様ご存知のとおり、2020‐2021年の昨シーズンはほとんどパンデミックのロックダウンという「暗闇」に紛れて姿が見えなかった「りくりゅう」でした。だから、3月のストックホルム・ワールドに現れた時はどういう滑りをするのか、誰も予測できなかったと思います。
それが見事にSP6位、総合で10位に入り、その後のWTTでも高いスコアを出して、ようやく一年間の成果を披露できました。
ホームシックになりながら、色んな困難に立ち向かいながら、何度も試合が見送られ、その度に心が折れそうになるのを必死で持ちこたえた。
来る日も来る日も、諦めずコーチを信じて、黙々と練習した甲斐があった、ということです。
そしてオフシーズンにはアイスショーに出場し、本来ならすぐにカナダの拠点に戻って次のシーズンに備えるべきところ、またもやパンデミックのあおりを受けて日本に足止めをされてしまいました。
他の選手たちも経験したことですが、大きな時差のある国と国の間でリモートのコーチングを受けるのはそう簡単なことではありません。お互いがネット環境の良いところに四六時中いれるわけでもありませんし、タブレットの限られた画面を見てコーチが指導をすることも非常にフラストレーションが溜まるものです。
いつカナダに戻れるか分からない中、それでも出来ることを見つけて練習をして来ました。フリー演技を最後まで余裕をもって滑り切れるようになるため、カーディオ・トレーニングでスタミナの強化に努め、シングル選手たちに混じってジャンプをとことん、練習したと聞きます。
カナダの国境がそろそろ開きそうになり(しかし実際はいつ開くか分からないというじれったい状況)7月末に意を決して北米に戻ることに。受け入れ先のボストンでは暖かいスタッフやリンクメイトに恵まれたそうです。ブルーノ・コーチもカナダから通ってくれました。思いがけず、良い思い出となった滞在でした。
そして満を持して9月7日にカナダ入国。二人がオークビルに戻ってきた時は何だか信じられないような気分でしたが、そんな感慨に浸っている暇もなく、翌週のオータムクラシックに備えなくてはなりませんでした。
そこからの事はこのブログですでにご紹介しているので繰り返しはしませんが、このような紆余曲折を経て、のこの度の快挙です。
まぐれではない。
ラッキーでもない。
滑るたびにPBを更新しているのは、ジャッジ達にご褒美をもらっているからではなく、彼らが進化し、それに妥当な評価が下されているにすぎません。
二人の身長差を感じさせない、ピッタリと息の合った、とてつもなくスピードのあるスケーティング。全く迷いを感じさせないツイスト・リフト・スロージャンプ。
そして何よりも一緒に滑ることができる喜びが全身から溢れているのが観ている側の心を打つのです。
作られたものではなく、内からこみ上げて来るような二人の笑顔は、もはやトレードマークと言っても良いかと思いますが、昨日のフリーの後半で見せたそれにはひときわ、感動しました。
三浦選手がスロー・3ルッツで酷い転倒をした後、即座に立ち上がって滑り出し、スピンを経てサイド・バイ・サイドの3サルコウを見事に決めましたね。あそこからエンディングへと一気に盛り上がって行くのですが、そこでの二人の表情があまりにも素敵で、こう書いているだけでも思い出されて胸が一杯になります。
ミックスゾーンでの取材では、三浦選手がスロールッツで転倒するのは本当に久しぶりだったのですごく驚いたけど、そこから気を取り直して、ミスを忘れて最後まで滑り切った、と言っていました。そして木原選手も、キツイ練習をして来たからこそ、三浦選手がきっと立ち直ってくれると思っていたので、自分は自分の仕事をするだけ、と。
絶対的な信頼があるから、咄嗟の場面でも躊躇うことなく、とにかく突っ走ることが出来るのでしょう。あのミスからの怒涛の巻き返しは、三浦選手の気迫が感じられました。絶対にここで崩れない、絶対に最後まで滑り切ってやる、という気迫です。
ハラハラと見守っていた私ですが、その内、三浦選手が、そして木原選手がまたしみじみとした笑顔を浮かべているのに気が付きました。ただただ、演技をすることが楽しい、さあ行くぞ、という勢いがしっかりと伝わって来ました。
(この下にISUの公式YouTubeの動画をリンクしていますが、日本では残念ながら見られないそうです。)
キスクラに座るまで膝から出血している事にも気が付かなかったと言う三浦選手。フリー得点および総合スコアでのパーソナルベストの更新に喜びを爆発させていたのがISUの公式ツイッターにも載っていました。
📸 These are the moments we skate for 👉🏻 Reaction of pure joy after Riku Miura & Ryuichi Kihara take home 🥈 at the ISU GP Guaranteed Rate Skate America 2021!
— ISU Figure Skating (@ISU_Figure) October 24, 2021
🔗 Watch their skate 👉🏻 https://t.co/WGznM2QCe9 #GPFigure #FigureSkating pic.twitter.com/Ahp0KhGgwe
中でもこの写真がたまらなくカワユイ。
(ラスベガスらしい、ドギツイ紫のバックグラウンドも
漫画チックで非常によろしい)
りくちゃん、膝は大丈夫かな?翌日になって打撲がきっと痛んでいることでしょう。しっかりケアして治してほしいです。
それにしても、今シーズンの目標だった総合スコアで200点超えをオータムクラシックで達成し、そしてGP大会でのメダル獲得、をいきなり初戦でかなえてしまいました。
しかも2020年のヨーロッパ・チャンピオンを破っての銀メダル、です。これは本人たちの予想をも超えていたでしょう。
ミックスゾーンでのアメリカの記者の質問で
「1カ月前に、『君らはオータムクラシックで優勝して、初戦のスケアメで銀メダルを獲るよ』、と言われていたら、どう思った?」
という質問に、二人とも「信じられない、と言ったと思う」と素直に答えていました。
(ちなみに木原選手は演技後、会場の乾燥も手伝って喉の調子が急遽、悪くなって、ミックスゾーンでは最初の方、ずっと三浦選手がマイクの前で応答していました。その横でコショコショと囁く木原選手のコメントを「通訳」するという可愛らしさ)
残る目標はオリンピックでの入賞、です。それも可能性が高い事を示してくれました。
二週間後のNHK杯では久しぶりに日本のファンの前で滑ることになり、また新鮮な気持ちで演技をしてくれるに違いありません。
皆様、お楽しみに!!
では取り急ぎ、ここまでで。
これからまだアイスダンスと女子の競技が残っていて、女子のミックスゾーンを手伝うことになっています。
ペア以外の感想はまた改めて。