2021年オータムクラシック雑感その②:その他もろもろ | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

皆様、三浦&木原ペアに関するたくさんのコメントをありがとうございました。(後ほど、頑張ってお返事させて頂きます)

 

前記事では日本のメディアによるこの度の快挙の扱いがちょっと地味、と言いましたが

 

 

 

 

その後、共同通信社が取材をした結果:

 

 

 

 

各社でも新しい写真と共に再度、取り上げてもらえているようです。良かった、良かった。

 

りくりゅうは週末にモントリオールからオークビルに戻り、今週からまた練習が開始ですが、次はGPスケート・アメリカに出場します。

 

この大会でペア競技にエントリーしているのは:

 

 

1     Evelyn WALSH / Trennt MICHAUD     CAN      
2     Riku MIURA / Ryuichi KIHARA     JPN       
3     Aleksandra BOIKOVA / Dmitrii KOZLOVSKII     RUS      
4     Alina PEPELEVA / Roman PLESHKOV     RUS        
5     Evgenia TARASOVA / Vladimir MOROZOV     RUS        
6     Jessica CALALANG / Brian JOHNSON     USA         
7     Alexa KNIERIM / Brandon FRAZIER     USA         
8     Chelsea LIU / Danny O'SHEA     USA      

 

ロシアのボイコワ&コズロフスキとタラソワ&モロゾフ、そしてアメリカのトップのクニエリム&フレイジャーです。さすがにグランプリ大会ともなると、その他のチームとて侮れません。

 

しかしリクリュウも実力が十分ある事は証明できたわけですし、今シーズンの目標のひとつ、「グランプリ大会で表彰台に乗る」を叶えようとするのであれば、オータムで作った良い流れを切らさず、ドーンと行ってほしいですね。

 

ちなみにもう一つの目標は

 

「オリンピックの個人戦で入賞すること」

 

だそうです。ミックスゾーンで木原選手がそれを言った時に思わず

 

「オリンピックで入賞って、何位までだっけ」

 

ととぼけた事を聞き返してしまいましたが

 

「5位か6位ってことですね」

 

と答えてくれました。

 

つまりロシアのトップ3チーム、中国のトップ2チームはまあ別格として、アメリカやカナダ、イタリアなどが先だってのストックホルム・ワールドでトップ10に入ってたわけですが、三浦&木原チームはワールド後、国別やこの度のオータムでその内少なくと2チームより良い得点を挙げています。

 

時期が違ったり、大会が違ったりするとスコアや成績を比べることは必ずしも出来ませんが、少なくとも互角に戦えることは確かです。あとはその試合のその日の出来、がモノを言う。

 

なので目標はしっかりと高く掲げて、それを叶える。頑張ってほしいですね。

 

 

さて、すっかりペア競技にかまけてオータムクラシックのその他の側面にあまり触れて来ませんでしたが、印象に残ったところを幾つか上げて行きます。

 

1)久しぶりのカナダでの国際大会では皆が「錆びついてた」

 

すでに少し、この点については書きましたが、もうのっけからカナダ連盟やケベック州連盟の人たちが久々の大会運営に戸惑っているのが感じられました。

 

CBCのスタッフの一員として取材に来ていたバーバラさんでさえ、30年以上のキャリアを以てしても「面と向かって選手たちに何を聞いたら良いのか、リンクで滑っている彼らを見てどこに焦点を当てたら良いのか、全然、分からなかった」と言っていました。

 

かくいう私もそうですが、「本当にこれで良いんだっけ」とかつてはほぼオートマチックにさえ思えた手順が本当に奇妙に思えるのです。
 

もちろん、色んなステップがデジタル化されたのもその違和感に一役かっていました。国際大会ではピンクが女子、ブルーが男子、グリーンがペア、そして黄色がアイスダンス、と色分けで滑走順やタイムシートや結果が印刷されていたのですが、そういった紙媒体のものは一切なし。

 

 

(2014年のGPスケカナ大会の画像)

 

 

全てが大会用のアプリで閲覧・ダウンロードされるようになっていました。ちょっと前からそういう傾向はあったのですが、このパンデミックのせいでなるべく「ノータッチ」が導入できるところは加速されたと言えます。

 

アナログな私としては未だにプリントアウトを持っていたい気がするのですが、ミックスゾーンの運営ではさすがの若手のアマンダでさえも紙にメモをするため、その日の滑走順のデータを私の分も含めて二部、印刷していました。やっぱり紙って便利なのよ。

 

しかしまあ今後、グランプリ大会ではこういった側面がどのように進化していくのか、興味深いところではあります。

 

 

2)バーチャルのミックスゾーンも不思議

 

チャレンジャーシリーズ級の試合では、記者会見が必ずしも条件づけられていません。もちろん、行う大会もありますが、オータムクラシックでは少なくとも私が知る限りではありませんでした。

 

今回は選手たちがキスクラで点数を聞いた後、リンクのショートサイド際を通ってミックスゾーンへとエスコートしていたのですが、そこではライティングと定点カメラが設置されていて、一切のメディアの立ち入りも 無し。

 

 

Skate Canada Instagram ストーリーより

 

 

その代わり、取材を申し込んだメディアと選手をノートパソコンを駆使してつなげることになっていました。質問はスピーカーを通して聞こえて来るし、それに対して答える選手にはマイクロフォン(これは必ず一回一回、除菌しました)を渡しておきます。広報担当のアマンダが質疑応答を仕切り、事前に質問リストを送って来ていたジャーナリストに関しては時間が許す限り、個別に対応する。

 

時々、インターネットのコネクションが落ちたり、マイクの充電が切れたりするというアクシデントはありましたが、概ね上手く行きました。

 

「次のGPスケカナはバッチリよ!」と自信を付けていたアマンダでしたが、あくまでも選手の人数も少なく、ゆったりしたペースのCSシリーズの試合とでは勝手が違うのではないかな、と思います。まあでも、良いリハーサルになった、と思えばいいのかな?

 

なお、今回は三浦&木原ペアの通訳は私が務めさせて頂きましたが、グランプリではどうなるのかしら?リモートであれば世界中のどこからでも通訳は参加できるでしょうから、ある意味、安心なんですけどね。

 

 

3)カナダのシングル選手層の薄さが心配

 

大会開催の数週間前にまずは男子選手のエントリーが減り、国の数も選手の数もCSシリーズの規定を満たさなくなってしまったわけですが、それにしても最終的に滑走に漕ぎつけたのはカナダの選手3人だけ、って。

 

木曜日の練習までは確かに5人いたんですよ。ナム選手もいたし、サム・オージェ選手はSPの6分間練習までもいたんです。

 

ところがナム選手は初日の公式練習を終えた後、どうやら棄権を決めたらしく、姿が見えなくなった(理由はイマイチ不明)。そしてオージェ選手は本番直前の練習で酷い転倒があり、「大丈夫かな?」と思っていたところ、いつの間にかアプリの滑走順から消えていました。

 

というわけで滑った人は全員、表彰台、ということに。。。

 

 

 

 

 

クリケット・クラブからオーサー・コーチに付き添われて出場したコンラッド・オーゼル選手は、SPでしっかりとクワッド2本を入れて来たのですが、どうも彼の場合、動きが硬いのと繋ぎがないのが残念です。

 

FSではミスがけっこう出て、彼の持ち味であるはずのジャンプが冴えませんでした。演技後のインタビューでは無観客で会場が静かすぎて、隣のリンクでドアが開閉される音まで聞こえてしまった、と言っていましたが、自分でそういうことはコントロールできるはずなので言い訳には出来ない、とも認めていました。

 

一方、女子は韓国の選手が3人も出場していましたが、全員、アメリカ(コロラド)で練習拠点を持っているということだったので、結局この大会には北米からしか出ていないのだな、と実感したことでした。

 

まあ仕方ないですよね、渡航規制を考えるとそうそう移動も出来たもんじゃないですから。オータムをちょっとした踏み台にして、これからフィンランディア杯やネーベルホルン杯などに行く選手もいるわけです。

 

それにしてもカナダ女子の低迷には目を覆いたくなります。もちろん、昨シーズンを棒に振った選手が多かったのは理解しているのですが、それにしても遅れを取ってしまっています。誰一人、クリーンなプログラムを滑ることが出来ないし、ジャンプの難度も低すぎる。

 

ここには一応、国内トップのマドリン・スキザス選手は出ていませんでしたが、かつてはワールドでメダルも獲ったギャビー・デールマン選手もずっと低調、バウスバック選手・シューマッハ選手たちは本人も呆然とするような出来でした。

 

こういう時、コーチとしてはどのように言葉を掛ければ良いのか、迷うだろうな、と傍から見ていて思ってしまうほど。

 

 

4)カナダのアイスダンス勢はまだ健在か?

 

優勝したパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組は、リズムダンスでエルトン・ジョンのメドレーを使っていますが、いきなりド派手な衣装を見せてくれました。

 

 

 

 

更衣室からポールがこれを着て出て来た時は、思わず「ひえっ!」と驚いてしまいましたが、彼らだから許されるコスチュームでしょう。

 

でも間近で見るとけっこうなインパクトですよ。

 

ところがフリーダンスではうって変わってシックないで立ちでした。

 

 

 

 

この振り幅の大きさも彼らの持ち味ですよね。

 

ただちょっと言わせてもらえれば、少なくともFDでポールは髭を剃った方が良いかな?と。髪の毛ももうちょっと整えたらもっと衣装とマッチするのに、と思うのですが。

 

(ちなみに彼はRDの前まで伸ばした髭をFDに備えて剃る、ということが出来ちゃいます)

 

 

 

 

私がパイパーたちに初めて注目したのは2013‐14年の「ヒッチコック」のフリーを観てからなのですが、この時のポールが最高にカッコ良かった。まあもう8シーズンも前のことですから変化は当然でしょうけど…

 

パイパーたちが余裕をもって優勝できた今大会でしたが、その後に続くチームがカナダには幾つかあります。(ロンバルディア杯に出ていた)フルニエ・ボードリー&ソーレンセン組、オータムに出ていたラジョワ&ラガ組とスーシース&フィルス組、そして今回スコット・モイヤーに帯同されて出場したセールス&ワムスティーカ組。ジュニアにもなかなか有望なチームが上がって来ています。

 

カナダの場合、四競技の中で最も安心していられるのがアイスダンスですね。とは言ってもベテランたちが引退した後、すぐにトップを狙えるところに位置しているか、と問われると疑問ですが。

 

あ、スコット・モイヤーさんには「日本のスケートファンはあなたがキスクラで見られて嬉しい、と言っていますよ」と伝えました。マスクで顔の下半分は隠れていましたが、目尻に皺をキュッと寄せて満面の笑顔であることが伝わって来ました!

 

「僕もリンクに戻って来れて嬉しいよ」と言っていた彼ですが、本当に充実している様子です。演技が終わった彼の教え子たちをミックスゾーンへと連れて行こうとすると、「あ、ちょっと数分、いい?」と通路に促してけっこう熱くフィードバックを与えているようでした。

 

熱血コーチなんだ、スコットって、と感心しました。

 

 

Skate Canada Instagram ストーリーより

 

 

でもあれほどのキャリアを持った、ついこないだまで現役だった先生に教えてもらえるのって、良いですよね?

 

そうそう、アイスダンスの表彰式で面白い場面を目撃したのですが、カナダの国歌が流れている間、モニターに映っているパイパーたちの顔を見ていると

 

パイパーは英語で

ポールはフランス語で

 

斉唱しているのが分かりました。

 

会場がモントリオールであったことからポールがリスペクトを見せたのかも知れません。

 

(ポールはトロント大学で言語学修士を取ったことからも分かるように、言語にはとても敏感なのです。日本語も上手です!)

 

 

ではこの記事はこの辺りでアップします。

 

あと一つだけ、番外編を書いてオータムクラシック・シリーズは終わりにします!