リアルタイムと振り返りの狭間で:2017年ヘルシンキ・ワールドの配信について➀ | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

昨日はプロホッケーリーグのNHLが7月から活動を再開する、という発表がありました。

 

https://www.cbc.ca/sports/hockey/nhl/gary-bettman-newser-nhl-playoff-format-1.5585260

 

 

そして近々、オンタリオ州でも一部のリンクでフィギュアスケートの練習が再開されるのではないか、という噂が漏れ聞こえて来ています。

 

しかしまだまだ、スポーツ界は新しい試合やら動向がないもんだから、どの競技も「過去シーズン振り返り」モードになっています。

 

気の毒に、トロントで受信できるスポーツ専用チャンネルは一斉に「CLASSIC なんちゃら」というタイトルで、NHLやらNBAやら野球やらから始まって、挙句の果てには大学レスリング、大学バスケ、などの試合を再放送して、かなり辛そう。

 

そしてモントリオール世界選手権が中止されたのを惜しんで(と思われる)、ISUも過去の世界選手権の全競技をノーカットでライスト配信するという興味深い試みに出ました。

 

なかなか最初から最後まで全ての選手(特にペアやアイスダンス)の演技を観ることは出来ないでしょうから、これは多くのファンや選手自身にとっても非常に嬉しい展開だったのではないかと思います。

 
2019年のさいたまワールド、2018年のミラノ・ワールドが次々と配信され、羽生選手のファンにとって大変、思い出の深いヘルシンキ・ワールドがいよいよ配信となり、大きな反響を呼びました。私も久しぶりに映像を観て、改めて素晴らしい大会であったことを再認識しました。
 
思うに、どんな出来事においても「リアルタイムで目撃する」のと、「時間が経ってから振り返る」のとでは、受け取り方が違います。
 
2017年の大会当時、ブログに書いたことを読み返せばその時に感じたことが生き生きと伝わって来ますが、2020年に同じ映像を観る場合は、その間の三年間に起こった様々な出来事が加味されていっそう感慨深い。
 
例えばアイスダンスのテサモエ・パパシズの一騎打ち。
 
2015年に突然、(前年の13位から一気に)ワールドチャンピオンとなった後、2015‐2016年のシーズンは負け知らずだった若手が、競技に復帰したベテランにトップの座を譲ることになった試合でした。しかしフリーダンスではパパシズの方がスコアでテサモエを上回っているんですよね。これが翌年の平昌オリンピックへの伏線となっていた訳で、実際はどちらが勝ってもおかしくなかった、というほど実力が拮抗していました。
 
後々、パパダキスたちが2016年から2018年の二年間に経験した葛藤や苦悩を非常に生々しく語ったインタビュー ("Quand la robe a tout gâché")と併せると、あのヘルシンキ・ワールドでのキスクラの様子や、コーチたちの笑顔が微妙に強張っているのが見て取れるような気がします。
 
また、ペアのトップ3組に関しては、スイ&ハン組の勢いが感じられた大会でした。しかし2位のサフチェンコ&マソー組がどんどん、息が合って来ているのも分かる。3位のタラソワ&モロゾフ組はロシア選手らしい、美しいラインと豪快なツイストが持ち味で、素晴らしい試合を締めくくりました。
 
しかもこの上位三組の女子はそれぞれ、酷い怪我を乗り越えての快挙だったのですよね。当時に書いたものを抜粋しますと:
 
 
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優勝したスイ・ハン組。素晴らしいフリーでの踏ん張りでした。スイ選手の両足首靭帯損傷というとてつもない負傷と手術とリハビリから立ち直してきたチームです。根性が違います。ショートの素晴らしい演技からもう優勝は間違いないだろうと思われましたが、二位に入ったサフチェンコ&マソー組の驚異的な追い上げにそれがひっくり返されそうになった。それでも結果的にはフリーも首位で終えて、完全優勝。見事でした。スイ選手の髪型がちょっとだけ気になったけれど(あれで前が見えるのだろうか?)、まあそれも今となっては微笑ましい。

二位のペアもアリオナ・サフチェンコ選手がGPフランス杯後の
練習中に足を骨折した
ため、グランプリ・ファイナルは欠場。練習再開は今年の一月でしたが、それでもワールドにしっかりとピークを合わせて怒涛の巻き返しを見せました。彼女の方はかつて別のパートナー(ロビン・ソルゴズィー選手)と何度も世界王者に輝いている大ベテラン、若いマソー選手をよくぞここまでリードして、五輪挑戦への準備を整えて来ました。来年は手ごわいぞ。

負傷と言えば三位のタラソワ&モロゾフ組、彼女は大会練習中に転倒し、その上をモロゾフ氏のスケートの刃が当たってしまったために膝辺りを14針も縫う大怪我を負っていたのです。それを微塵とも感じさせないド根性の演技でこれまた見事に表彰台。このペアの投げ技は独特の、一瞬スローモーションかと思われるほどの高さと飛距離が魅力です。

なんだかここまで書いて気が付いたらほとんどスポ根漫画か格闘技ドラマの筋書きの様です。

 

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おそらくこの三組が平昌オリンピックでも上位を争うであろうと思われたわけですが、そこに劇的にもカナダのメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォードが割って入り、見事に銅メダルを獲得しました。そしてサフチェンコさんが執念の5度目の出場でオリンピック・タイトルを手にして、スイ&ハン組は残念ながら準優勝となったのでした。

 

 

さて、女子の競技。この大会はもう、私にとってカナダスケート史上に残る快挙を収めたケイトリン・オズモンド選手とギャビー・デールマン選手の銀・銅メダルが全て。

 

 

 

 

ご参考までに過去記事はこちら:

 

2017年ヘルシンキ・ワールド:感動の女子FS「オー、カナダ!」

 

ああ、泣いた泣いた。ここは結果が分かっていても、再配信でまた号泣。これまた後に起こったことを考えるとよりいっそう、胸が詰まります。

 

ケイトリンちゃま(どうしてもそう呼びたい)は翌年の平昌五輪でロシア女子二人に次ぐ素晴らしい演技を見せて見事に表彰台に乗り、その翌月のミラノ・ワールドでは何と、世界チャンピオンの座に輝きました。

 

一方、デールマン選手はオリンピックの団体戦ではカナダの金メダル獲得に貢献したものの、個人戦ではまさかの大崩れ。そこから彼女の調子がとめどなく低下して、戻ることなく現在に至っています。

 

もう一つ、再配信を見てつくづく「スポーツって予測不可能だわあ」と思ったのが、ヘルシンキで優勝したメドヴェデワ選手についてでした。この時、誰が彼女の平昌五輪での優勝を疑ったでしょうか。かつてカートさんが(別の試合でのことだったかも知れませんが)、「メドヴェデワが優勝しないとしたら、会場行きのバスに乗り損ねたってことくらいしか考えられない」と言っていたことからも分かるように、当時の彼女は向かうところ敵なし、と思えるほどの強さでした。ミスをするはずがない、というオーラが全身から発されていて、見ている側にも心地よい。

 

キスクラでのコーチたちとの仲睦まじさも、その後の展開を考えると何とも言えません。おそらくメドヴェデワ選手にとってはこの頃が最盛期だったのかも知れませんが、女子選手の場合は特に、ピークの期間は短い事が痛感されます。

 

 

そしていよいよ男子。

 

羽生選手の大逆転劇にについては、語ることが残っているでしょうか。

 

いや、残っています。

 

 

しかしここでレニーの夕方の散歩があるので、続きはまた明日にでも。

 

 

 

どんどん増えるスズランのブーケ