追記:今日の午後、CBCの動画が公開されていました!Yちゃん教えてくれてありがとう。
いよいよ、このシリーズでは最後の記事
。。。にしたいと思いながら書き始めていますがどうなるか。
多分、多くの人が同じ心境かと思いますが
スポニチさんは「エア世界フィギュア」なんていう企画を始めてらっしゃいますし、

やり場を失った気持ちをどこかにぶつけたい、のです。
ということで普段はなかなか更新しないブログをこうやってつらつらと書いています。
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モントリオール・ワールドの大会スケジュールを見ています。
ISUのサイトには今のところ、まだ掲載されていますが、これっていつまで残るんでしょうね。記念に、というか何というか、ずっと置いたままなんでしょうか。
私は今大会、3月15日、日曜の午後から次の22日の日曜まで、合計93時間のシフトが入っていました。その内訳は練習リンクあるいはメインリンクのミックスゾーンの運営、フォトポジションの割り当て説明や記者会見の手伝い、そしてアワード式におけるメディア・エリアへのエスコートなどが決まっていましたが、実際はもっと長い間、あれこれで会場にいたと思われます。
大会を通して裏方を務めていると、こういったイベントの運営にはどれだけ多くの人員が、それぞれの担当部署でしっかりした指揮系統に従って役割分担を全うする必要があるのかが分かります。ワールドともなれば、新米のボランティアであっても、最初は浮かれた気持ちで参加したとしてもすぐに緊張感を察知して、全員が大会の成功に向けて頑張ったと思います。
モントリオール・ワールドの手伝いを楽しみにしていた多くのボランティアにとっても、中止は大きな落胆であったでしょう。
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これまでの7シーズン、私がミックスゾーンを手伝って来て一番、勉強になったのは、全ての選手、コーチ、チームリーダー達の喜びや悲しみを目の当たりに出来たことでした。
主だった選手たちはマスコミによってその成功や苦悩が詳細にレポートされるけれど、大会はそれらのスター選手だけのために運営されているのではない。全ての選手の努力が実るよう、リスペクトを持ってサポートしなければならない。そんな思いを強くしました。
何度かこのブログでもお伝えして来たとおり、試合中は、当たり前の様なことですが、どの選手にも同じ長さの時間しか与えられません。テレビ番組などでは(特に録画放送である場合)、煽りや繰り返しなどが挿入されてその辺りの感覚が掴みにくい。そのため、初めて会場で観戦をすると、(解説がないことも影響するでしょうが)淡々と試合が進行するのに拍子抜けすることがあるかも知れません。
シングルならば6人ひとグループに分かれて、6分間練習があり、その後は分刻みに一人ずつがリンク際に待機し、前の選手のスコアが出る間にリンクに滑り出して行って、自分の名前が呼ばれるのを待つ。
演技が始まり、所定の時間を経て、演技が終わり、挨拶をして、キスクラに向かう。
スコアを待ち、スコアを聞き、キスクラ裏に下がって来る。
コーチやチームリーダーたちと喜び合ったり、慰め合ったり、スコアの詳細を確かめたり。
それの繰り返しです。
私たちはその一人一人、一組一組、を送り出しては迎え、テレビ局のブースや記者たちの待ち構える(あるいは待ち構えていない)ミックスゾーンへと誘導し、更衣室へと送り返すはずでした。
18日の水曜日、まずは
ペアSPが午前10時半から午後14時30まで
オープニングセレモニーを挟んで
女子SPが午後16時45分から21時35分まで
19日の木曜日:
男子SPは午後12時05分から午後16時50分まで
ペアFPが午後18時から21時47分まで。
20日の金曜日:
アイスダンスRDが午前11時半から午後16時50分まで
女子FPが午後19時から21時50分まで
21日の土曜日:
アイスダンスFDが午後14時半から17時51分まで
男子FPが午後19時から22時56分まで
男子25カ国31人
女子29カ国36人
ペア15カ国24組
アイスダンス26カ国34人
総勢183人の選手たちが、私たちの前を通り過ぎていく予定でした。
(ご参考までに、エントリーされていた選手のリストをこの記事の一番下に載せておきます。他の大会と比べてもその長さに驚嘆します。)
彼・彼女たち全員の演技が、それに伴ったであろう様々な熱い感情が、全て発揮される場を失ってしまったことを心から惜しんでいます。
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今シーズン、触れ合う機会のあった個々の選手(例えば三浦&木原ペア)に対する想いなど、まだまだ書き切れていない部分もありますが、まずは大会全体に対する想いを記事にしておこうと思いました。
これからまだ未練たらしく、思いついたら書くかも知れませんが(例のISUアワード式に関してとか)、その時はよろしくお付き合いください。
また、メディアに関する個所で、CBCのクルーについても書くのを忘れていましたが、クオンさんたちもこの大会をどれだけ楽しみにしていたでしょうか。
昨年のさいたまワールドですっかり仲良しになったスコット・ラッセルさんやビデオグラファーの方々との再会もかないませんでした。解説陣のカート・ブラウニングさん達の愛と情熱のこもった演技解説が聞けなくなってしまったのも大きな損失です。
CBCは今シーズン、全く放映権を確保することが出来なかったので、このモントリオールでの自国開催ワールドに全力を注いでいたに違いありません。CBCの番組欄でフィギュアスケートに関する部分が空白になっているのが何とも悲しいです。

ラッセルさんが収録したとされる羽生選手との独占インタビューはどうなるのでしょうか。どうかお蔵入りしませんように。
追記:公開されました!!!!

こちらです!!

https://www.cbc.ca/sports/figure-skating-star-yuzuru-hanyu-shares-his-emotional-journey-to-becoming-world-s-best-1.5499431
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この記事をアップする前に、最後にこれだけは記しておきたい。
ワールド開催までのカウントダウンの一つとして、色んな国の選手たちがモントリオール2020年に向けての想いを語る動画がスケートカナダのツイッターに掲載されていたことは、すでにお伝えしました。
カナダ選手たちの動画はどうやらナショナルズで撮影されたものの様ですが、ハベル&ドノヒュー選手たちの動画は昨年10月のGPスケートカナダ大会で収録されたものです(背景のロゴで分かるかと思います)。おそらくアイスダンスの記者会見の後ではなかったかと記憶しています。
同大会では他にも何人、何組かの選手たちが似たような動画を作るため、カナダ連盟のリクエストによって取材を受けました。もちろん、この時点ではワールドへの出場が確定しているわけではないので、2月に入って、正式にエントリーが決まってから編集されていったのだと思います。
そんなわけで、GPスケートカナダのエキシビションの朝、日本メディアによる囲み取材の後に羽生選手の動画も収録されました。私がカナダ連盟のビデオグラファーからの質問を訳して、羽生選手に答えてもらいました。
モントリオール・ワールドが始まる直前に掲載される予定だったのではないかと思います。
やり取りの中で、羽生選手は(いつも通り)とても良いコメントを残してくれていました。
ケロウナの大会が終わったばかりだったこともあり、カナダで良い演技をすることによって、この国の人たちに恩返しをしたいと思っていたこと
2013年のロンドン・ワールド以来のカナダ開催ということで、モントリオール・ワールドを楽しみにしていること
そして、金メダル獲得への強い想いも語っていました。
良い動画になるはずでした。
収録の場となったケロウナのGPスケートカナダ大会は、これまで私が手伝って来たものの中で最もエキサイティングなイベントでした。羽生選手の溢れ出るエネルギー、最強のオーラを感じたのがあの時のフリー演技でした。
そんな彼がワールドに対する意気込みを語っているのを聞いて以来、きっときっとモントリオールでは優勝してくれる、と私は確信していました。
ごく近い友人にしかその確信は伝えていませんでしたが、シーズンが進んで行っても全く揺らぎませんでした。
2020年3月21日、土曜の夜。フリー演技が終わり、満員のベルセンターで、怒涛の様な歓声に包まれ、最高のドヤ顔でリンク中央に君臨する姿。
汗だくのままキスクラから下がって来て、テレビのインタビューを受け、囲み取材をこなし、「表彰式です!」と、急かされてまたリンクへと戻って行く姿。
表彰台のてっぺんに飛び乗り、大声で国歌を斉唱する姿。
その後、記者会見では無数のフラッシュを浴び、通訳を焦らすスピードで喋(くりまわ)る姿。
はっきりと目に浮かびます。
それらを見届けないまま、シーズンが無情にも終わってしまったことが返す返すも残念です。
(注:↑青字の部分については他の選手のファンの方々も、それぞれの予想・妄想がおありだったかと思います。それをディスリスペクトするというのではなく、とりあえず私の頭の中では、現実のものとして出来上がっていた、ということです。各自、好き勝手にシナリオを創り上げて、ワールド中止のうっ憤を晴らしましょう。)
ああ、幻となってしまったモントリオール・ワールド。
まだまだこの衝撃は尾を引きそうです。
そして肘は、今日も痛い。
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