りくりゅう組がオークビルに戻ってすでに10日も経っていますが、四大陸選手権についてあと少しだけ書きたい。
羽生選手が2020年の大会で優勝を収めて、めでたくジュニア~シニアの主要タイトルを全て揃えたということですが、よく考えたらもっともっと前にこれは出来ていたことなのかも、とふと思ったりしました。
2013~2014年のシーズンにGPF、オリンピック、そして世界選手権のトリプル・クラウンを獲った時点で、現在話題となっている「スーパー・スラム」が完成する可能性は飛躍的に高くなったのですから。
その前の年の2013年2月の大阪大会で四大陸選手権の優勝を逃していたのが本当に惜しかったし、2017年の準優勝の他は何かと怪我や病気などが重なってチャンスを逃していた。
ま、「~だったら」とか「~~してれば」って言うのは馬鹿々々しいのだと承知していますし、今シーズンは念願のGPスケートカナダを制覇して色んなジンクスを破ったという意味でよりいっそう、四大陸優勝が感慨深いのかも知れません。
とにかく獲りたいタイトルが獲れて良かった!おめでとうございます。
(以下のお写真は全て、カーマイケルさん提供です。シェアする場合はカーマイケルさんの名前をしっかりと記載してくださいね)
Photo by David Carmichael (February 2020, ISU Four Continents Championships)
あ、ちなみに先週、Pjクオンさんと会う機会があったのですが、彼女は未だに2017年の四大陸選手権での羽生選手の様子を良く思い出すのだと言ってました。
クオンさんは平昌五輪の準備イベントとなった江陵大会で場内アナウンスを担っていたため、演技直前の選手の顔を間近で見ることが出来るのですね。
そして羽生選手のフリー演技開始直前に、顔を、特に「目」を見た時、「あ、これはすごい演技になる」と直感したと言っていました。
よっぽど印象深い場面だったのか、この話をクオンさんの口から以前にも聞いたなあ、と思って検索したら、三年前のCBCのビデオキャストがありました(日本で観れるかどうか分かりませんが):
https://www.facebook.com/CBCOlympics/videos/981313285333419/
思うに、羽生選手のこの年の四大陸選手権でのフリー演技が、その翌月のヘルシンキ世界選手権での優勝に繋がったのでしょう。そう考えると、ますますモントリオールでの活躍が期待されますね。
さて、カナダ選手の観点からすると、この選手権はワールドへの派遣チームの選抜に影響するということで非常に大きな意味がありました。
カナディアン・ナショナルズが終わった時点で男子・女子・ペア・アイスダンスの全競技の枠にまだ空きがありました。決まっているのはペアの優勝者であったムアータワーズ&マリナロ組、そしてアイスダンスのギレス&ポワリエとラジョワ&ラガ組だけ。女子はシニアのミニマム・スコアを持っていない選手が優勝してしまったり、男子は優勝したローマン・サドフスキー選手でさえもまだ不確定、という異例の厳しさでした。
終わってみれば男子で今大会、最上位の6位に入ったナム・ニューエン選手が派遣されることになりました。ローマン選手、本当に残念でしたが、やはりピークがナショナルズに来てしまっていたのでしょうね。ナム選手にはぜひ、二枠を取り戻してもらって来年の男子の出場権を増やしてもらいましょう。
Photo by David Carmichael (February 2020, ISU Four Continents Championships)
そして女子は10位に入ったアリシア・ピノ―選手が決まりましたが、もうひと枠がまだ未定。今週のチャレンジ・カップでもう一度、バウスバック選手がミニマム・スコア獲得に挑むようです。いやはや。
Photo by David Carmichael (February 2020, ISU Four Continents Championships)
ペアはナショナルズで二位に入ったウオルシュ&ミショー組がめでたく決定。そしてアイスダンスの三枠目は怪我からの回復が待たれるフルニエ・ボードリ&ソーレンセン組に与えられました。
ところで今大会、個人的にはアイスダンスの部で銀メダルを獲ったパイパーたちにとても感動しました。
Photo by David Carmichael (February 2020, ISU Four Continents Championships)
今大会から、FDの衣装の色がベージュからワインレッドに変わり、
彼らの美しいラインがはっきりと見えるようになったのが嬉しい。
彼らはこれまでいつも「独創的」だとか、「革新的」だとかの形容詞が付くプログラムを演じることで知られていましたが、昨シーズンのFD「ヴィセント(Starry Starry Night)」辺りから変わったような気がします。もともとユニソンの技術やリフトの複雑さには定評があったけれど、あまりにもユニークで奇抜な衣装やテーマを選んでいたため、それが少し、霞んでいた。ここ2シーズンほど、もっと自分たちの演技自体に注目してもらうためのプログラム作りを目指しているのが伺えます。
その甲斐あって、昨年10月のGPスケートカナダではこれまで勝てなかったハベル&ドノヒュー組を抑えて優勝し、今大会でもまた見事にFDのスコアで優勢に立ち、最終順位でも上回りました。地元開催のワールドはきっと盛り上がることでしょう。
一方、アメリカを代表して今大会に出場していた3チームはいずれも同じモントリオールのギャドボワ・スクールを練習拠点としています。
かつてはクリケットのオーサーさんが慌ただしくキスクラとボード際を行き来していましたが、ギャドボワのコーチたちの忙しさはその比ではありません。なにせ、少なくとも16組中、10組は教え子たちが出場していたんですからね。こうなったらほぼ裏に下がって来る暇がなくてずーっと出ずっぱり、という感じです。ワールドでも同じような感じでしょう。
その中でどうやらマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組が今シーズン辺りからハベドノ組を抑えて、米国勢のトップの座をものにした様です。チョクベイ組はナショナルズで優勝し、今大会でもFDで逆転優勝。
Photo by David Carmichael (February 2020, ISU Four Continents Championships)
今シーズンのFDは、チョックさんが蛇で、ベイツさんが蛇使い、という設定だそうですが、まーよく似合うてはります。これはチョックさん、当たり役。
一方、ハベドノの「スター誕生」をテーマとしたフリーダンスは、スケカナで観た時からなんとなくギクシャクしている印象だったのですが、シーズン終盤になってもまだしっくり来ません。本人たちもそれは承知しているらしく、不安が見て取れます。
Photo by David Carmichael (February 2020, ISU Four Continents Championships)
さあさあ、ワールドでのアイスダンス競技は、これまでのパパシズ独走態勢からちょっと動きがありそうですね。結果的にはまだパパダキスたちが勝つと私は思っていますが、色々と政治的な動きが激しいのがこの競技の昔からの特徴です。例のフランス連盟ディディエ・ガイヤゲ会長失脚の影響もあるのか?見守りたいところですね。(次こそはこのトピックで記事を書くのだ)
最後に:
ISU配信のライストでこの大会をずっと見ていた人にとって、大きな話題の一つは解説者、Paul Alsterでした。
大会開始後、早々にそこかしこで「このライストの解説者、なんだかあまりためになるような事、言わないし、どうして選ばれたんだろ?」という声が上がっていました。
気を付けて聞いていると、特にアイスダンスに関しては驚くほど内容のないことばかりをずっと喋り続けている。主に衣装のこと、髪型のこと、時には音楽のタイトルやどうでも良いようなネタを(しかも演技中に)散りばめて、肝心のエレメンツの名前やその出来については全く言及せず。もしかして、アイスダンスについて何も知らないのか?ペアについても似たりよったり。あれ?マジでおかしくない?
そして男女シングル競技になるとほんの少し、ましな解説も聞かれたのですが、視聴者の激怒を買ったのがジュンファン・チャ選手のFS演技後のキスクラの様子について、アルスター氏が言ったことでした。
ジャッキー・ウオンさんのツイッターでファンが書き起こしている様に:
私もこれをライブで聞いていたんですが、耳を疑いました。
「あの帽子、なんだろ。マクベスに出て来るようなものみたい。」と言った後、それだけでもたいがいとんでもないのに、間をおいてから追い打ちをかけるように「似合わないね。まるで Widow Twankey だよ。」、と。
ちなみにウィキペディアで調べると、この「Widow Twankey」とは19世紀のイギリスの喜劇の登場人物だったそうです:
https://en.wikipedia.org/wiki/Widow_Twankey
なんだか詳しく訳すのも気分が悪いので止めておきますが、ジャッキー・ウオンさんがこのファンからの指摘に対して言ったことには、当日のライスト解説を聞いていた多くの人が同意したでしょう:
本当にどうしてこんな無神経で失礼なことを堂々と言う人にISUのライスト解説の大役が回って来たんだろう、と思いますよね。正直、カナダのテレビ放送でこんな事言ったら速攻でクビですよ。
ワールドのライストで解説をするのがもっとマシな人でありますように。