羽生選手の全日本でのSP演技。
終わってからの囲み取材で語った(と思われる)
「ほんと一人のスケートじゃないなと思って」
という言葉通り、彼は自分一人で、自分一人のために滑っているのではないことが動画を観ている私にも伝わってきました。
これはもう普通のフィギュアスケート競技というよりも、何か大きな力が、羽生結弦というアスリートの身体を借りてあの場でメッセージを発しているのだ、とでも言いたくなるような、
TRANSCENDENT
という形容詞が相応しい、
何かを「超越した」、普通ではないもの。
平昌の演技に感じたことに似ているかも知れません。
スケートカナダでのSPは、ただただ圧倒的に強い、自信に溢れた、ド迫力の演技。
それとは違ってこの全日本でのSPは、おそらく底知れぬ身体的・精神的な疲労感の中で、もう自分でもどこから汲み取って来たのか分からないような不思議な力に突き動かされたような演技でした。(←と、私には思えた、という話ですよ。)
見守る二人のコーチたちも、いつものルーティン的な動作を重ねながら何となく神妙な雰囲気。どれだけ試合前にしんどい時間があったのかを知っているからでしょうか。
でもそんな緊張感が漂う中でもちょっと面白かったのが、演技後のキスクラで、スコアを待ちながら三人でスロー再生を見ていて、
ブライアンとジスランが、
「お、あのサルコウはこれまでで一番、良かったんじゃない?」とか、
「あのコンボも最高」などと感想を述べ合い、
いよいよステップに入る前のところが写ると、羽生選手が
「さ、じゃあこれで僕、帰ろかな」
みたいなことを言いながら立ち上がる素振りを見せると、ブライアンが笑いながら
「Not just yet」
いや、まだだよ
と押しとどめ、そして
「That'll really confuse them」
そんなことしたら皆、すごい混乱しちゃう
と続ける。
そりゃあ、キスクラが大写しになった時に羽生選手がいなくなってて、ブリブラだけが座ってたら皆、びっくりするわ。
さらにブライアンが
「Last time it was just you}
この前(つまりGPFでのキスクラ)は君だけだったし
と言うと、すかさず羽生選手は:
「And then, Pooh」
あと、プーとね
と返す。
このやり取りの絶妙な間合いがサイコー。
フリーもきっとすごいことになる。ドキドキしながら待ってます。