ほんまに終わるのか、と思いつつ、GPスケートカナダ男子FSの続きです。
この後、もう一つ総括というか雑感の記事をも書きたいと思っているので、あと少し、お付き合いください。
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さて、前記事では羽生選手の演技終了からキスクラに行く所までを書きました。
スコアを待ちながらキスクラの右上に設置されていたTSNの解説席にいるトレイシーさんの方を見上げて手を振ったりしていましたね。
「トレイシーかーさーん、頑張ったよー、
今日はステップ、ミスらなかったでしょー」
ところで今大会では、公式練習中ずっとキスクラの一番中央寄りにブライアンとジスランが陣取って、羽生選手の練習を見ていました。これはTSNの解説席で全ての練習を見渡しながら、テレビ放映の本番のためのメモを取っているトレイシーさんに最も近い場所だったから、だそうです。上から見てて彼女が何か気になることがあればすぐに伝えられるから、でしょうね。
そしてさらに、キスクラでコーチに囲まれながら羽生選手が「今日はトウ、大丈夫だと良いな」みたいな(含みアリ、の)ことを言ってたと思います。
ジスランの目ん玉にご注目
これにはコーチたちも大爆笑。
そして二人とも交互に「いや、大丈夫だと思うよ」と言います。
さあ、スコアが出ます。
いちはやく、ジスランが「うおー!」と声を上げ、大喜び。
そして羽生選手も立って、声援に応えますが、すぐに次に滑るナム君への配慮を促し、歓声を静めるジェスチャーをします。何と思慮深い。この場面に関しては、放送の終盤で取り上げられ、ロッドさんが羽生選手の他選手へのリスペクトを讃えていました。
トレイシーさんも「さあ、ここからはナムの時間です。」と興奮を抑えます。ユヅの後に滑るのは難しいけれど、「And he's ready for this」と言います。つまり、ナムはこの舞台に立つ準備が十分、出来ている、大会会場に来てから練習ではずっと調子が良かったし、ここで彼も呼吸を整えて、アドレナリンをコントロールして、自分のゾーンに入って行かないといけない、と。
ビートルズメドレーに乗せて、得意のクワッド・サルコウのコンビネーションを跳びます。見事に成功。
二つ目の4サルコウもしっかり着氷。観客の手拍子が後押しします。
3ルッツも決まる。3アクセルのコンビネーションは1トウになるも、ちゃんと付ける。
ステップ・シークエンスからナム君のパフォーマーの本領が発揮されます。笑みも見えてもうここからは勢いが止まらない。
二つ目の3アクセルからの三連続ジャンプを決め、最後のジャンプの3フリップが決まった瞬間、コーチのロブさんの方を指をさす。
もう最後は大騒ぎ、お茶目なナム君が大爆発。観客にアピールしまくって大変です。
いやもう、すごかった。
The Skate of Nam's Life, At HOME! And after Yuzu!
How about you, Nam Nguyen, How about you.
はい、ロッドさんのベタコメで締めくくられました。
人生最高の演技、しかも自国で、しかもユヅの後で。
どうだい、ナム、大したもんだよ。
そしてキスクラではTSNのインタビューが始まります。最終滑走者のナム君がサラ・オルレスキー嬢に聞かれます:
ナム、言葉がないかも知れないけど、今の気持ち、聞かせてくれる?
Aaah, Sarah, it's pretty unreal, The whole experience, to be able to put out a decent short last night, and to skate after Yuzu, and just, you know, be part of that whole Winnie-the-Pooh experience, ah, and to skate what I did today, unbelievable, I'm really happy. Honestly you're right, I don't even have anything to say right now.
あ~、サラ、本当にこれマジ?って感じだよ。起こったこと全部、まずは昨日の晩、そこそこのショートの出来だったこと、そして(今日)ユヅの後で滑って、あの「プーさん体験」に参加できたこと、それで自分があんな風な演技が出来たこと、全部、信じられない。本当にハッピーだね。正直、君の言う通りだよ、ここで今、何も言うことがみつからない。
サラさんも優しい眼差しで見守ります。ファーストネームで呼び合っても全然、おかしくないほど、長い付き合いです。ナム君がまだほんの小さな頃からナショナルズで活躍していたのを見て来て、その後の浮き沈みを全て把握しているTSNのチームですからね。彼のこの大会での復活は純粋に嬉しかったと思います。
今、話に出たけど、ユヅの後に滑るって、難しかったんじゃない(how challenging was that)?
Honestly, it doesn't faze me one bit. It's not that challenging. I had 45 minutes in the back to kind of regroup, right? so...I fully utilized that, and I'm just happy that I was able to do my job today.
正直、全然気にならなかった。そんなに難しいことなんかじゃなかったよ。(6練が終わってから)裏で調子を整えるのに45分間あるでしょ?だからそれを最大限に活用しただけ。で、今日、しっかりと自分のやるべきことをやり遂げられたのが本当に嬉しい。
と満面の笑みのナム君でした。
さて、裏ではナム君の演技中、キスクラから引き揚げて来た羽生選手が待機していました。終わると、TSNはナム君のキスクラのインタビューに行くので、羽生選手はまずテレ朝のインタビューがあり、そこから戻って来たサラさんと優勝インタビュー。
この様子も素敵でした。
何気にドヤ顔
こうやってクールに見つめておいて、
でも答え終わったらいつものユヅ・スマイルで締めくくる。
サラさん、めっちゃ近い。吸い込まれて行ってるだろ。
にっこーん
しかしこんなところで見とれてダラけている場合ではございません。田中選手もテレ朝と囲み取材があるし、ナム君も表彰式までミックスゾーンの取材があります。
最後の競技が終わったとあって、もうキスクラ裏はごった返しています。コーチ、選手、メディア、連盟関係者、表彰式の準備をするスタッフが所狭しと詰めかける中、(ペアの選手たちも次に表彰式がありますからね)、羽生選手、ナム選手、そして田中選手を招集して、リンク入り口に誘導します。
ここからは皆さんがご覧になった通りの、三選手全員の笑顔全開、お茶目合戦満載、ファンの喜び爆発の表彰式が繰り広げられました。
この時にはジャッジ席を開放してフォトグラファーさんたちを入れることが出来ます。メディアチームのB君がその席まで皆さんを引率して、ついでにこの写真を撮って来てくれました。
Photo by:
2019 Skate Canada International
Media Team
良い笑顔です。さんざん、フォトグラファーさんへのサービス、ファンへの挨拶を済ませ、キスクラ裏に引き上げて来る選手たち。会場では次のペアの表彰式も進んでいきます。
でも我々の仕事はまだここから、続きまんねん。
男子の記者会見があるため、着替えてもらい、階上に連れて行くことになります。
昨日、頼んでいたセキュリティの兄ちゃんがやる気満々でやって来て、エスコートを務めてくれます。会見場では全ての準備が整い、メディアも待ちかねています。
SPの後の会見では、私は司会を手伝ったのですが、FSの会見では羽生選手と田中選手が壇上に座ることになったので、私も通訳として付かせていただくことになりました。
会見自体は、まず恒例の、三選手へのFSと大会全体の感想を聞くところから始まり、こういう場合、羽生選手はしっかりと英語でコメントします。会見での発言内容はおそらくまた雑誌で全貌が出て来ると思うのでここではあまり詳しく書きません。ただ、後の質問に対しては、ナム君の演技の前に十分の時間を取ってくれたこと、氷上のプーさんの回収もシミュレーションまで行って備えてくれたこと、など大会運営者への感謝の言葉も忘れず、非常にきめ細かい気遣いが見られました。
TSNのインタビューの中でも垣間見えたことですが、今大会で実力的に自分だけが突出しているようなメディアからの質問にも煽られず、一緒に出場した選手たちに対してしっかりとリスペクトを示していたのはさすがです。
ナム選手は羽生選手の「GODLIKE PERFORMANCE(神業のような演技)」の後で落ち着いて自分の演技が出来たことについて語りました。実は大会に来てから体調を崩して風邪を引いてしまい、ヤバいと思ったものの何とか気合を入れて挑んだ、と。結果的に久々のGP大会でのメダル、しかも銀メダルが獲れたことは嬉しい、と述べました。
田中選手は冷静に自分の演技を分析し、SPから気を取り直して良いFSが滑れた、ジャンプを安定させて、まだ伸びしろがあるので次の大会に備えたい、とのことでした。途中、記者から中国杯への意欲を聞かれ、SPからクワッドを成功させて、二つのプログラムが揃えられるように集中していきたい、といった旨のコメントをしていました。
また今大会でロシアのトルソワ選手がクワッドを四本トライし、三本着氷させたことについての質問がありましたが、羽生選手はこれにも英語で答えていました。
(こうして述懐してみると、おそらく英語メディアからの質問には英語で、日本メディアには日本語で答えていたのかな、と思えてきました。こういった配慮も素晴らしい。)
ロシアの女子の研究はすごくしている、という羽生選手のコメントはすでに報道されていると思います。ナム君のコメントでおかしかったのは、「今後、男女を同じ競技で戦わせることになるんだったら、ぼくは潮時」と言ったところでした。いやいや、ナム君、何をご謙遜。
会見中、羽生選手の新しいコンビネーションである4トウ・1Eu・3フリップに関する分析が展開されて、私などはただただ呆然と聞いていました。が、特に日本の記者さんたちはここ数年、ずっと羽生選手の番記者みたいになっていてほぼ「オタク化」(すみません)している様な気がします。皆さん、そういったコアな質問と答に喜びを見出されているのでしょうね。真剣に身を乗り出してメモってらっしゃいました。
会見が終わり、またフォトグラファーが一斉に押し寄せて写真撮影、それからさらに羽生選手のISUによる勝利者インタビューや、囲み取材が始まります。ものすごい密度の濃さです。
他の選手や関係者たちも会見場に残り、談笑がしばらく続きます。取材が終わるとライターさんたちは急いでデスクに戻り、カタカタとパソコンを鳴らし始めます。フォトグラファーさんたちは必死に写真の編集、そして送信。メディアセンターはまだまだ活気に溢れています。
階下に選手を送って行く段になって、またセキュリティの兄ちゃん登場。もう一人、彼の上司みたいなひときわデカい男性もやって来て、二人でのエスコートとなります。
会場にはすでにお客さんはいなくなっていますので、静かなものですが、選手をバスに乗せるまではセキュリティを外しません。そんな我々の心配をよそに、試合の緊張感から解放されたからか、羽生選手が軽やかに、ヒラヒラと通路を歩いて行きます。まさかこの期に及んで、通路の角の壁にぶち当たったりしないか、と(今だから思い返して笑えますが)我々もちょっと過敏になっていたのは否めません。貴重な宝物を預かって、無事に引き渡すまでが仕事、という感じですかね。
シャトルの入り口までセキュリティの兄ちゃんたちが羽生選手をしっかり囲んで送り込み、ようやくホッとします。
これで長い長い、試合の二日目が終了しました。
ボランティア仲間とホテルに帰り、その夜は少し、飲みましたが、ただただ脱力。
しかしまだ次の日のエキシビションがあるのです。
この日の模様についてはすでに記事にしてありますが、最後にメディアチームの一人がジャッジ席から撮ったエキシビションの集合写真を幾つかシェアしておきますね。
なかなか綺麗です。
All photos by 2019 Skate Canada International Media Team
あとは雑感記事を残すのみ。。。ゼイゼイ。





















