2019年GPスケートカナダ(ケロウナ大会):10月26日(土)男子FS➀(訂正あり) | 覚え書きあれこれ

覚え書きあれこれ

記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

いよいよ2019年GPスケートカナダ、男子FSのレポートです。

 

一週間遅れにもなっているので、一回で終わらそうと思ったのですが、途中でバテました。よって続きはまた明日。

 

とりあえず、羽生選手の演技終了時まで、書きました。

 

*****

 

男子フリーが始まったのは10月26日(土)の18時半。会場は期待と緊張が漲っています。

 

誰が優勝するのか、ということは最初から誰も問題にしていない大会でした。

 

それよりも羽生結弦がどのように優勝するのか

 

そこがスケート界における全員の注目の的だったでしょう。

 

男子競技に関する、テレビ局のディレクターさんとの打ち合わせは何時間も前から始まっていました。演技後のインタビューとミックスゾーンの取材をどうコーディネイトするのか、羽生選手は滑走順が最後から二番目、順位が(正式に)確定するまでの数分間、どこで待機してもらうのか。彼が座る椅子をあそこでもない、ここでもない、と移動させながら考えるのもワクワクします。テレビ朝日もTSNも撮りやすい場所、ということで両方のブースの間に席を作り、何故かそこかしこに置いてあった赤いランプが足元から照らしているのもハロウィーンっぽくって良いかな、などと話し合いました。(が、少なくともTSNではその場面が写らず、残念。日本の放送では写りましたか?)

 

第一グループの演技が始まり、裏では下がって来た選手たちを次々と取材エリアへと導きます。これはISUの決まりであり、どんな結果であろうと、選手たちはミックスゾーンで取材を受けることが義務付けられています。私がスケートカナダの大会を手伝い始めた6年前、ここまで徹底されていたという記憶がないので、最近の流れなのかも知れません。

 

変わらないのはTSNのクルーのメンバーです。レポーターは金髪のお姉さん、サラ・オルレスキー、そしてメイン・カメラマンのMさんとディレクターのJさんも毎回、馴染みの面々です。彼らはカナダ選手権でも中継を担当しているので、カナダ国内の選手に関しては小さい頃から知っていて取材をしている、という背景があります。どうりでローマン君や二コラ君に対しても大変、温かみのある様子で接しているし、ナム君に至ってはファーストネームでサラさんに話しかけて来るという親しさです(これに関しては後ほど)。

 

それにしてもローマン君のジャンプの不安定さはどうしたことでしょうか。今さら背が伸びたから、などという理由では済まされない何かがある気がします。正直、今大会に出場している選手の中でもローマン選手のスケーティングはトップレベルで、スピンも素晴らしい。苦手だったトリプル・アクセルも綺麗に決まるのを何度も見ているし、クワッド・サルコウはジュニア時代から彼の武器の一つでした。それが何故?何故?と言い始めて数年が経ちます。次戦はNHK杯ですので、どうか調子を整えて、日本のファンの前で良い演技を見せてほしいと思います。

 

第一グループ四番目の滑走はイタリアのマテオ・リッツォ選手でした。私は大会前、この選手が表彰台を狙えるのかな、と思っていたのですが、ちょっと不調でしたね。SPで出遅れてしまって残念でした。しかしフリーではなかなか良い演技で、キスクラでも冷静に結果を受け止めていました。

 

ところでマテオ君は(コーチでもある)お父さんとすごく似ている、という評判です。確かに相似形を思わせるほどかも知れません。(そしてお父さんは俳優のChristoph Waltzに似ている気がする)

 

 

 

 

二コラ・ナドー選手も何だか伸び悩んでいる印象がありますが、フリーは良い演技でした。聞くところによると、背中に大きな怪我を負い、2シーズンほどを棒に振った、ということなので、復帰途上と解釈できるでしょうか。185センチ近い長身で、均整の取れた体型から繰り出されるトリプル・アクセルはものすごい迫力があります。

 

さて、第二グループが六分間練習に入り、そろそろ裏でもテンションが上がってきます。

 

TSNの解説ではこの模様をトレイシーさんたちが解説しています。ナム選手が羽生選手の後に滑る、ということに関して、(ナム君の)コーチのロブ・バークに話を聞いたけれど、ちゃんと対策は練ってある、と。プーさんが大方、回収された頃に出て行ってゆっくりウオーミングアップを始めるつもりだ、ということでした。

 

そしてロッドさんが

 

「I hope this guy is getting royalty on all the pooh bears that have ever been sold (彼はこれまで売れたプーさんのぬいぐるみに関して、売り上げの何割かもらってないとおかしいよね)」

 

と言うと

 

トレイシーさん:

 

「You'd think, but no, he isn't (だと思うでしょ?それがもらってないのよね)]

 

と、笑う。

 

その後、クワッド・ループの練習を見ながらロッドさんが、噂では彼、クワッド・アクセルに挑戦するつもりって聞いたけど、と話を振る。それにトレイシーさんの答えは:

 

He has tried a quad axel, he's tried a number of them. In my opinion, it's frightening, as he hurls himself into the air, but with Yuzuru anything is possible.

(「挑戦するつもり」って)もうやってるわよ、何度もね。私に言わせるとおっかないけど(笑う)、あの空中にものすごい勢いで突っ込んで行く様は。でもユヅルのことだから、何が起こっても不思議じゃないわ(~不可能なことはない)。

 

そしてまた4ループのトライが写し出され、今回は成功。トレイシーさんもそれを確認する。

 

ロッドさんが羽生選手のトリプル・アクセルを見ていると、四回転入れる余裕があるように思えるけど、と続ける。

 

Oh there's definitely room, (but) you have to hit it perfectly.

ええ、余裕は十分、あるわ。でも問題は完璧にタイミングが合うかどうか、ということよ

 

 

六分間練習が終わり、第二グループ最初の滑走者はデニス・ヴァシリエフス選手です。往年の名スケーター、ステファン・ランビエールさんをコーチに持つ彼は、本当に優雅な滑りを見せます。トレイシーさんもその辺りを絶賛していました。

 

残念ながらジャンプを二つ、パンクしてしまいますが、細部に渡って「指先まで」気を配った演技が素晴らしい、と。トレイシーさんはジャンプ時の姿勢、特に背中の線に目が行くようですね。ヴァシリエフス選手のこのフリーに関してはちょっと「演技に入り込んでしまったかも知れない」けれど、そこはあまり気にならない。ジャンプを安定させることに今後は集中すれば良い、という解説でした。自分としてはこの演技の芸術性に関してはすごく良かったと思う、徐々にまとまって来てる気がするわ、と励まします。着氷での綺麗な姿勢が、ジャッジに加点を与える気にさせる、と。

 

三番目の滑走は田中刑事選手。本田選手とケロウナに来てから交通事故に遭ったことも解説で触れられます。

 

冒頭から調子が良さそうに二つの四回転サルコウが決まって波に乗って行きました。次の3アクセル・3トウが決まった辺りから裏でもちょっとザワついて来て、メダルに手が届くのではないか、という雰囲気になりました。

 

後半、ちょっと疲れて来たかな?と思われたのですが、3ルッツが決まってステップに入ると、俄然、盛り上がって来てトレイシーさんも「Great energy in the step sequence!」と声を上げます。
 
そういえば、数年前のNHK杯だったかしら、田中選手が演技後半にどんどん、勢いがついて素晴らしい結果を出しましたね。その時のことを思い出しました。

 

スロー再生でトレイシーさんが指摘したのは日本の選手が満員の会場で試合やアイスショーを経験しているので、観客へのアピールが得意である、ということ。確かにそうかも知れません。そして田中選手の身体の使い方についても、華があり、全身を駆使して、しっかりと体幹から動きを繰り出している、と言っています。

 

田中選手に高い得点が出て、暫定首位。そこでカムデン・プルキネン選手の演技が始まります。曲は「ラスト・エンペラー」、振り付けはステファン・ランビエールさんによる、との説明が入ります。

 

カムデン選手、SPに続いて冒頭の4トウループが綺麗に決まります。この選手は過去何度かショートで素晴らしい演技をしておきながら、フリーで大崩れ、ということがあっただけに私はドキドキしていました。今大会でもそうなったらどうしよう、とどこかで思っていても絶対に口に出してはいけない、と。それだけにジャンプがどんどん、決まって行って、最小限のミスで終われたのは大躍進!!

 

途中のステップでちょこっとよろけて苦笑したり、終盤でスピードが落ちたかのように思ったのですが、とにかく良かった!!

 

 

 

 

彼のヒーロー、羽生結弦選手とはオータムクラシックでも一緒に出場している、とロッドさん。このスケートカナダでも、満員の会場で、憧れのユヅル・ハニュウの前で滑るのは、精神的にも(テンションが上がって)ちょっと疲れたかも、とトレイシーさんが笑います。

 

スロー再生ではカムデン選手のジャンプ着氷後の流れを絶賛。"Look at the flow on the landing, I love that."見て頂戴、私、これが好きなのよ。スケーターがジャンプの入りと出で同じスピードを継続できる時、"That's why you jump"ジャンプってこうじゃなくちゃ、ここ最近、ジャンプにおいてはこういう側面がちょっと疎かになっている、と畳みかける。
 
 
カムデン選手、パーソナル・ベストを出すも田中選手のトータルには追いつかず。「O-kayyyyy!!?(良いんじゃないの~?」という反応が可愛い。コーチたちも満面の笑みです。
 
ここで田中選手のメダルが確定します。「え、ということは記者会見では私も通訳として登場するってこと?」などと密かにパニクる私でした。
 
そして羽生選手の演技が終わるまではライターさんたちが取材エリアに来ることはないし、テレ朝のインタビューも順位が確定してからではないと出来ないので、田中選手はそのまま待機ということになります。
 
 
さあ、さあ、さあ、羽生選手の出番です。
 
 
 
 
 
カメラマンの熱視線が尋常ではない。
 
 
 
 
でも面白いのは羽生選手がキスクラ側のボード際に立っている間は皆が当然、そっちの方を向いていて
 
 
 
そこを離れてリンク中央に出るそぶりを見せた途端、先取りしてカメラのレンズを右に向けるカメラマンが何人か(矢口さんとか)。
 
 
 
 
 
それぞれタイミングとか感覚、があるんでしょうね。
 
演技開始。


冒頭にはクワッド・ループを予定している、とトレイシーさんが静かに言います。(この時の彼女の心中ってどんなだろう、って思うんですが「大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫、ユヅ、出来る出来る出来る出来る」かなあ?)
 
着氷が少し乱れる
 
Didnt't get a good takeoff, was able to hang on to the landing
テイクオフが上手く行かなかったけど、着氷はこらえました。
 
二つ目のジャンプは見事に決まり
 
Quad Sal!
 
と叫ぶ。
 
そこから二人とも見守る中、スピン、ステップシークエンス、3ルッツ、とどんどん進み、単独の4トウも美しく決まる。

そして二つ目の4Tからのオイラー・フリップのコンビネーションが決まると、たまりかねたようにロッドさんが

one by one by one,
ひとつ、またひとつ、そしてまたひとつ(決めて行く)
 
と漏らし、それにトレイシーさんが:
 
FOUR quads!!
クワッド四つよ!
 
と、ちょっと得意げ。
 
そして
 
And now
さあ、ここから
 
Triple Axel-Triple Toe!
 
と叫ぶ。(トレイシーさんって何故か昔からこのコンビネーションを羽生選手が跳ぶとすごく興奮するような気がします。)
 
そして明らかにプログラムを隅から隅まで知り尽くしている者にしか出来ないような解説が続きます。

Final jumping pass..
最後のジャンピング・パスは。。。
 
Counter...
カウンターから。。。
 
Triple Axel Double Toe!!
 
Wow!!

そして思わず「ハッハー!!」と高笑い。
 
イナバウアーに差し掛かるとロッドさんが

(He) lost his royal world title last spring
昨春は世界タイトルを譲ったが
(注:シエナさんからご指摘いただき、「ロイヤル」を「ワールド」、と訂正します。シエナさん、ありがとう!)
And that loss has brought out the best in him!!
そしてその敗北が彼に最大限の力を発揮させたのよ(彼をさらに強くしたのよ)!
 
演技の終了に合わせてまたロッドさんがベタコメ放出。

This week in Kelowna he has been UNTOUCHABLE
今週、ケロウナでは誰も彼に手が届かなかった
 
The incredible YUZU
 
Incredible!
 
(訳省略。トレイシーさんも黙ってる)
 
そしてプーさんの雨嵐
 
Let it rain, LET IT RAIN
雨よ、降れ、降れ
 
回収チーム、リンク中を走り回る。
This is gonna take a while
しばらくかかりそうだね

They came, they saw, and he conquered, again
人々は来て、見て、そして彼は征服した、またもや
 
↑ これはラテン語のVeni, vidi, viciという言い回しをもじったもので、カエサルが戦いに勝った際に言ったとされる言葉です。「来た、見た、勝った」というのが日本語のウィキペディアに載ってますが、要するに戦場にやって来て、状況を判断し、そして素早く勝負に勝った、という意味が含まれています。ロッドさんの場合、来て、観たのはファン、そして征服したのは羽生結弦、というオチですが、まあこれくらいは許そうかな。
 
トレイシーさんも興奮冷めやらぬ様子です。
 
My goodness, you just don't get tired of watching Yuzuru Hanyu perform. That was INSPIRED. my goodness. Can't wait to look at the replays, they're up next.
まあまあ、なんというか。全く、ユヅル・ハニュウの演技を見ていて飽きる、ということはないわね。何かに突き動かされたような演技、ああ何てこと。さあ、次はスロー再生よ、見るのが楽しみだわ。
 
ナム君がキスクラ近辺にやって来て、羽生選手とハグ。
 
 
 
Look at Nam, poor guy knows he's skating for a medal
ナム、気の毒だけど演技次第でメダル圏内だって分かってる。
 
スロー再生始まる。

There's the Quad Loop, hang on to the landing. You can hear them talking through this
これが4ループね、着氷はこらえてる。(キスクラで)これを見ながら話し合ってるのが聞こえるわね。
 
Salchow. Once he got those first two jumps done, it was like he relaxed into it. Boy when he puts his self in the zone
サルコウ。最初の二つのジャンプが終わった時点で、力を抜いて(演技に)入り込むことが出来たみたい。もうね、彼がゾーンに入りこんだら(すごいものよ)。
 
Quad Toe THAT is textbook
4T、これはもう教科書のお手本。
 
and following up with a second one
Quad Toe, perfect position on the landing
そこから続けて二つ目
4T、着氷の姿勢も完璧。
 
トレイシーさんが笑って
 
I'm hearing Brian Orser saying "Wow, Wow"
Brian, come on, you gotta do better than that
ブライアン・オーサーが「WOW WOW」って言ってるのが聞こえる。もうブライアンったら、もうちょっとマシなこと言ってちょうだいよ。
 
最初のトリプル・アクセルの映像でロッドさんは「Like butter」と言う。バターのように滑らかっていう意味でしょうね。
 
二つ目のトリプル・アクセルのスロー再生で
 
Watch this, out of a counter
これ、見てよ、カウンターから。。。
 
Boom!
 
ちょっとこらえた着氷からコンビネーションでタノをつけた2Tが写し出され、キスクラで羽生選手の「キャハハハ」という笑い声が聞こえる。トレイシーさんもつられて笑う。
 
観客の熱狂ぶりと演技の素晴らしさに、これってオリンピックじゃないよね、グランプリ大会だよね?とロッドさんが信じられないように笑う。
 
キスクラが写り、羽生選手たちがトレイシーさんの方を向いているのが分かる。
 
。。。とまあまだTSNの方はナム君の演技へと続くのですが、ここでいったん、切ります。
 
ああ、やっぱり一回では終わらなかった。。。すみません。
 
この後、表彰式、記者会見についてももう少し書きたい。
 
でも、力尽きました。