2019年GPスケートカナダ(ケロウナ大会):10月25日(金)ペアSP・男子SP | 覚え書きあれこれ

覚え書きあれこれ

記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

(最後の方でちょっと補足を加えました)

 

25日(金曜日)の続きです。

 

(試合に関する画像はTSNの録画を見ながらの画面撮りです。ご参考までに、ということで、家の照明が映り込んだりしてますが、ご理解ください。)

 

前の記事で書き忘れましたが、女子SPの記者会見で微笑ましかったのはユ・ヨン選手が自身のトリプルアクセルについて聞かれた時、紀平選手のことをとても立てていたこと。初々しく、謙遜していてまだ自分はリカほどには優れていない、と言っていました。

 

考えてみれば、あの会見で壇上に並んでいたのは17才(紀平選手)、15才(ユ選手)そして15才(トルソワ選手)という、ジュニア大会でもおかしくない顔ぶれだったんですよね。それが今や女子フィギュア界のトップ、というのが現状です。

 

そして囲み取材での紀平選手の受け答えを聞いていると、どれだけ綿密にジャンプの軌道について考え、練習での計画通りに本番でも冷静に跳んでいるのか、というのが分かります。しかもそれを終始笑顔で、落ち着いて話している様子が大物感を醸し出しています。

 

さて、女子の部が終わってしばしの休憩がありました。その間もリザルトをオペレーション部から取って来て、色別に印刷してメディアの皆さんに配ったり、という作業があります。メディアチームは全員、メディアセンターにいったん戻って午後からの作戦を練ります。

 

私はくるぶしの具合を考慮して、ペアの部はセンターの方の業務を担うことにしました。男子の部が始まると目まぐるしいですからね。

 

ペアに関しては、私の今シーズンの注目の的は、新たなパートナーシップを組んだ、ルボフ・イリユシェシキナ&チャーリー・ビロドー組です。二人とも別々のパートナーと長らく組んでいたのが、引退(モスコヴィッチさんの場合)や解消(セガン選手の場合)が原因で新しいパートナーを探していて、お互い、気に入った、という経緯があります。まだ組んで間もないのに、息がぴったり合ってフィンランディア杯ではいきなり銅メダルを獲得するという好調な出だしです。

 

かつてソルトレイクで五輪金メダルを獲ったサレ&ペルティエ組が組んでから急速にトップにのし上がって行ったように、ペアというものはお互い経験がある者同士である場合、相性さえ合えば一気に花開く、ということもあるようです。

 

リフトの時、女性の方がいかに飛び込んでくるのか、男性の方がバランスよく持ち上げられるのか、サイド・バイ・サイドのジャンプの時のタイミングが似ているのか、スロー・ジャンプの時の息の合わせ方がぴったり来るのか、等々、一人で滑るのとは全く異なる要因によってパフォーマンスの良し悪しが決まる競技ですからね。

 

それがルボフとチャーリーの場合はツボにはまった、ということのようです。また、二人の体付きに関しても、トレイシーさんは「ラインがとても綺麗」と言っていました。こういうことも重要です。

 

カナダのトップ・ペアはカーステン・ムーアタワーズ&マイケル・マリナロです。彼らは現在、オークビルのリンクでブルノー・マルコットとメーガン・デュハメル夫妻の下で練習しています。この拠点では日本の三浦&木原ペアも来ていて、良いトレーニングが詰めていると聞きます。

 

ブルノーさんたちをフィーチャーした動画がTSNに載っていますので詳しくはそちらで:

 

 

 

https://www.tsn.ca/figure-skating/video/meagan-and-bruno-looking-forward-to-raising-their-family-in-oakville%7E1811041

 

 

そして実はこのGPスケートカナダの初日に、メーガンが無事、出産したとのニュースが舞い込んできました。

 

 

 

 

 

 

そのため、ブルノーさんもオークビルに留まり、大会には来ていませんでした。何とお目出度いことでしょう!

 

午後の四時過ぎから試合が始まり、8組だけの出場なのでさっさと進みます。伝統的にペアはロシア・中国・カナダが強いという印象がありますが、今大会でもロシアの二組がトップ3に入ってきました。そしてカナダのムーアタワーズ&マリナロ組が二位と健闘。

 

正直、首位に立ったボイコワ&コズロフスキー組についてはほとんど知らなかったのですが、まだ本当に若い(17才と19才)にも関わらず昨シーズンはヨーロッパ選手権で三位、ワールドでも六位に入っていたんですね。失礼いたしました。

 

三位に入ったタラソワ&モロゾフ組、彼らはカナダのGP大会に昔からよく来ています。確か、5年前にもケロウナで、そして4年前にはレスブリッジで会っています。もちろん、去年のバンクバーでのGPFでも。トレイシーさんがこのタラソワたちに関して言っていたのはどのペアよりもスピードがある、ということ。しかも難なく、滑っている様に見えるところがすごい、とも。SBSジャンプがモロゾフ選手のパンクによって無効になったのが痛かったですね。マリナ・ズエワさんがコーチになって、キスクラに座っていたのが新鮮。

 

SPが終わって選手たちは全員、ドローに上がってきますが、会見に備えてメディアセンターに居残っている我々はネームプレートに入れる名札を探して、整えなければなりません。マイクが上手く作動するのか、なども確認して、男子のSPのために私は階下へと急ぎます。

 

男子選手たちはすでにシャトルで到着していて、それぞれの方法でウオーミングアップを行い終えています。第一グループがキスクラ裏に揃い、六分間練習に備えます。観客席でもすでに緊張感が漲り、盛り上がりが伝わってきます。

 

TSNではこの時点でキーガン・メッシング選手に関するフィーチャーを流しました。

 

夏に幸せな結婚式を挙げ、オータムクラシックで表彰台に乗り、羽生選手のために国旗を掲げた場面が映し出されたあと、弟さんを事故によって失ったこと。

 

 

 

 

 

 

スケートアメリカではエキシビションで弟さんに捧げたパフォーマンスを披露して、涙を誘ったこと。そしてその後、親友のナム・ニューエン選手の心からのコメントが流れました。

 

 

 

 

毎日、電話をかけて、話をしている、彼とは頻繁に会うわけではないけれど一番の親友である、とナム選手が語ります。キーガンみたいな良い奴にこんな悲惨な事が起こるなんてあまりにも理不尽だ、フィギュアスケート界の皆が彼のことを想っていて、彼にもその気持ちは届いてると思ってる、と言って応援の言葉を送ります。

 

このナム君のコメントは本当に暖かく、優しくて、涙が出そうになりました。

 

さて、最初のグループの演技が始まります。

 

第一滑走者のマレーシア代表ジュリアン君、素晴らしかったですね。彼は現在、トロントから北に2時間ほど離れたバリー市のリンクで練習していますが、実に爽やかな青年です。いつもニコニコ、礼儀正しく、英語もとっても上手です。以前からクリケット・クラブの面々とシミュレーションに参加していたり、カナダでの生活が長いようです。

 

そして期待していたローマン・サドフスキー選手、フィンランディア杯では調子が良かっただけにここでの絶不調が悲しい。彼のスケーティングの上手さ、そしてスピンの秀逸さはいつも皆の溜息を誘いますが、ジャンプがあまりにも不安定でパンクが多い。クワッド・サルコウが決まった時は(コンビネーションは付けられなかったけど)素晴らしかっただけに何とも残念です。

 

取材エリアにいていつも辛いな、と思うのは今回のローマン選手の様にしんどい演技をしてしまった選手にもテレビのブースやミックスゾーンに来てもらわないといけないことです。気丈にインタビューに応えるものの、その心中はどのようなものなのか、傍の者にはとうてい測り知れません。

 

この次に滑ったのは二コラ・ナドー選手。使用曲はWAKE CHILD の「Don't fall in love」。

 

昨シーズンはカナダ男子がほぼ全員、SPの音楽にアップテンポで陽気なナンバーを持ってきていました。どうやら今年のテーマは「ゆったりネットリ」なのかな?ローマン選手は「Fly me to the Moon」、第二グループで滑ったナム選手は「Blues for Klook」ですしね。

 

ナドー選手はトリプル・アクセルが得意です。長身の彼が跳ぶと、本当に迫力があり、着氷も一部の曇りもない、という感じです。しかしSPの内容としてはクワッドなし、コンビネーションはルッツなし、しかも最後のトリプルループでバランスを崩してもったいなかった、というのがトレイシーさんの解説でした。

 

ロシアのラズキン選手、トレイシーさんは彼の冒頭のクワッド・ルッツが回転不足だと思っていたようですが、判定では認められていたので「あら、アンドレイ、ごめんなさい」と謝っていました。

 

が、その後、興味深いことにまだロッドさんとのやり取りでその話題が続きます:

 

Kind of funny how they didn't spot that.(Very surprising) With the video replay...

あれ(回転不足を)を見逃すだなんて、ちょっと不思議だね。(かなりびっくりよね)ビデオ再生だってあるだろうに。

 

And they have been quite meticulously at going after underrotations. One missed?

回転不足に関してはすごく取り締りが厳しくなって来てるはずなんだけど。。。ここはひとつ見落としたのかしら?

 

A little of bit of a gift, for Andrei.

これはアンドレイにとって、ちょっとオマケだったね。

 

トレイシーさんたちの言ってる「They」というのはもちろんジャッジあるいはテクニカル・パネルのことです。ウーム、なかなか興味深いですね。

 

第五滑走者、ドイツのフェンツ選手、そしてオーストラリアのケリー選手と続きます。ケリー選手って以前、キスクラにアモディオさんが座ってたんじゃなかったですか?なのに今回はリー・バーケルさん、そしてISUのバイオにはメインコーチがニコライ・モロゾフって。。。

 

と、思っているとモロゾフさんが今大会には来れなかったので友情出演でバーケルさんが代わりにサポートしているとのことでした。

 

さてさて第二グループが六分間練習の準備を整え、登場します。

 

 

 

 

裏にいる我々もスターティング・オーダーの印刷された紙を持って緊張します。ここから先は誰がどういう順番に取材を受けるのかをしっかりと把握しておく必要があって、テレビ局によっては順位が確定するまではちょっと待ってほしいとか、羽生選手の演技が終わるまではミックスゾーンに誰も来ないだろうから取材の順番を変えてほしいだの、色々とあるのです。

 

TSNの解説では相変わらずロッドさんが得意のベタコメを連発しています。羽生選手のプーさんに関して

 

This guy has put the "WIN" in WINNIE THE POOH. He has won EVERYTHING.

彼は「WINNIE THE POOH」に「WIN(勝利)」の意味を持たせたよね。タイトルというタイトルは全て勝ち取ったんだから。

 

まあ許しましょう。

 

その横で、さすがはトレイシーさんです。テレビ放送の画面には写りませんでしたが、しっかりと羽生選手の練習をフォローして、「ゴージャスなクワッド・サルコウ」と発します。考えてみれば、このジャンプには特別な意味があるから、ですよね。

 

そしてロッドさんが「彼は前人未到のクワッド・アクセルをやるって言ってるけど、ちょっと前までそんなこと不可能だって我々は思ってた。この若者だったら出来ることなのかも知れないけど」と言うと、「やろうと思ったら彼に不可能なことはない」とトレイシーさん。そしてちょうどトリプル・アクセルを跳んだ羽生選手をカメラが捕らえ、「まだまだ余裕があるでしょ(=もう一回転くらい入れる)」と含みを持たせる。

 

そこから羽生選手の心の成長について語り出していますが、おそらくすでにこの辺りの彼女のコメントは周知されているかと思います。念のため:

 

Remember, as a young teenager he lived through the tsunami, he lived
in Sendai. He had to walk out of the rink in his skates, as the tragedy struck. At that point all of a sudden his skating took on a different purpose, and he realized how his gift of skating touched so many lives and helped lift some people out of a desperate situation. It really grounded him and inspired him, and he is mature beyond his years. 

いい?彼はまだほんのティーンエイジャーだった時に(あの東北大震災の)津波に遭遇しているのよ。仙台に住んでいたからね。悲劇に見舞われ、スケート靴を履いたままリンクから出るほかなかった。その時点で突然、彼にとってスケートをする、ということは全く異なる意義を帯びるようになったの。自分のスケートの才能がどれだけ多くの人々の人生に影響を与え、絶望的な状況から救い上げることが出来るのか、自覚したわけ。そのことが彼の足を地に付けて、インスピレーションにもなった。それで彼は年齢以上の悟りを見せている、のよ。

 

と、一気に熱弁します。

 

あらら、この"mature beyond his years" って以前、私もブログ記事のテーマにしたことがあったわ。まあ皆、思うことは一緒、なのね。

 

さあ、第二グループの演技が始まります。

 

第一滑走は田中刑事選手です。本田選手と同じタクシーで交通事故に遭い、本当に災難でした。が、落ち着いて、かつてアシュリー・ワグナー選手も演じた「Hip Hip, Chin Chin」に乗せて滑ります。

 

クワッド・サルコウが三回転になったり、コンビネーションの二つ目のジャンプが二回転になったり、というミスはありましたが、トレイシーさんが日本人選手の特徴である「大観衆の前で演じる力」を指摘し、ステップ・シークエンスの優秀さを褒めます。音楽を最大限に使い、観ている者を巻き込む、その点が良かった、と言います。

 

続くのはカナダチャンピオンのナム・ニューエン選手。私はこのSPの曲が本当に彼に合っている、と今シーズン最初に見た時から思っていました。何というか、ナム君のあの粘りっ気のある動きとマッチして、すごく滑りやすそうです。

 

クワッドサルコウを降りた時の姿勢が前かがみでちょっとどうなるかと思いましたが、そこに3Tを付けるのはあっぱれです。その後、落ち着いて全てのジャンプを着氷させて、パフォーマンスも丁寧に最後まで滑りました。キーガン選手の分も頑張った!!この時点で暫定1位です。

 

もちろん、キスクラ裏ではTSNのブースに連れて行き、喜びのインタビューがありました。

 

第三滑走はカムデン・プルキネン選手:私、プルキネン君、ジュニアの時からすごく応援してるんです。今年からシニアに上がって来ましたが、まだまだ初々しくて可愛らしい。オータムクラシックにも出ていましたね。

 

今大会ではいきなり冒頭の4Tが美しく決まって、期待が高まりましたが、見事にその後のジャンプも全て加点をもらえるような出来でした。キスクラでの彼の様子はすでに多くの人が話題にしていますが、何とも微笑ましい。ものすごい高得点が出て口が塞がらない、といったカムデン君をコーチのタミーさんが横から手で押さえます。

 

そしていよいよ皆の注目の的、羽生結弦選手の登場です。ここからは主にTSNの解説で振り返りましょう。

 

Here is Yuzu

さあユヅの登場です。

 

演技が始まり、

 

This program choreographed by Jeffrey Buttle.

 

と、トレイシーさんが静かに紹介する。

 

ここからしばらく沈黙。

 
クワッド・サルコウ、そしてトリプル・アクセルが美しく決まって行きます。
 

そしてコンビネーションの4T-3Tでは最初のジャンプで着氷が少し乱れた瞬間、トレイシーさんがかすかに「あ。。。」と声を漏らしますが、そこからぐいっと二つ目のジャンプを付けてイーグルに持って行ったところで感極まったように

 

Hanging on!

よく粘ったわ!

 

He's like a cat

猫みたいだね、彼は。

 

Now watch how he plays with the music; he IS a master

ここから彼が音楽と戯れる(を操る)様を見ていて。「巨匠」の技よ。

 

ステップに入る前のスピンでは

 

Speed of rotation....

回転の速度

 

Look at the line of the spin, the musical highlights, with the arms

このスピンで描いている線を見てちょうだい、音楽のハイライトを腕の動きで、表して

 

 

最後のスピンが終わり、大歓声の中、演技が終わります。

 

There is no one like him, no one like Yuzuru Hanyu.

彼のような、ユヅル・ハニュウのような者は誰もいない。

 

ロッドさんは必ず、演技が終わるのに合わせてこういったワン・センテンスを言うんですが、ベタ過ぎて困る。

 

プーさんの雨が降り注ぎ、大騒ぎ。

 

Just another day at the office, but what an office.

 

。。。

 

このジョークも訳を考えたんですけど、あんまり面白くないのでパス。

 

コマーシャルを挟んでまた会場が映し出されます。ここからちょこっとロッドさんがゴチャゴチャ喋りますが、もう省く。

 

 

スロー再生を見ながらトレイシーさんが解説:

 

Fluid body, incredible speed, a natural sense of line and then, this.

流れるようなボディ、あり得ないほどのスピード、体で美しい線を描き出すセンスは彼にとって自然なもの。その上、これ(=素晴らしいジャンプ)だからね。

 

と、冒頭の4サルコウが写る。

 

次のトリプルアクセルでは:

 

It's the entrance, the trajectory, the height, and the flow of the landing. Look at the line of his back, right into a twizzle, and so beautifully done to the music.

ジャンプの入り、軌道、高さ、着氷からのフロー。(着氷する時の)彼の背中の線を見て頂戴。ここからすぐさまツイズルに続けて、これらすべてが音楽に見事に乗せられているでしょ。

 

Here's a look at his quad toe, just pulls a little up in the shoulders, but the presence of mind, and "Hey! I got it, I GOT THIS"

さあ、これがクワッド・トウのところね。肩にちょっと力が入って上がってしまっているけど、落ち着いて。。。で、「Hey! 大丈夫だから、俺に任せとけって」っていう感じ。

 

 

ステップシークエンスの再生が始まります。

 

 

Here's my concern in terms of perfection, I have seen him do the step sequence better, this was emotional more than it was technical.

パーフェクトかどうかについて、懸念があるとしたら、ステップシークエンスね、彼がここをもっと上手に滑るのを見たことがあるから。でもここは技術というよりも感情の問題。

 

You can hear him talking, right there, no, he blew a cluster, and he's laughing about it. But we'll have words after the performance.

(キスクラで)彼が喋ってるのが聞こえるでしょ。ここね、そう、クラスターを失敗してる。で、彼も笑ってるわけね。まあ、演技の後でちょっとお小言を言っておこうかしらね。

 

ここ、面白いですね。解説者のトレイシーからコーチのトレイシーに一瞬、戻って「今はあなた、笑ってるけれども、後でしっかりとこのミスについてはお灸をすえてあげますからね」と、考えているのが分かります。

 

最後のスピンの映像が出て:

 

Brilliant musical highlight. Again, Jeffrey Buttle choreographed this program,

音楽を素晴らしく際立たせている部分ね。繰り返すようだけれど、ジェフリー・バトルが振り付けた(素晴らしい)プログラムです。

 

スピンで腕の形を次々と変えていく様を見ながらロッドさんが感心する。

 

Look at that, so flexible, so talented. You get to see him a lot, lives and trains in Canada. Could you imagine, if he did this in Japan and how ridiculous it must be when he GOES home, because they absolutely LOVE him.

見てよこれ、この柔軟性、この才能。トレイシー、君は彼をいっつも観てるんだよね。カナダが生活と練習の拠点となっているから。でも彼がこの演技を日本でやったら、どうなるんだろう?日本に帰ったらとんでもないことになるんだろうね、彼の凄まじい人気を考えたら。

 

 

He is the MICHAEL JORDAN of skating in Japan.

 

ロッドさん、もーやめて。なんでここでマイケル・ジョーダンが出て来る?

 

You mentioned that he lost his title to Nathan Chen, at the recent World Championships. Nathan, 102 at Skate America.

 

とスコアが出る直前にトレイシーさんがネイサン・チェン選手のGPスケート・アメリカでの得点を引き合いに出す。

 

そこでロッドさんからネイサン・チェン選手も大した選手だよね、というコメントが出て。トレイシーさんも称える。

 

Oh he's brillilant, and he's pushing Yuzu to be better.

ええ、彼は素晴らしいわ。ユヅもそのおかげでもっと上手くなろうという気になれる。

 

そしてものすごい高得点がスクリーンに映し出され、大歓声が上がります。

 

 

というわけで羽生選手の演技終了。プーさんの回収についてはすでに記事にしているので触れませんが、この後、キスクラから裏に戻って来て、まずはTSNの取材を受けます。

 

 

 

 

 

何だかこの光景を見るのって感動的。サラ・オルレスキーのインタビューを受ける羽生選手、新鮮です。

 

汗が滝のように出ていて、TSNのディレクターのおっちゃんが「誰かティッシュ持ってこい、ティッシュ」って言ってたのが面白かったわ。

 

そしてTSNのブースの出入り口のど真ん中にカメラの三脚が据えてあって、危ないなあ、と思っていたら案の定、羽生選手が出がけにそれに足を取られそうになって心臓が飛び出そうになりました。

 

や、やめて、ここで怪我をするのだけは。

 

そして次にテレビ朝日のブースで取材、終わったらミックスゾーンへ、とどんどん進みます。

 

 

 

 

TSNでは中継の締めくくり部分でロッドさんがトレイシーさんに羽生選手のコーチとして、毎日彼をリンクで見ている立場からの感想を求めます。

 

あまりの素晴らしさに。。。

 

Does he make you shake your head?

どうなってるんだ、って頭をかしげたくなることある?

 

Always, always, he's remarkable. He has such a mind for where he is going. pure focus on that. He comes into the rink, and the minute he walks through the door to the ice, it's game on. And it's just constantly pushing himself. Tearing down any limits. We talk about fatigue, we talk about technically what's the next barrier.

いつもよ、いっつも。なかなか彼みたいな人はいないわ。自分がどこに向かっているのか、ということに関して一心不乱で、集中が逸れることが一切ない。リンクにやって来て、ドアから入って氷に乗った途端、さあもう本気モード、という感じね。常に自分を鼓舞して、どんな限界をも打ち破って行こうとする。疲労だとか、技術的に次にはどんな壁があるか、とかいう話にもなるけど。

 

And it’s really such an honor to have somebody like that skate in Canada, and a lot of Canadian skaters benefit from his presence, but
generally the sport benefits.
彼みたいな人がカナダで滑っていてくれることが光栄だし、彼がいてくれることで恩恵を被っているカナダのスケーターも多い。でも(フィギュアスケートという)競技全体が恩恵を被っているわね。

 

普段、ナイーブで子供のような素振りを見せる反面、一気にゾーンに入ることもできる。どうやったらそんなことが出来るんだろう?といったことをロッドさんが聞くと:

 

I just think he puts himself in another place and really he gets an idea in his head of where he is going. And you talk about belief; this is a guy that believes. He believes in himself and it’s about where he is going with the sport, and he takes it so seriously. And you think he has got two Olympic titles and you would start seeing the signs of fatigue. Well, we saw a little bit of fatigue from Yuzu last year, after second Olympic title. This year it's full force, he is as inspired and dedicated as I have ever seen him.
完全に切り替えている、という感じだと思う。頭の中でこれ、という目的をしっかりと定めてそこに向かう。さっきも「信念」という話が出たけれど、彼はそれを持っている人なのよ。自分で自分のことを信じている、この競技をどこに導いていきたいかということに対しても、彼はものすごく真摯に取り組んでいる。オリンピックタイトルを二度も獲って、そろそろ疲れの色が見えて来るのじゃないかと思うでしょ?まあ、昨年は確かに二度目のタイトルを獲った後、ユヅにはちょっとそんなところも見えたのだけれど、今年はまた全力投球。これまでと全く変わらず、モチベーションも高くて、打ち込んでいるように見えるわ。

 

 

と、トレイシーさんたちが語っている裏で、我々は大急ぎで選手たちを集めて会見場へと連れて行きます。導線的に一部、客席の後ろを通らなければならなかったので、ミックスゾーン近辺に配置されていたセキュリティのお兄さんを動員してエスコートしてもらいました。

 

こういう場合、お兄さんたちは使命感に燃えて、喜んで役割を果たしてくれます。

 

会見場ではまたまた大勢のカメラマンが待ち受けています。首位の羽生選手、二位に入ったプルキネン選手、そして三位のナム選手が翌日のフリー滑走順のドローの後に残り、記者会見が始まります。

 

いつも通り、最初は三人が感想を述べるところから始まります。そして記者からの質問へと移るのですが、その辺りのことはすでに詳しく報道されていると思いますので割愛しますね。

 

(ここで補足があります。オリンピック・チャンネルからの質問は大元に「三選手にとってのアイドルとして来たスケーターは?」というものがあり、その流れでの以下のやり取りとなったのでした。次の記事でもう少し詳しく補足していますのでよろしければ併せてごらんください。)

 

プルキネン選手への質問はオリンピック・チャンネルから出ました。羽生選手がアイドルである、と言っていたがその憧れの彼と一緒に会見の場にいるこの状況をどう思うのか、と聞き、また羽生選手にもプルキネン選手に対するコメントが求められました。

 

 

この時のプルキネン選手、もう目にお星さまがキラキラ入ったような様子でしたね。終始、スマイルが顔から離れないような感じで、本当に嬉しそうでした。羽生選手からオータム以来、見ていたよ、とのコメントをもらってまたまた感動。

 

ダイナミックなトリプルアクセルとパワフルな滑りが印象的だ、と言われて「え、本当にユヅはそんなこと言ってるの?」とあまりのことに通訳に対しても疑問を持つ始末。(ちなみに通訳はちゃんと正しくなされていました)

 

実に微笑ましいひとコマでした。

 

この他にもナム選手はフリーで羽生選手の次に滑るということに触れ、

 

「It's going to be interesting(どうなるか興味津々)」と言い、

それに対して羽生選手が「Sorry, sorry, sorry!(ごめーん、ごめーん、ごめーん)」とナム君の方に向いて謝ると、

ナム君はまた 「No worries, no worries(全然、全然オッケーだから)」

と笑いながら返す。

 

これも素敵なやり取りでした。

 

あと、おそらく多くのファンが聞きたかったであろう、演技終了後の衣装を気にする場面に関して、すかさず質問した記者さんの正体は

 

フィギュアスケート・マガジンの山口さんでした。

 

 

そしてこの日は会見後、しばらく記者さんたちお付き合いして、9時半までメディアセンターに残ってからシャトルでホテルに戻りました。

 

 

やっと半分終了。息切れして来たわ。もうすぐフランス杯、始まりますが、しつこく続けます。