ようやくカナダに戻ってきました。
久しぶりのヨーロッパ旅行では発見も多く、それらの気付きを忘れない間に綴っておきたいのですが、とりあえず今日はここ一週間ほどのスケート界のニュースについて思い浮かんだことを本当に脈略なく、記事にしてしまおうと思いました。(この後、もう一つだけ、オータムクラシックについて書いて、2019年ACIシリーズは終える予定)
まずは日本のアイスダンス界に新しいチーム誕生!高橋大輔選手が村元哉中選手と組んで北京五輪を目指す、というニュースがありましたが、これには正直、腰を抜かしました。
茶化すつもりはありませんが、これってカナダに置き換えれば、かつて男子シングルでトップを極めたパトリック・チャンが、最近アンドルー・ポジェとパートナシップを解消したの活動を停止すると言ったケイトリン・ウィーバーと組んでチームを結成する、というのに匹敵しますよね?でもカナダではとてもじゃないけどそういうことが起こりえないところに、日本とのアイスダンスの層の厚さの違いが表れているのだと思います。
(注:すみません、読者の方からご指摘いただきましたが、正式にウィーヴァー&ポジェはパートナシップを解消したんじゃなかったですね。単に「活動を停止する」と言ってたんでした。)
現在、アイスダンスにおける世界ランキングの上位をほぼ独占しているのは、言わずと知れたモントリオールGADBOISクラブのチームです。そこでヘッド・コーチを務めているパトリス・ローゾンさんに、昨年のカナダ代表強化合宿で話を聞く機会がありました。彼曰く、カナダでも「シングルで芽が出なかったからアイスダンスに転向しようかな」と思う選手は少なくないそうです。でも15才とか16才で転向しようと思っても遅すぎる、アイスダンス競技は年々、レベルも上がっているしルールが複雑化して行ってるので、そんな年齢から世界のトップを目指すのはすごく困難だ、と言ってました。
(ちなみについ先日、22年間のパートナーシップに終止符を打つと表明したテッサ・ヴァーテューとスコット・モイヤーは、1989年生まれの30歳と1987年生まれの32才。初めて組んだのが1997年、それぞれ7歳と9歳の時だったと言われています。2010年の五輪初優勝の時にはすでに13年もの月日が経っていた、ということになりますね。現在、向かうところ敵なしとされるフランスのガブリエラ・パパダキスとギヨーム・シズロンたちも9才と10歳の時にチームを結成しています。ロシアなどの代表選手も、アイスダンスを始めた年齢にはそう違いがないと思われます。)
本来、アイスダンス(ペアもそうですが)は同じフィギュアスケートという括りにありながらも、当然のことながら一人で滑るのと二人で滑るのでは全く勝手が違うのですから、男女シングル競技とは異なるスポーツなのだ、と理解した方が良いでしょう。ところが常々このブログでも言っている様に、日本では(少なくともテレビやスポーツメディアにおいては)フィギュアスケートと言うと男女シングルしか存在しないような扱いですから、「高橋選手はステップに定評があってダンスも達者=アイスダンスへの転向はごく自然に出来るはず」と思われている節があります。アイスダンスには非常に複雑なリフトが求められるし、ステップの規定もシングルとは異なるのだ、などと言ったことに関しては、チーム結成の記者会見での質問を見る限り、誰もあまり問題にしていないように感じられました。
さて、昨日の晩、皆様お馴染みのデイビッド・カーマイケルさんから「オータムクラシックの写真だよー」とたくさん、画像が届きました。いつも思うのは、例えば小海途さんや田中さん、能登さんたちに代表される日本のスケート・フォトグラファーさんたちの撮るものと違って、カーマイケルさんの場合は本当に「素のまま」のスケーター達の姿が記録されているな、ということです。別にそれは良いことでも悪いことでもなく、違うポリシーを持って撮られている、というだけのこと。
以下、カーマイケルさんから提供されたお写真をシェアしますので、掲載される場合は必ず、(例えば "Photo by David Carmichael, 2019 Autumn Classic International" といった風に)クレジットを入れてあげてください。
All photos from 2019 Autumn Classic International are used with permission from David Carmichael.
カーマイケルさんの写真からは、羽生選手のSPでの優し気で華麗な様子
そして鬼気迫るフリーの表情もそのまま伝わってきます。
しかし、やはり表彰式の時のショットに味があります。カーマイケルさん、本当に試合終了後に本領発揮、というところがありものね。メダリストたちは実に晴れ晴れとした顔でスリーショット撮影に応じています。
表彰台から降りて、周回してフォトグラファーの前に来た時も
とーっても良い顔してますね、三人とも。
ようやく緊張が解けて、表情がなんとも和やかです。
ところで皆様もご存知の通り、キーガン・メッシング選手はつい最近、悲劇的な事故により愛する弟さんを亡くしたばかりです。このニュースを聞いた者は誰しもが悲しみ、メッシング家の方々に心からのお祈りを捧げたことでしょう。
スケート界でも「スポーツマンシップを尊ぶナイスガイ・ランキング」というものがあったなら、きっとものすごい上位に入るであろうキーガン君。いつも我がことのように他選手の健闘を喜び称え、どんな試合結果であっても笑顔で爽やかにメディア取材にも応じる彼は、あまりにもナイスガイ過ぎて「ええ人のフリしてるだけちゃうか」と思われることもあるそうですが、本当に何度会っても変わらないので、正真正銘の良い人なんだと私は信じています。
キーガンの心の美しさは、周りの人たちもポジティブな空気に招きこんでくれます。
オータムの表彰式で話題となった国旗掲揚のエピソードも、本当に彼らしいものでした。
日本の旗を広げられ、とっさに表彰台から降りて首を垂れた羽生選手の反応も実に見事でしたが、そんな羽生選手の素晴らしさを引き出して、目の当たりにする機会を我々に与えてくれたのもキーガン選手の純粋な心遣いがきっかけでした。
こんな微笑ましいシーンからほんの一週間後に、キーガン選手とその家族が胸を引き裂かれるほど悲しい目に遭うとは誰が予測できたでしょうか。なんとも残酷な出来事でした。
日本語には因果応報という言葉がありますが、現実世界では必ずしもその通りには行かない。悪いことをする人には悪いことが起こる、良いことをする人は必ず救われる、そんな単純なものじゃない。良い人でも天災に見舞われるし、悪い人が罰されないで済んでしまうことだってあるのです。
といったニュアンスのことを上映会のたびに強調されていましたが、私にはとっても印象的でした。本当にそうですよね。世の中には不条理なことはいくらでも起こっています。
でもだからと言ってそれで諦めて、終わらせてはいけない時もある。
その流れで言うと、織田信成さんのブログ。日・英で書かれた記事は多くの人々に衝撃を与えました。私もショックを受けた一人です。
内容もさることながら、織田さんがあの記事をアップするまでどれだけ悩み、どれだけ苦しんだろうかと思うと本当に胸が詰まりました。しょーもない素人ブログを書いている私ですら「あ、こんなん言ったらアカンかな、理解してもらえなかったら辛いな」と思いながら記事を何度も読み返し、最後に「全員に公開」のボタンを押すまでに時間がかかります。織田さんの様な公的な立場にあり、失うものが多い人であれば、その躊躇とストレスはいかほどであったろうかと推察されます。
でも彼は勇気を出し、公開することを選んだ。日本語だけではなく、世界中に伝わるように英語でもちゃんと自分で言葉を綴って。その覚悟に拍手を送ります。織田さんがこれまで何とどう戦い、これからどうなって行くのかは私ごときに測り知れませんが、せめて彼の決意が報われるような展開になるよう、願っています。そして彼が「やっぱりあの記事を書いて良かった」と思えるよう、多くのファンと一緒にサポートの声を届けることが出来れば、と思います。
ちなみに出来ることとしてまず、私の周りのスケート関係の知り合いに彼がせっかく英語で書いた記事を読んでもらったのですが、「moral harassment」という言葉がちょっと解りづらかったようです。こちらではたぶん、psychological abuse とか、職場でのことであれば workplace harassment、あるいは bullying などが使われるので、そう説明しています。
















