2018年GPスケートカナダ(ラヴァル大会):帰宅してからレポートしてます | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

皆様

 

大会が終わり、帰宅してからレポートを書いているという体たらく(今、調べたら「為体」とも表記できるそうですね) 。かつては毎日、大会会場からホテルに戻って何がしかの記事をアップしていたというのに、これも加齢のせいでしょうか。年々、怠惰になって来ています。

 

GPS大会は開催国によって少しずつ競技スケジュールが異なりますが、スケートカナダでは一貫して木曜日は公式練習、金・土はペア、男子、アイスダンス・女子の順で全四競技が行われます。そのため、競技中のリンク裏は正午から零時までずーっとテンパってる状態で、メディアセンターからキスクラ裏、テレビ取材ブース、ミックスゾーンを何往復もすることになります。

 

何度もこのブログで自慢してきましたが、ほんと、日頃のレニーのお散歩で足腰を鍛えて良かったわ、と思っています。おかげさまでもっと若いボランティアさんが「足痛い」とか「腰もうダメ」と言ってるのを尻目に初老のオバチャンはセカセカと動けているのです。

 

もっとも、ここ数年は親友のNちゃんからの教えを守って滋養強壮の粉末を愛用しているアタクシ。競技が始まる辺りで仕切り直しのためにしっかりとエネルギーを補給します。

 

ところが二つ、失敗がありました。

 

一つは今回のボランティアのために新しく購入した歩きやすい(と思った)編み上げの靴で、初っ端から靴擦れを作ってしまったこと。常識で考えれば、履いたことのない靴で最初から重労働に挑むことが無謀であることくらい分かりそうなのですが、やってしまいました。慌てて二日目から履きなれたフラットシューズに代え、医務室でバンドエイドを頂いて、何とか持ち直しました。

 

(ところで足首の上まである靴って、しっかりと支えられて良い面もあるけど、脛の筋肉への負担がすごくあるように思えます。靴擦れになったばかりではなく、夜になって何度か脚が攣ってびっくりしました。スケート選手さんが体の色んな部分に故障が出るのも無理はないな、と思ったのでした。)

 

二つ目は、土曜日の女子の記者会見が始まったのが23時過ぎで、その頃には頭の回転がゼロになっていたこと。この日はもう一度、エネルギーの注入をしておくべきでした。そのせいで二位の山下選手のコメントを訳す時、一瞬、言い淀んでしまいました。これまた何とか難を逃れましたが、焦りました。今後の教訓として憶えておきます。

 

なお、金曜の夕方からメディアセンターには強力な助っ人が二人、加わってくれて一気に効率が上がりました。過去にも何度か一緒にボランティアをしたJちゃんとSさん。Jちゃんは韓国出身で、韓国のスケート連盟とも懇意にしています。四大陸や平昌五輪など、韓国で開催された大会に手伝いに行っていて、今回、たっくさんの超・興味深いオリンピックの舞台裏の話をしてくれました。これに関してはまた改めて記事にしたいと思います。Sさんは普段、銀行に勤めているキャリアウーマンで、ソーシャルメディアの達人でもあります。彼女も平昌五輪ではCBCのスタジオで手伝ったりして、大のベテラン・ボランティア。

 

というわけで競技中のミックスゾーンは我々三人が取り仕切り、非常に上手く行きました。グランプリファイナルも絶対にこの調子で頑張ろうね、と言い合って別れたことでした。

 

土曜日のフリーの競技で印象に残ったことを幾つかざっと挙げて行きます。

 

ペア:

 

優勝したジェームス&シプレ組。彼らは昨シーズンと今シーズン、オータムクラシックとスケートカナダの二大会に出ているので、何となく個人的に親近感を持っています。今まであまり経歴を調べてみたことがなかったのですが、今年でペア結成8年目だそうで、いわばベテランの部に入るのでしょう。しかしここ数年で一気に成績を伸ばしてきているのでまだまだ楽しみなペアです。ところで、ヴァネッサ・ジェームスはカナダ(トロント近辺)で生まれているんですよね。なので今大会にはたくさんの親せきや友人たちが応援に来ていました。お母さんがテレビに写っていましたが、ヴァネッサに良く似た、とてもきれいな方でした。(ちなみにヴァネッサのスタイルの良さは驚異的!あのワンピースの衣装を着こなせる人はなかなかいないと思います。)

 

男子:

 

SPでは思いがけない転倒のあった宇野選手が見事に逆転優勝を収めました。演技が始まる前からすごく鋭い目つきをしていたので、何かやってくれると思っていましたが、冒頭から四回転を次々と決めていく様は頼もしかったです。やはりオリンピック銀メダリストの貫禄があります。キスクラ裏のモニターで一緒に演技を追っていた人たちも皆、「おおー」と言いながら見守っていました。最後、ちょっと疲れが出たのかコンビネーションでミスがありましたが、堂々とした演技でした。衣装に関して言えば、SP・FSとも前大会よりもエレガントになってこっちの方が良いな、と思いました。

 

宇野選手の後に滑ったキーガン・メッシング選手、プレッシャーに負けずに滑り切りました!しかし彼なりに緊張していたんでしょう、いざリンクに出て行こうと上着を脱いだ瞬間、衣装の上半身部分を着ていないことが判明して(アンダーシャツは着てたけど)大慌てで控室に戻り、着込んでいましたね。傑作。本人も大笑いしていました。初GPSメダルは銀色、とても満足していました。

 

三位に入ったジュンファン・チャ選手、まだ若いながらも演技がどんどん、洗練されていく様子がとても楽しみです。ブライアン・オーサーさんとちょっとお話ししたのですが、色んな意味で(身長も、滑りも)急速に伸びているので今シーズンは期待が持てる、と言ってました。とにかく怪我がないのが好調の大きな要因だ、と本人も囲み取材で語っていたので、このまま次のヘルシンキ大会でも良い勢いを保ってほしいです。

 

あ、でも一つだけチャ選手に関する表彰式前のネタ:競技が終わってから控室で靴を脱いでリラックスしていた彼は、表彰式の準備があまりにも早く整って危うく出番をミスるところでした。「え、ジュンファンどこ?名前呼ばれるよ?」と大騒ぎになり、慌てて彼が出て来た時にはすでに場内アナウンスで「Winner of the bronze medal, Junhwan CHAAAAAA」と呼ばれているタイミングでした。なのでリンク上に登場したのは控えエリアからダダ―ッと一直線に走って行っていたことになります。間に合って良かった。

 

なお、カナダ男子に関して言えば、「面白いものよね」とベテラン記者の方がおっしゃっていたように、パトリック・チャンの引退によって大きな穴が空いてしまったように思えたのも束の間、今大会に出場したキーガン、ナム、そしてローマンの三選手たちが立派にその後を継いだような形となりました。メダルを獲得したキーガンはもちろん、ナム選手もSP・FS両方で会心の演技を見せ、往年(と言うほどの年齢じゃないけど)の自信たっぷりのパフォーマーぶりを発揮していたのが嬉しい。カナダ人の関係者たちも本当にホッとしたように「ナムが帰って来たね!」と笑顔になっていました。
 
アイスダンス:
 
今年のリズム・ダンスは「タンゴ」が課題として出されていますが、専門家に言わせると「フラメンコ」と取り違えているケースが多いとのこと。タンゴは男女がお互いしか見つめない、いわば「内側に籠った」ダンスなのだそうです。ところが多くのカップルが外に向けて力を発している。確かにそう言われてみればやたら派手に腕を振りかざしたり、背中を反らして踊る選手がいました。教えてもらわないと分からんもんです。勉強になりました。
 
そこへ行くと、私の大好きなパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組は2シーズン前のフリーダンスでタンゴを取り上げて素晴らしい演技を見せているだけに、とことん、研究して本格的な踊りを目指しています。残念ながら今大会ではパイパーが躓いて大きな失点となりましたが、次のフランス大会ではきっと、良いスコアを獲得するでしょう。
 
また、彼らのフリーダンスは「ヴィセント」と題されているように、画家のヴァン・ゴッホをテーマとしています。
 
 
 
 
有名な作品「星月夜」にちなんで、使用曲は「STARRY STARRY NIGHT」、パイパーの衣装も目の覚めるような鮮やかなブルーに黄色の星などの模様がついています。リズムダンスでの失点から巻き返すように、素晴らしいフリーダンスを披露してシーズンベストを出し(FDのテクニカルスコアでは優勝したハベル&ドナヒューを抑えて首位)、しっかりと表彰台に上ったパイパーとポールでした。
 
今年の五月にお母さんが亡くなり、彼女の思い出を胸に滑っていると言うパイパーですが、きっとスケートカナダでのフリーダンスは天に届いたことでしょう。
 
女子:
 
最後の競技となった女子フリーは、元世界チャンピオン二人に混じって15歳の新星がメダルを争う形となりました。シニアに上がって初めてのシーズンにいきなりGP大会でメダル(それも銀)を獲るとは山下選手、快挙です。まだ若くて怖いもの知らず、とは樋口コーチも仰っていたことですが、それにしても素晴らしいSP・FSの演技でした。記者会見や囲み取材でも全く物怖じせず、堂々と対応していたのも見事。あの小さな体のどこからあれだけのバネのあるジャンプが飛び出すのか、これまたモニターでしか追えませんでしたが、なんだか手品を見せられているようでした。
 
そしてトゥクタミシェワ選手、ショートよりはミスが出ましたが、フリーでなんとか踏みとどまって金メダルを掴みました。ミーシンコーチと並ぶと「不思議な、だけど何故かしっくり来る組み合わせ」という感じのキスクラでした。
 
SP後に最終グループに残れなかったのは初めて、と失意のどん底に落ちたメドヴェデワ選手でしたが、フリーの日は「内なる狩人を呼び覚ました」という言葉通り、最初から射るような眼差しで演技に挑みました。とにかくしっかりと滑り切る、という気迫が感じられ、最終的には7位から3位に順位を上げてメダルをものにしました。囲み取材では会場の応援は感じられたか、との質問に、ゆっくりと、英語の言葉を一生懸命考えて「今日は観客席が全て、鏡のように思えました。そこには自分しか映っていない、四方上から下まで全面が鏡。自分以外にただ二人、見えたのはボード際のブライアン、そして(テレビ局の)解説席の高い所にいたトレイシー」という、とても印象的な答えをしていました。(これってどこかで記事になっていますか?じゃなかったらもったいないけど)
 
オータムクラシックでも思った事ですが、メドヴェデワ選手ほど一時は栄華を極めたアスリートが、全てを捨てて、全てを懸けて、自分を再生させようとするのはどれだけの覚悟が必要でしょうか。これまでシニアになってから出場したグランプリ大会で優勝しなかったのたったの一度、2015年のロステレコム杯だけ(優勝はラジオノワ選手)。それが最終グループにさえ残れないほどのSP演技をしてしまったのですから、立て直すのは大変だったでしょう。フリーの前夜、ブライアンに午前1時まで話し相手になってもらった、と言っていました。
 
記者会見で大会の感想を求められ、真っ先にメドヴェデワ選手の口から出たのはトゥクトミシェワ選手への賞賛の言葉でした。山あり谷ありのキャリアを経て、見事に今シーズンは四年ぶりに調子を取り戻して来たリーザが、もしかすると彼女のロール・モデルになっているのかも知れません。
 
 
最後にもうちょっとだけ、大会全体についての感想を書きたいのですが、とりあえずここで記事をアップします。