2018年カナダ選手権二日目:笑顔と涙とカナダのオリンピック代表アナウンス | 覚え書きあれこれ

覚え書きあれこれ

記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

 

初日に引き続き、色々なドラマのあったカナダ選手権二日目でした。

 

あと、20分ほどで正式なカナダのオリンピック代表チームがCBCオンラインでアナウンスされるのを待ちながら、感想を書いています。

 

1月13日(土曜日)の午後は女子のフリー(第一・第二グループ)、アイスダンスの第一グループをライストで観たあと、テレビで両競技の最終グループの中継がありました。

 

アイスダンスに関してはよっぽどのことがない限り、と言うかよっぽどのことがあっても、カナダの代表3組は大会前から決まっていたようなものです。テサモエを筆頭に、ウィーヴァー&ポジェ組、そしてギレス&ポワリエ組が過去の実績からすれば代表から外れることは考えられず、そういった意味では安心して見ていられました。

 

その上で以下の三つのポイントを挙げておきます:

 

1)SDのミスのせいでウィーヴァー&ポジェたちは今大会、予想された2位の座をギレス&ポワリエたちに譲ったけれど、FDでは二位だったので五輪では健闘が期待される。

 

2)4位に入ったスーシース&フィルス組がこれから楽しみな若手として台頭したことが嬉しい。

 

そして

 

3)テサモエたちはGPFでパパシズ組に負けたことによってFDの編曲や振り付けを大幅に変えてきた。

 

これは大会前にすでに周知されていたことですが、ソチのシーズンはまだそういった大胆な変更をするほど肝が据わっていなかったけれど、今は違う、悔いが残らないようにやれるだけのことやるべきだと思った、と本人たちが語っていました。その言葉通り、以前は「てんこ盛り過ぎ」と感じられたテサモエたちのFDは一気に「五輪優勝にふさわしいプログラム」に変わった、と私は個人的に確信しました。GPFと今大会の動画で見比べることができればどうかご覧ください。すごいです。本当に、すごい。

 

 

女子に関しては初日のSPでデールマン選手がオズモンド選手に6点以上の差をつけて首位に立っていました。ケイトリン選手は十八番のピアフ・プログラムで冒頭のジャンプで珍しいミスをしてしまい、ちょっと緊張しているようでした。一方、ギャビー選手は非常に落ち着いて、闘志を漲らせているのが伝わって来る。報道によると彼女は昨年の春以降、さんざん色々な病気に悩まされ、二度もの外科手術を受け、三カ月ほど安静を余儀なくされたということですが、追い打ちをかけるように年末から喉の感染症を患い、大会にインしてからさらに肺炎であることが発覚。しかしそんなことはみじんも感じさせない気迫のこもった演技でした。

 

女子のフリー最終グループの演技が始まり、オズモンド選手の方が先に滑りました。ブラック・スワンのプログラム、前半は完璧な出来でこれは逆転なるか?と一瞬思われましたが、彼女の鬼門であるループでミスが出て、そこから勢いが途切れました。最終的にはミスが二つ、それでも高得点が出てデールマン選手にプレッシャーがかかります。

 

しかしそんなことはものともせず、昨年の「ラプソディー・イン・ブルー」に戻したデールマン選手が次々とジャンプを決めていく。彼女もループがそう得意ではない、と言う解説のトレイシーさん。クリケットで毎日、観ている選手の解説をなかなか難しいでしょう。しかしそのループも見事に突破してあとは最後のステップを、観衆の手拍子と共に最高に楽しそうに踏んでいくデールマン選手。どんなに心躍る瞬間だったことでしょうか。そしてキスクラでは歓喜のチャンピオン・タイトル獲得にバーケルさんもオーサーさんも満面の笑顔!

 

 

 

 

 

と、ここまで書いてて代表チームの発表中継が入りました。が、このまま競技の感想を書き終えてしまいますね。

 

 

 

 

夕方からまたマックスママをゲストにお迎えして男子の第二グループをライストで、そこからテレビに切り替えてペアと男子最終グループの演技をフォローしました。

 

男子は初日にも注目したコンラッド・オーゼル選手、ローマン・サドフスキー選手、そしてスティーブン・ゴゴレフ選手、そこに加えてジョセフ・ファン選手がどのような構成で攻めて来るのか、が楽しみでした。

 

この中でローマン君はこれまでのジャンプの不調が嘘のように、クワッドを二つ組み込んできて(場合によっては三つ目も入れるつもりだったそうですが)トリプル・アクセルも綺麗に決めていました。総合で7位と健闘しました!

 

ジョゼフ君、この選手はまだ16才ですが、色んな要素が揃っていてこれからが楽しみです。SPは8位、フリーではクワッド二本と、トリプル・アクセルを決めて5位、そのおかげで総合で6位に浮上!今シーズンはJGPシリーズでも良い成績を収めていましたので、ジュニア・ワールドでどこまで健闘するか?総合で11位に入ったオーゼル君と二人でカナダを代表して頑張って来てほしいです。

 

で、ゴゴレフ君。初めてのシニア参戦で見事に10位入賞。この選手は末恐ろしいです。フリー冒頭のジャンプはクワッド・ルッツを入れようとしていたと言われていますが、ダブルになりました。しかしその後はクワッド・トウ、トリプル・アクセル二本、などと攻めまくり、フリーは9位。キスクラではコーチたちと冷静に演技の分析をして、すでに反省会を展開していました。。。何なんだ、13歳でこの成熟ごて。来シーズンではいよいよJGPシリーズに出場できるので、今からワクワクします。

 

この後、ペア競技を観ることになるのですが、メーガン&エリックのベテラン組は期待を裏切らず、世界でも彼らにしか出来ないサイド・バイ・サイドのトリプル・ルッツを決めて波に乗り、余裕で優勝。となると五輪代表に入るのはその他のどの2組か、に関心が集まります。SPを終えて二位に食い込んでいたセガン&ビロドー組がいかにプレッシャーをはねのけるか、にかかって来ていたわけですが、若い二人が堂々とフリーも二位に入って銀メダルを獲得。2シーズン前までは安定感が持ち味だったこのペア、ようやく調子が戻って来て最高のタイミングでピークを迎えてくれる気がします。

 

さて、3位と4位では大違い、ムーア・タワーズ&マリナロ組とイリユシェシキナ&モスコヴィッチ組との対決は前者が制しました。いやー、これは切ない。私はモスコヴィッチさんたちをずっと応援してきていたので辛いですが、今シーズン、どうも彼らは調子が上がらなかった。サイド・バイ・サイドのジャンプがなかなか決まらず、得意のリフトでもポイントの取りこぼしがあって本当に残念でした。

 

 

そうこうしている内に男子フリーの最終組の中継が始まりました。マックスママとお菓子を食べている場合じゃありません。二人とも姿勢を正して、6人の演技を追いました。

 

最初の滑走者はSP6位の二コラ・ナドー選手。彼のフリーはエルビス・メドレー。調子が良い時は最高に盛り上がるプログラムですが、逆にジャンプが決まらなかったりすると非常にしんどそうな気がします。不調な時、「明るい曲で笑顔を作らないといけないのはすごく辛い」と、選手目線でのコメントを教えてくれたマックスママ。本当にその通りだろうと想像できます。などー選手のフリーは10位、総合では9位に順位が落ちてしまいました。

 

SP5位だったナム・ニューエン選手。6分間練習の時に衣装を見て、「あれ、『ラ・ストラダ』に変えてきた?」とまたまた驚き。このプログラムで彼は3年前にカナダ・チャンピオンになったんだっけ。フリーは2本のクワッドに2本のトリプル・アクセルを入れて、ジャンプの調子が戻って来たことを証明してくれました。ミスは最小限に抑え、高得点が期待されました。ナム君の復活を期待していた会場は大興奮、彼も感極まった様子で、これは嬉しい光景でした。しかし最終的にはフリーで2位になったもののわずかに届かず、総合は3位。。。

 

SP4位のバルデ選手はジャンプの難度が低かったものの、すっかりアイスショーのような盛り上げ方で観衆を巻き込みます。本当に楽しそうに滑り、会場の雰囲気を一気に明るくしました。キスクラに下がる際にバックフリップまで披露して、次に滑るキーガン・メッシング選手も感動して思わずハグするという。総合は4位。

 

良い流れをそのまま自分のエネルギーに変えて、見事なフリーを演じたメッシング選手でした。背の高い選手たちが台頭してきているカナダ男子の中で、メッシング選手は小柄で、スピード感あふれるフットワークとバネのある滑りが持ち味なのですが、オズモンド選手と同じ振付師のランス・ヴァイポンドが創ってくれたチャップリンのプログラムがバッチリはまった、という感じです。フリーは3位、総合2位。

 

SP2位だったケヴィン・レイノルズ選手。彼は日本で大変人気がある、とこちらのテレビでも取り上げられていました。

 

 

 

 

しかし残念ながらフリーではジャンプが決まらず、順位を5位まで落としてしまいました。年齢を考えるとこれが彼にとって最後のナショナルズであった可能性は高く、落胆は大きかったでしょう。

 

優勝はもちろん、パトリック・チャン選手。歴史に残る10個目のナショナル・チャンピオンのタイトルを獲得して会場の皆から大きな拍手を受けていました。クワッドはトウのみを二本、冒頭の4-3コンビネーションは彼の得意とするところでしたが、ミスが出て単独に。次の四回転にダブルをくっつけてリカバリーするも苦笑いしていました。トリプル;アクセルも乱れましたが、彼のスケーティング・スキルは観る者がまるで催眠術にかかったかのように感じる威力があります。このリンクの氷は滑りにくい、との声も聞こえていましたが、そんなことはパトリックのブレードに全く影響を及ぼさない。自由自在に氷の上に絵を描くような動きです。これがもう、来シーズンから試合では観られないのかと思うと本当に切ない。

 

今大会、男子・ペア・アイスダンスの3競技でトップ選手たちが引退すると宣言していたので、観客もメディアもセンチメンタルにならざるを得ない、という雰囲気でした。TSNではこれでもか、というほどエモーショナルな動画を準備し、番組の最後に流していました。

 

 

 

「Passing the torch」というタイトルで、引退していくベテランたちから次世代の選手たちに「松明を渡す(=バトンタッチ)」する、という内容のもので、テッサ&スコット、エリック&メーガン、そしてパトリックたちが登場します。

 

 

 

 

 

 

若手の代表としてはナム君やセガン&ビロドー、そしてスーシース&フィルスたちが感謝の意を述べる。

 

 

 

シェイリーンもフィーチャーされてて、カナダにおけるフィギュアスケートの歴史の中で、素晴らしい成績を残した選手はたくさんいるけれど、3つの競技でほぼ同時期にトップ選手たが揃って、一つの時代を築き上げてきたのは珍しい、と言っていたのが印象に残りました。

 

 

確かにバンクーバー五輪後、カナダのスケート界を支えてきて数多くの世界タイトルを獲得してきた選手たちですよね。それが一斉にいなくなるのはとても寂しく、マックスママも感慨深い、と言ってました。

 

来シーズンのカナダのフィギュア界は全く一新されます(女子以外は)。これからどういった時代になるのか、しっかりと見守っていきたいと思います。

 

 

そして記事のタイトルにもありますように、本日、カナダの五輪代表チームが発表されました。4競技ともナショナルズの結果通り、となりましたが、これはほぼ、文句なしでしょう。

 

 

 

 

そうは言っても、男子のナム君は、心情的に行かせてあげたかったかな、とマックスママ言い合ったことでした(マックスとナム君はリンクメイトであったこともある)。ほんの1ポイントの差でオリンピック行きの切符を逃した、と思うとやり切れないでしょうが、ナショナルズの成績をさておいても今シーズンのキーガン・メッシング選手の成績と比較すると、(オータムクラシックやNHK杯など)ナム君はちょっと分が悪かった。

 

せっかくジャンプの調子が戻って来たのだからどうかどうか、希望を捨てないでほしい。四大陸選手権には出場権を与えられていますので、気を取り直して良い滑りを見せてください!

 

 

以下にカナダの五輪代表チームのリストを貼り付けておきます。この他、スケートカナダのHPにてワールドや四大陸選手権、ジュニア・ワールドに出場する選手たちのリストが掲載されています。

 

 

 

 

 

カナダのフィギュアスケート五輪代表チーム:

 

 

Name Event Hometown
Patrick Chan Men’s singles Toronto, ON
Keegan Messing Men’s singles Sherwood Park, AB/ Brampton, ON
Gabrielle Daleman Women’s singles Newmarket, ON
Kaetlyn Osmond Women’s singles Sherwood Park, AB/ Marystown, NL
Larkyn Austman Women’s singles Coquitlam, BC
Meagan Duhamel Pairs Lively, ON
Eric Radford Pairs Balmertown, ON
Julianne Séguin Pairs Longueuil, QC
Charlie Bilodeau Pairs Trois-Pistoles, QC
Kirsten Moore-Towers Pairs St. Catharines, ON
Michael Marinaro Pairs Sarnia, ON
Tessa Virtue Ice dance London, ON
Scott Moir Ice dance Ilderton, ON
Piper Gilles Ice dance Toronto, ON
Paul Poirier Ice dance Unionville, ON
Kaitlyn Weaver Ice dance Toronto, ON
Andrew Poje Ice dance Waterloo, ON

 

 

コーチ陣のリストです:

 

 

Name Position Hometown
Lee Barkell Coach Kirkland Lake, ON
Ralph Burghart Coach Vienna, Austria
Marie-France Dubreuil Coach Sainte-Catherine, QC
Oleg Epstein Coach Chicago, Illinois, USA
Richard Gauthier Coach Mont Tremblant, QC
Patrice Lauzon Coach Boisbriand, QC
Bruno Marcotte Coach Beloeil, QC
Nikolai Morozov Coach Edgewater, New Jersey, USA
Zdenek Pazdirek Coach Coquitlam, BC
Josée Picard Coach Hull, QC
Juris Razgulajevs Coach Riga, Latvia
Ravi Walia Coach Vancouver, BC