2016年カナダ選手権:雑感(その1) | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...





なんだか帰宅してからバタバタしていますが(こればっかり)、取り急ぎ、幾つか感想をアップしていきます。



大会最終日の1月24日、朝から選手たちがEXの練習に励んでいました。


私はメディアセンターを開けるために10時前に到着したんですが、それから間もなくフィナーレのリハーサルが始まりました。役得でキスクラ付近からしばらく観察していましたが、ジェフリー・バトルが振り付けのショーになったようです。(私は実はこの日、移動のため、ショー本番を観ることができずに帰ったのでした)


ジェフリーはエキシビションの幕間に、カナダのスケート殿堂入りをするということでスペシャルゲストとして呼ばれていたのです。この他、エルビス・ストイコさん、テッサ・ヴァーテュー&スコット・モイヤーなどのお馴染のOB/OGたちが顔を見せて大会に花を添えていました。



最終日のお祭り気分で、昨日まで緊張した顔で舞台裏をウロウロしていた選手たちも、晴れ晴れとした表情で氷に乗っている。

王座を奪還したパトリック、初めてのカナダ女王に輝いたアレイン、カムバックしたケヴィンケイトリン、昨年の王者ナムくんギャビー、皆、笑顔でバトル氏の指導のもと、フィナーレの練習をしていました。



舞台裏にいると氷上とはまた違った、選手たちの素顔に遭遇します。


メディアを手伝っているため、特に演技が終わってから取材の場に選手たちを連れて行く際の喜怒哀楽が目に入るわけですが、今回もその例に漏れず、数々のドラマがありました。


ペアとアイスダンスの場合、首位はほぼ確定と思われ、実際その通りになりました。が、二位、三位争いは意外な展開になりました。


特にアイスダンスは以前、ウィーヴァー&ポジェの後、いつもポール&イスラム組が続いていたのですが、昨年ごろからここにギレス&ポワリエが割り込み、今回はなんとさらにパラディ&ウエレット組がフリーダンスを終えて三位に食い込んで来ました。



ショートダンスの三位からメダル圏外の四位に沈んだポールとイスラム選手たち、その落胆は明らかでした。メディアの待ち受けるミックスゾーンに連れて行くのが心苦しいほど。。。


カナダにおけるアイスダンス競技のレベルの高さが伺える熾烈な戦いでした。



ペアは前日のショートで背筋が凍るような転倒をしてしまったムーアタワーズ&マリナロ組、驚いたことにしっかり復活してフリーを演じました。クリステンは背中や腰の辺りに痛々しいテーピングをしていましたが、それでも笑顔を見せて最後まで滑りました。どれだけ痛かったでしょうか。でも実は痛いのはマリナロ君も同様で、彼は咳をするのも辛い、と後で漏らしていました。


スケート選手って、きらびやかな衣装の下にはアザやら擦り傷やら隠していて、とってもストイックなのですね。



そして最終的な結果としては昨年はまだジュニアだったセガン&ビロドー組が堂々と銀メダルを獲得。彼らは昨年末のGPFにも出場して、こっそり4位になってるんですよ。(しかも2015年ワールドでは初出場で8位だったりもして)


今後、けっこうダークホースを脱却して、世界でもトップレベルにのし上がって来る気がします。彼らのフリー演技はおそらく優勝したデュアメル&ラドフォード組よりも大きな拍手を得ていましたからね。


あと、三位に入ったペアは私のお気に入りのイリヤシュシキナ&モスコヴィッチ組。彼らはクリケット・クラブで練習していて、ナム君たちとも仲良しです。男子フリーの時は


「あ、ヌードル(ナム君のあだ名らしい)の出番だ!」


と言ってカーテン裏までかけつけて、応援していました。



しかし何と言っても男女シングルスの順位争いが劇的でした。


女子ではショートが終わって首位にケイトリン・オズモンド、2位にアレイン・シャートラン、3位にギャビー・デールマンがいたわけですが、この三人は私が2013年に初めてカナダ選手権を生観戦した時と同じ顔ぶれだったんですね。

(この時 ↑ は私もまだ未熟者で、観戦レポートがすんごく、今にもまして、稚拙でお恥ずかしい。)


さて、フリーではまず、デールマン選手が気迫の演技を見せて高いスコアを叩きだしました。会場の反応がすごかった。大きな拍手と歓声に包まれて、スクリーンには喜びを全身で表すギャビーが映し出されます。

彼女はスミスさんの記事によると、衣装の裏地に小さな「石」を縫い込んでもらってゲン担ぎとしている、といった面もあるようですが、自身のツイッターをのぞいた限りではかなりポジティブ・シンキングに傾倒している感じ。






なのでショートの後、しっかりと気持ちを立て直して、思いっきり滑ることだけを考えた、と言ってたのも納得です。


しかしこれに続いたシャートラン選手がまたもや見事なフリー演技を見せ、会場からさらに大きな歓声が聞こえて来ます。デールマン選手の追い上げによくぞ応えた、ということだったのだと思います。

そしてSPでのリードが功を奏して、総合点でデールマン選手を上回ります。これで最低でも二位、という結果に舞台裏に戻って来たアレインちゃん、喜びで顔がすっかり上気していました。


さあいよいよケイトリン・オズモンド選手の出番。美しい黒の衣装でタンゴを舞います。

ところがスクリーンをのぞき込んでいる記者からはところどころ残念そうなため息が。幾つかジャンプにミスがあり、SPでのリードがどんどん削られて行くのが分かります。

デールマン選手もシャートラン選手も、居ても立っても居られない、というように舞台裏を行ったり来たりします。特にデールマン選手にとって、三位に終わることはワールド出場権を逃す、ということを意味するので大変な緊張感だったでしょう。


スコアが出て、オズモンド選手が三位に後退したと判明したとたん、悲鳴が上がりました。アレインとギャビー、この二人がワールド出場。そしてアレインにとっては初のカナダ女王タイトルです。







改めて取材され、すっかり慌てふためいているアレイン、そして安堵のあまりものすごく饒舌になったギャビーの様子が微笑ましかったのですが、ここにキスクラから戻って来たケイトリンが加わると、私はかなり胸が詰まりました。




(写真はいずれもクオンさんのフェイスブックより)



喜びに満ちた二人の真ん中に立ってインタビューを受けるのは、昨日まで女王の座奪還かと思われたケイトリンにとってなんと厳しい状況だったでしょうか。気丈に振る舞っているだけに気の毒でした。



(つづく)