「バトル・オブ・ザ・ブレーズ」
という番組が始まり、今年で4シーズン目を迎えます(2012年はお休みでした)。
どういう内容かというと、
引退したNHLの選手とフィギュアの選手がペアを組んで演技を競い合い、
6週間の勝ち抜き戦や敗者復活戦を経て、最後は三組が決勝を戦います。
これまで参加したアスリートはフィギュアの側だけを挙げますと:
シェイリン・ボーン
エカテリーナ・ゴルディエーヴァ
ジェイミー・サレー
エレーナ・ベレズナイア
イザベル・ブラッスール
などなど。
ホッケー選手も現役時代はなかなか活躍したメンバーが出ています。
(組み合わせはこれまで一組を除いて男性がホッケー選手で女性がフィギュアの選手)
この番組が予想以上に高視聴率をマークして、4シーズン目突入、となったわけですね。
特別審査委員にはサンドラ・ベジックやカート・ブラウニングなども登場して、年々豪華な造りになって行っています。
カナダではフィギュアスケートはとても人気があるし、ちびっこの間でも盛んですが、
何と言っても男の子にとって
「スケートを着けてするスポーツ=ホッケー」
です。
一般滑走の際にスケートリンクでフィギュアのスケート靴を履いている男の子は皆無と言って良いでしょう。
なのでこの「バトル・オブ~」で元プロホッケー選手がフィギュアの靴を履くと、最初の一週間くらいは転びまくって大変なのだそうです。
そして彼らは異口同音に:
(フィギュアって)「思ってたよりも大変な競技なんだ~」
と言います。
力技には問題がないのです。
リフトもスローも軽々こなせます。でもスケーティングがなかなかうまく行かない。
しかしご覧のように最終回までにはすごい上達を見せます。
さて、話は少し飛びますが、二つ前の私のブログ記事に関するコメントに
「カナダでは反同性愛法に抗議しない、ということの方が記事になるのですか?」
というまささんの興味深いご指摘がありました。
確かに2013年現在のトロントにおいてはそう言えるでしょう。
なにせ北米では西のサンフランシスコ、東のトロント、と言われるほどにここはゲイにとって住みやすい都市と言われているのですから。
毎年、7月に開催される「プライド・ウィーク」というゲイのための祭典には多くの地元の著名人たちが参加し、トロント市長のロブ・フォード(下の写真右)などは過去二年間パレードを欠席して
「今年も忙しいし、参加しないかも」
と、言ったとたんに強烈なブーイングに遭いました。(よって今年はちょこっと参加)
カナダ人のフィギュアスケーターではジェフリー・バトルがプライド・デーのスポンサーであるリムジン・サービス「UBER」のコマーシャルに出演しています。
しかし、そんなトロントでさえもゲイに対する偏見が残っていないとは言えません。
例えば、未だに(特に男性の)チーム・スポーツの世界では同性愛者としてカミングアウトするのはタブーだと言えるでしょう。
そのため、2009年にトロントのNHLチーム「メープル・リーフス」のGMブライアン・バークの息子(自身もアメリカの大学でホッケー部のマネージャーを務めていた)がゲイであることを公表した時には、皆、バークがどのような反応を見せるのかと見守ったものです。
そしてバークが自らその年のプライド・パレードで息子と行進したことは人々を驚愕させました。
(なお、写真左のブレンダン・バーク君は残念ながら、弱冠21歳で交通事故で亡くなってしまいました。2010年のバンクーバーオリンピックにて、父親のブライアン・バークがアメリカのホッケー代表チームのGMとして大会入りする直前の悲劇でした)
まあそんな背景もあって、この「バトル・オブ・ザ・ブレーズ」という番組の狙いは、
ホッケー選手が慣れないフィギュアスケートの靴を履いて華々しいショーナンバーを(けっこう陶酔しながら)滑る
というところだけではないように思います。
これまでずっと「女の子のための競技」あるいは「男らしくない男のための競技」と見なされてきたフィギュアに、
カナダでは「マッチョの権化」(ひえ、死語?)として崇められるNHLの選手があえて挑戦する、
そしてさんざん苦労した末、フィギュア競技に対して新たな尊敬の念を覚える、
という筋書きではないかと私は考えているのです。
今のところ、視聴率からするとその狙いは非常に鋭かった、ということでしょうね。
ちなみに今シーズンの「バトル・オブ・ザ・ブレーズ」は9月末からスタートのようです。
日本でもCBCのサイトから見られるのかな?