機内の楽しみ | 覚え書きあれこれ

覚え書きあれこれ

記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

いきなりですが、一昨日カナダに戻りました。日本滞在中のことも本来ならばブログに書くべきでしたが、なんだかあっという間に過ぎてしまいました。

というわけで今日は二つほど記事をアップしようと思っています。

最初はタイトルにもあるとおり、日本までの長い飛行機の中での時間の過ごし方について。

この頃はどんな航空会社のフライトでも乗客全員に個別のスクリーンが完備されていると思います。

このおかげでかなり機内での過ごし方が変わったのではないでしょうか。

以前ならば機内前方のスクリーンにせいぜい二本くらいの映画が一斉上映され、それを他の人の頭の上を越して見ないといけませんでした(こんな時代、憶えている人のほうが少なくなっているでしょうが)。

ところが最近では私など、13時間のフライトの間に4本は軽く見てしまいます。

自分だけで、好きなタイミングで好きな映画が見られるのでついつい、眠るのもそっちのけになってしまうのです。

映画を見る上での様々なコツも学習しました。

見たいものを選択したのち、長々とコマーシャルが上映されるのですが、私は本編が始まるまでの時間、トイレに行くことにしています。あるいは飲み物をとってきたりして、イライラすることを防ぎます。

戻ってくるとちょうど始まる、と。

さて、今回の旅行では行きも帰りも選べる映画は全く同じラインナップだったのですが(2週間しか経っていないので当たり前でしょうが、これはちょっとムカつきます)、ラッキーなことに素晴らしい映画にめぐり合い、なんと二度ずつ、見てしまいました。

両方ともフランス映画で、エアカナダの映画ジャンル「Franco-Cinema」にありました。

一つ目は絶対に見たいと思っていた "Intouchables" (邦題「最強のふたり」)です。

テーマはパリに住む億万長者で身体障害者のフィリップと、その介護にあたる黒人の若者ドリスの不思議な関係。

フィリップはハンググライディングの事故で首から下が麻痺してしまい、車椅子での生活を余儀なくされています。

人生にかなり悲観して、介護人にもつらく当たるため、ひっきりなしに新しい人を面接する羽目になっています。

そこに失業保険をもらうため建前上、面接に来たドリスに興味を持ち、雇ってしまいます。

これまでの介護人とは全く違い、ドリスはフィリップを容赦なく扱い、しかしユーモアとエネルギー溢れる生活を与えてくれました。

二人はどんどん、信頼を深め合っていきますが、ドリスの複雑な家庭環境が次第に邪魔をするようになって、、、



実話に基づいているところがすごいのですが、ただのお涙ちょうだい、あるいはドタバタコメディで終わらないところがフランス映画らしいところです。

フィリップとドリスを演じる俳優たちも素晴らしい。これをハリウッドでリメイクする話が出ていて、もうすでに私などはおののいていますが。

そして二本目のお気に入りは "Les choristes"(邦題「コーラス」)です。これは1945年の白黒映画 "La cage aux rossignols" (「鶯たちの鳥かご」)という映画のリメイクだそうです。

第二次世界大戦後のフランスの寄宿学校が舞台。

戦争で親を失ったり、素行が悪くて家では扱いかねられたりした少年たちばかりが集まっている学校です。

そこに新しく就任した監視員(フランス語では"surveillant"と言って、教員とは異なる、低いランクの職業です)、クレマン・マテューはただただ厳しく虐げられている子どもたちに同情し、彼らに合唱を教えることを思いつきます。

マテュー自身、作曲家を志したものの挫折していました。

学校一の問題児(「天使の顔をして悪魔のようなやつ」と言われる)ピエールとの交流を中心に、子どもたちとの出会いによって彼も自信を取り戻して行きます。

ご紹介するこのシーンは、マテューに悪さをしたピエールが合唱から外され、大事な発表会で歌わせてもらえないところから始まります。

主賓の伯爵夫人が「一人だけ外れている男の子は?罰されているのかしら?」と聞くと、マテューは「ああ、あの子はちょっと例外なんです」と意味深な返事をします。

そしてソロの部分になり、ピエールに手を差し伸べるマテュー。ふてくされた態度から急に姿勢を正して素晴らしい歌声を披露するピエール。

少年の真剣なまなざしが歌う喜びと感謝で溢れて行くのがなんとも鳥肌ものだと思いました。



このピエールを演じた当時13才のジャン・バティスト・モニエ君は実際、合唱団のソリストで、映画の中の歌声も全て本人のもの。

今は22歳の若手俳優として活躍しているそうです。

とにかく、本当に素敵な映画にめぐり合えて幸せでした。