学生デモといえば | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...


現在、少し下火になった感がありますが、昨年の11月から今年の春にかけて、ケベック州で大規模な学生デモが起こっています。

もともとは大学の学費の値上げに反対、ということで始まった学生運動でしたが、徐々に「とにかく政府に腹が立つ」とか「デモを鎮圧するなんて横暴」といった主張をする若者が目立ってきました。

このせいで多くの大学では授業が頓挫したり、学生にも一般市民にも大きな影響が出ています。その一方でデモの中心となっている学生たちはどんどん勢い込んで、すっかり正義の味方を気取っているようです。そのため。メディアにおける報道にもあまり好意的なものは見られません。

デモやらストやらは何もフランス系の人に限ったことではありませんが、私はこのケベックでの一連の出来事によって、子ども時代にフランスで経験したことを思い出しました。

1973年3月。

当時、私はまだリセ(小学校6年生から高校卒業までの7年間一貫教育機関)に入って間がなく、まだ2年生、つまり12才だったはずです。

朝、学校に到着すると教室の黒板に「Assemblee generale dans le preau a 10 heures」とデカデカと書かれていました。「10時に講堂で全生徒集会」ということです。

「は?これって何のこと?」と思っていると、確か朝一番は数学の授業だったのですが、先生がやってきて「ああ、これは皆、行かないと。私も一緒にデモに参加するし」と言って授業を中止し、さっさと講堂に向かっていきました。

その先生はまだ20代でまだまだ気持ちも若く(今思えばちょっとヒッピーが入ってたかも知れません)、「私のことは『マドモアゼル何々』じゃなくて、ファーストネームで呼ぶように」と指示されて面食らったのを憶えています。

私はどうして良いのか分からず、とりあえず講堂で先輩生徒たちの演説を聞いたものの、何に対する反対運動なのかもよく理解できませんでした。

そしてデモに参加するのは怖くて家に帰りました。

翌日学校に行くと、同級生の中には集会の後、パリの街中を大勢で行進して、地下鉄もただ乗りしてすごく興奮した、と言っていた子もいました。ちょっと羨ましいような気もした憶えがあります。

このブログの記事を書くためにもう一度、調べたのですが、この時の学生デモはフランス中の学生を巻き込んだすごい規模のものだったようです。しかも中心となったのが高校生、というところが特徴だったようです。

発端はフランスの兵役制度でした。

それまでは18才から20才の間に徴兵されるところを大学生に限っては数年、遅らせる事ができたのですが、その延滞システム("SURSIS")を撤廃する、とドブレ国防大臣が提案したのです。21才までには必ず、兵役に行くこと、とされたことにフランス中の若者が怒り、デモに発展したわけです。

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「へーそうだったんだあ」と、40年も経ってから改めて感心しました。

私は別になんでもかんでも、ストやらデモやらするのが良いと思っているのではありません。大勢の人に不都合が生じたり、勉強したいのに学校が閉鎖になったり、地下鉄などの公共の交通手段がいきなり無賃乗車のえじきになったり、というのは腹が立ちます。

しかし2012年のケベック州大学生デモの「学費値上げ反対」に比べて、1973年のフランスの高校生デモはもっと悲壮感に突き動かされた運動だったような気がします。

下手をすると高校卒業とともに兵隊にならされる、いくら大学で勉強をしたいと思っていても中断しなければならない、というのは男の子たちにとってどんなに不条理に思えたことでしょうか。

だからこそ教師や大人たちの支援をも得られたのではなかったかと思います。

それにしても、さすが革命の国、フランスです。

たかが11~12才の中学生の頃から政治に関心を持ち、自分たちに関係のある政策に関しては堂々と意見を主張する。

普段は組織力ゼロで自分勝手な行動が目立つのに、そういう時は一気に団結して行動に移すところが面白いですね。

本当に40年もかかりましたが、当時の状況をやっと理解した次第です。