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これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『ファントム』(2023)国際フォーラムホールC

ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」をもとに1991年、テキサス州ヒューストンで、脚本アーサー・コピット、作詞作曲モーリー・イェストンでミュージカル化。

『ファントム』は『オペラ座の怪人』とは設定、結末などカラーも違う。ブロードウェイでは上演されてないが、世界各国のプロダクションでさらに味を変えるなどしての上演が続く。日本では2004年宝塚が初演。その後別プロダクションで上演もされ、2019年に城田優が主演と共に演出も手がける。城田優出演&演出では今回が再演という形になる。


原作 ガストン・ルルー(「オペラ座の怪人」)

脚本 アーサー・コピット

作詞作曲 モーリー・イェストン


翻訳・通訳 伊藤美代子

訳詞 高橋亜子


演出 城田優

舞台監督 榎太郎


ファントム/エリック:城田優、加藤和樹

クリスティーヌ:真彩希帆、sara(ただし体調不良で上演前に休演となり、以降真彩希帆がシングルキャストとなる)

フィリップ・シャンドン伯爵:大野拓朗、城田優

カルロッタ:石田ニコル、皆本麻帆

(以上、ダブルキャスト)

 

アラン・ショレ:加治将樹

ジャン・クロード:中村翼

文化大臣:加藤将

ルドゥ警部:西郷豊

ゲラール・キャリエール:岡田浩暉

 

少年エリック:井伊巧、野林万稔(のばやしかなる)、星駿成

(トリプルキャスト)

 

アンサンブル

荒田至法(あらたしほう)、池谷祐子、伊宮理恵、岡施孜(おかしもん)、上條駿、川口大地、川島大典、木村朱李(きむらしゅり)、木村つかさ、關さや香(せきさやか)、玉山珠里、照井裕隆、遠山さやか、轟晃遙(とどろきこうよう)、蛭薙ありさ(ひるなぎありさ)、増山航平、松島蘭、幹てつや、横関咲栄(よこざきさきえ)

 

 

 

 

19世紀後半のパリ。

オペラ座には地下深くに隠された秘密が。時に不気味な声、物音が鳴り響き、それは幽霊と囁かれていたし、目撃者には「ファントム」と呼ばれていた。しかしその正体は、オペラ座の劇場支配人キャリエール(岡田浩暉)がずっと面倒をみてきた醜い顔をマスクで覆った青年エリック(城田優)だった。エリックは地下の棲家へ降りてきた者は殺め、自分のテリトリーを守っていた。

一方、歌手を夢見るクリスティーヌ(真彩希帆)はパリの街角で楽譜売りをしていた。その歌声を耳にしたオペラ座のパトロンシャンドン伯爵(大野拓朗)はクリスティーヌをスカウトし、キャリエールに話をつける。

しかしクリスティーヌがオペラ座を訪ねた時にはキャリエールは解任され、ショレ(加治将樹)が新支配人になっていた。その上、ショレは妻のカルロッタ(皆本麻帆)をプリマドンナにすべくオペラ座を牛耳っていた。そんな中へ入ることになったクリスティーヌは、まずはカルロッタの衣装係にさせられる。それでも懸命に働くクリスティーヌ。その歌声を偶然耳にしたエリックは、クリスティーヌの才能に母を思い出し歌のレッスンを申し出る。仮面をつけ、名も明かさぬまま。

ある日、クリスティーヌはコンテストがあるからと出場を促され、さて出てみれば、その歌声に誰もが魅了され、カルロッタ自ら次の公演演目のプリマドンナに抜擢する。また、シャンドン伯爵からも求愛を受け、それを知ったエリックは絶望に暮れる。そして実は、カルロッタは決してクリスティーヌを歓迎しているわけではなく、大舞台で恥をかかせるべく、声が出なくなる毒薬を盛る。それをも知ったエリックは、棲家で永遠に二人で暮らそうとクリスティーヌをさらい、カルロッタを殺害し、オペラ座に巣食うファントムの存在を知らしめる。

ルドゥ警部(西郷豊)らが捜索を始める中、エリックの存在を隠し続けていたキャリエールの真実が明かされる。また、マスクを取ったエリックの顔にショックを隠せなかったクリスティーヌは、エリックを追い込んでしまう…。

 

絶望とわずかな希望を持った純粋なエリックと、キャリエールの父性愛、クリスティーヌの博愛が描かれる。

 

 

 

 

『オペラ座の怪人』自体観たことなく、なんとなくのあらすじは知ってはいたけど、『ファントム』とは別物だとは知らず。そんな状態での観劇。とても感動した。

 

やはり、城田エリックの少年ぽさ、純粋と邪悪が混在する性質の表現が見事で(少年エリック:野林万稔からの引き継ぎがナチュラル)、それは陰キャとかコミュ障とか揶揄される現代に通じるキャラクターであり、わかりやすかった。そしてあの声量と歌唱、素晴らしかった。

演出も良かった。緊迫感もあるし、叙情感もあるし、笑いもある。客席をも利用して、もしかして今私オペラ座に居る⁇、というような一体感も得られる。

その演出で言えば、開演前の注意事項はルドゥ警部が放送する。禁煙については「パイプ、葉巻、紙巻き煙草」と具体例を上げたり、携帯電話を「持ち運び電話機」と言い換え、着信音のモノマネをするなど笑いを誘う。そして上演5分前からパリの人々が舞台に少しずつ現れ日常を表現する。マイクは入ってないので、場所によっては聞こえないが客席は笑っていたし、所作で面白おかしくしてる面もあった。よくあることなのかもしれないけど、こうして会場を温めるのもいい演出だなぁ、と。

 

コミカルなのはシャレとカルロッタだけども、カルロッタの嫉妬心が少しわかりにくかった。

シャンドン伯爵の大野拓朗は『プロデューサーズ』以来。とてもいい人なキャラクターなのでぴったりだったが、おとなしすぎて魅力を感じなかった。仕方ないか。歌はいいのにもったいないな。

 

キャリエールとエリックの父子会話のシーンはグッときた。もっと近い席で観ていたら泣かされていたかもしれない。たぶん、城田優の演技力。それを受け止める岡田浩暉の包容力、コンビネーションの効果かな。

 

ほんの少しの出番だったけど、子供エリック野林万稔も惹きつけられた。

クリスティーヌ真彩希帆はさすが宝塚。でも、クリスティーヌ自体がたいしたキャラ付けが必要ないものなのだろう、人間的な魅力はなかった。

 

とにかく、何をおいても、城田エリック、城田ファントムだった。

 

 

 

(観劇日20230904)

 

大坂:梅田芸術劇場メインホール 0722~0806

東京:東京国際フォーラムホールC 0806~0910

 

 

 

 

 

 

『ベイビー・ブローカー』(2022)
原題『브로커』(読み:プロコ)、英題『Broker』
監督・脚本 是枝裕和(『誰も知らない』『奇跡』『万引き家族』他)
 
その教会の養護施設には「ベイビー・ボックス」という、産んだものの育てられない母親がこっそり子供を捨てにくる赤ちゃんポストが設置されている。教会が引き受け里親を探したり、そのまま養育したりするのだが、施設に勤めるユン・ドンス(カン・ドンウォン)と、クリーニング店を営むハ・サンヒョン(ソン・ガンホ)はベイビー・ボックスに置かれた乳児の横流しをしていた。人身売買、赤ちゃんブローカーだ。そのブローカーに目をつけていたのが刑事のアン・スジン(ペ・ドゥナ)とその部下イ(イ・ジュヨン)で、ベイビー・ボックスの前でずっと張り込みを続けていた。雨の降るその日、若い女ムン・ソヨン(イ・ジワン)が赤ん坊ウソン(パク・ジヨン)をボックスの前に置いて行く。それを見ていたスジン刑事は野ざらしにするわけにはいかないと赤ん坊をボックスに入れるひと手間を加えた。
施設の中では、赤ん坊が入れられたのを確認したドンスとサンヒョンが赤ん坊をそっと持ち去り、監視カメラの映像も切って証拠隠滅も図る。
スジン刑事の目的は現場摘発、赤ん坊と引き換えの金銭の授受を押さえることだったため、動きがあるまで張り込みは続く。ところが翌日ソヨンが思い直し教会へ訪ねてきた。他のスタッフは知るよしもなく。しかたなくドンスは拠点としているサンヒョンのクリーニング店へと連れていく。そこから赤ん坊を売る旅が、スジンに追われる旅が始まる…。
 
途中、ドンスが育った養護施設に寄り、施設を出たがってる男児ヘジン(イム・スンス)がついてくることになり、そのヘジンによって五人の間に家族的な関係が出来上がったり、ドンスの過去、サンヒョンの置かれてる状況、実は犯罪をおかしてしまっているソヨンの現状からのウソンへの本当の気持ち、なぜスジン刑事は執拗に赤ん坊のブローカーを追うのかなど、それぞれが抱える問題も明らかになっていく。
人と人との繋がり、距離が縮まっていく人間愛を感じさせる作品だった。
 
それぞれがそれぞれの正義と偽善にまみれた我欲で動いていて、それぞれの行動に納得がいく設定の細かさがある。
ある種使い古された言葉だが、「生まれてくれてありがとう」という台詞が、これまで見聞きしたどの物語よりもそれぞれの立場にハマったし、「捨てられたんじゃなくて守られたのよ」という台詞も、その解釈が素晴らしいなと思った。
 
良かった。
 
これがなぜ韓国が舞台だったんだろう。日本で作るには何が足りなかったんだろう。
 
★★★★(★)
 

 

 

 

 

『メタモルフォーゼの縁側』(2022)

原作は鶴谷香央理の漫画。

 

監督 狩山俊輔(『青くて痛くて脆い』他)

脚本 岡田惠和(『おっぱいバレー』『世界から猫が消えたなら』『雪の華』『いちごの唄』『余命10年』他)

 

芦田愛菜、宮本信子、高橋恭平、古川琴音、生田智子、光石研、大岡周太朗、菊池和澄(きくちあすみ)、伊東妙子、汐谷友希、他。

 

佐山うらら(芦田愛菜)は働く母(伊東妙子)と二人暮らしの高校生。そろそろ進路も決めなければならない時期、でも何がしたいのかよくわからない。クラスでも地味で、クラスメイトとも距離があるいわゆる陰キャ。唯一同じ団地の幼馴染み河村紡(高橋恭平)とは互いの性格を熟知してる仲。そんなうららは漫画、特にBLが好きで、書店でバイトをしている。そのバイト先にある日書道教室を開いてる老婦人市野井雪(宮本信子)がやって来る。雪はたまたま手にした漫画単行本の絵が気に入り購入する。でも、それはBL漫画「君のことだけ見ていたい」だった。

久しぶりに漫画を読んだ雪はBLの展開に感銘を受け、続きが読みたくなる。しかし3巻目が在庫切れ。しかも計算してみると単行本が出るまでに1年半もかかっている。そんなに待てない…。うららもその作品と作者コメダ優(古川琴音)のファンで、雪の熱量を知り、連載雑誌が出ていることを教える。それから二人はよく作品について感想を言い合う友達になる。

やがてうららは雪との交流や会話を通し、また紡の彼女英莉(汐谷友希)がちゃんと自分の将来に向き合っていることなどから、自分の殻から飛び出し一歩を踏み出す。それが同人誌即売会に参加することなのだったが…。

 

ゆるくて何かが大きく動くわけではないが、うららの高校生のわりに気が利かない面や一歩も二歩も引いてしまう性格、「自分なんて」という引っ込み思案で自意識の塊のようなキャラがすごく良かった。雪と話が合う喜びと、でもちょっと違う気もするみたいな微妙なニュアンスがまた良くて、おそらく芦田愛菜の上手さもあるんだろうけど、何とも言えない恥ずかしいようなでも眩しいような感情が湧き上がった。

とても良かった。

 

雪の娘花江(生田智子)が机にあったBL本を手にする。ハッとするうららだったが、花江はさらりと流し、特段何も起こらない。また、紡も何ら疑問を持つことなくうららの初めての同人誌を買い、読み、褒める(もとより、英莉がBLを肯定してるからというのもある)。うららが案じるほど世間の了見は狭くないということが端的に表せられている優しいシーンだった。

コメダ優のスランプも同時に描かれており、雪によって救われるエピソードが入る。漫画によってその後の人生に変化があったのは雪も同じで、漫画の可能性(というか人の力の影響力、互助性)を感じさせる。

 

雪の家は古い家屋で、縁側がある。うららが初めて訪れた時、縁側から家に入った。いくら子供とはいえ初めての客人に玄関ではなく縁側から上がらせるというのはどうなんだろうと余計なことを思ったし、縁側で語り合うなど特徴づけるシーンがやたらあるわけでもない、ならばタイトルにある「縁側」は何だろうと思った。「メタモルフォーゼ」がかかってくるので、なるほど、縁側から入ったことが変身につながるのか、と合点がいった。雪によってうららは変わった。ラストもうららは娘のもとへ行って留守になった雪の家に、縁側から上がり縁側から帰った。出て行くところをしっかり撮って、それがうららの成長とうかがえる。と、締めも良かった。

 

うららの描いた漫画の内容が、男子同士の話ではあっても、互いに影響し合い力(支え)になるあたり、うららと雪の友情と重なり、そこも良かった。そのタイトル「遠くから来た人」も、普通なら出会って友達になんかなりようがないうららと雪の年齢差を示唆しているようで良かった。

エンディング曲も歌っているのはうららと雪で良かった。

 

★★★★(★)

 

 

劇中の漫画は漫画家じゃのめが担当したとのこと。今の流行りなのか、「下手だなぁ。いいのか、あの程度の画力で」と思ってしまった。ごめんなさい。

うららが作った同人誌は誰の絵だったんだろう芦田愛菜かな? 下手だけど素人絵とわかる甘酸っぱい絵だった。

 

 

 

 

制作 日テレアックスオン

配給 日活

 

 

 

 

 

芦田愛菜はいい作品に出る。吉永小百合ポジションみたいな。でも演技力があるから、私の中では吉永小百合より上。このまま半端な作品には出ず、大切に自分を活かす作品を選んでいって欲しい。

三流作品を経ずとも俳優業は成り立つ。そもそも役者を生涯やっていくのかどうかわからないが。ならばこそ、安売りすることはない。






深夜帯のドラマは新人起用にちょうどいいのか、初めて知る子がたくさん出ているけど、誰得のドラマなのか疑問。ほぼ漫画原作で、キスシーンはデフォルト、濡れ場も多い。しかも内容がない、話がつまらない(個人の感想)。お芝居でキスをする、ベッドインする、下着姿までは見せる、実写でやるその必要性が見えない。役者がかわいそうになってくる。

漫画だけじゃ足りないのか、どうしてもと言うならアニメじゃダメなのかと疑問。私はフェミニストではないし、実写化で創作物の品や質が落ち、意図が削がれるのが残念なのだ。そしてここから大成していく俳優が出ればいいけど、半分も成らないだろうと思うと、ただただ気の毒。そう見てる側に思わせてしまうのは失敗ではないか?

 

 

『ゾン100 〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜(2023)Netflix

原作は麻生羽呂(原作)、高田康太郎(作画)の漫画。

 

監督 石田雄介(ドラマ『アフロ田中』他)

脚本 三嶋龍朗

 

赤楚衛二、白石麻衣、柳俊太郎、市川由衣、川崎麻世、早見あかり、高橋洋、北村一輝、佐戸井けん太、筧美和子、中田クルミ、ドロンズ石本、谷口翔太、中村無何有(なかむらむかう)、他。

 

念願の制作会社に入社してCM制作部に配属となりやる気満々の甘道輝(赤楚衛二)。素敵な先輩プロデューサーの鳳(市川由衣)、優しそうなチームメンバーと面倒見の良さそうなリーダー小杉(北村一輝)、さっそくの歓迎会で夢と希望に溢れ…たものの、時間が来るとさっさとお開きに。かと思えばみんな会社に戻り仕事を始めるではないか。しかも小杉リーダーはその実、理不尽なパワハラがひどい。チームメンバーも自分のことで精一杯な状態。鳳も社長(川崎麻世)と不倫関係にあった。気がつくと家に帰れたのは、それから2日後だった…。そう、輝が入った会社はサービス残業当たり前、超ブラック会社だったのだ。

大学時代アメフト部で一緒だった親友のケンチョ(柳俊太郎)に会えばなんだか順調そうだ。ついイラッとして最後の試合の敗因のことで喧嘩してしまう。疲労は溜まりメンタルもやられ会社に行くのが辛くてしかたなくなった1年後のある日、いつものように家を出ると、街中がゾンビで溢れかえっていた。輝にはゾンビがいる危機的状況より、これで会社に行かなくてすむことの方が利が大きかった。

とはいえ、どうせゾンビになってしまうならそれまでにやりたいことをやろうと思いつく。最終目標はみんなを助けるスーパーヒーローだ。一つ一つこなしていく中で、同じマンションの香坂夫婦(髙橋洋、早見あかり)三日月閑=みかづきしずか(白石麻衣)と出会い、ケンチョとも合流し、アメフト部での経験を生かし、協力し合い、安全が保たれてると言われてる水族館へ向かう。その水族館は茨城のマリンパラダイス水族館で、ちょうど輝が目指すヒーローにピッタリのサメスーツがある場所だった。しかしいざ水族館に着いてみると、小杉リーダーが自分を頂点に独裁システムを構築していた…。

 

夢を叶える、やりたいことをやる、仲間を助ける、人は支え合って生きるもの、など、大切なことが説かれている。

 

ゾンビがなぜ現れているのか、退治はできないまま(原作連載中かな)。

でも生き方だけは変えられ希望に包まれてる形で終わる。のは良かった。

コメディだし漫画原作だし…、とはいえ、無粋だけど雑だなぁという印象は拭えず。

小さな欲に忠実で単純な輝が面白いし、それを赤楚衛二がうまく演じていた。

 

VFXが素晴らしい。もう当たり前なんだな、これくらい。

 

★★★

 

 

それにしてもこれを見てなおさら『ウォーキングデッド』は解決までいかないなと確信した。(ゾンビを防壁に使うあたり『ウォーキングデッド』)

 

 

 

 
アニメも始まっており、この実写版と少し設定が違っている(アメフト部ではなくラグビー部とか、鳳がプロデューサーではなく経理だとか、出会う人物の数も違ってたり)。というか、原作漫画に忠実なのはアニメの方なんだろう。
 

『ウェディング・ハイ』(2022)

 

監督 大九明子(『私をくいとめて』『勝手にふるえてろ』他)

脚本 バカリズム(『地獄の花園』、『ブラッシュアップライフ』他)

 

篠原涼子、中村倫也、関水渚、岩田剛典、中尾明慶、浅利陽介、前野朋哉、泉澤祐希、高橋克実、宮尾俊太郎、六角精児、尾美としのり、池田鉄洋、臼田あさ美、中川大輔、向井理、久保田磨希、伊勢志摩、片桐はいり、皆川猿時、空気階段、ヒコロピー、岡野陽一、河邑ミク、八木将康、川野直輝、佐藤晴美、山田佳奈実、おくつようこ、大森つばさ、他。

 

自分の時に、思い出に残るような素晴らしい結婚式をプランニングしてくれたウェディングプランナーが忘れられず、中越真帆(篠原涼子)は新郎新婦のどんな要望にも応える優秀なウェディングプランナーとなった。結婚を決めた新郎石川彰人(中村倫也)、新婦新田遥(関水渚)の式を担当する。

彰人と遥とで披露宴の内容、招待客選びが始まる。しかし思いの外、友人〜職場の上司~親族まで熱量がある。それぞれがそれぞれの事情により主賓挨拶、余興、乾杯の音頭などにかける思いがあった。また、彰人は意図せず初対面のバーのマスター(舞八尾俊太郎)まで呼ぶことになってしまう。遥は偶然再会した大学時代のサークルの先輩(前野朋哉)を通して、知らぬ間に元カレ(岩田剛典)の心を動かしてしまう。

さて始まった式だが、結婚式披露宴という非日常性から、拙いものでも意外にウケが良く、気づけば60分も押していた。しかしそこは敏腕ウェディングプランナー中越、すったもんだありながらも各々協力を得つつ対応する…。

そして遥の元カレ、さらに窃盗容疑のかかった逃走犯(向井理)が現れ、式に微妙にかする。

 

最後は大団円で、新郎新婦はハッピーに、式に参列する悩める者たちは今後の人生に光が見える形で終わる他人の結婚式で人生を改められる明るい話だった。登場人物が均等に主人公になる作りだ。

その登場人物にはクセがあり(俳優陣見ての通り)、どう絡んでくるんだろうという楽しみがあったけど、なんとなくうまくいったという表層部しか描いてないので内容が薄い。というか散漫な印象。でもコメディなのでこの程度でいいんだろうし、役者が達者なので画面が沸くし、ネタの仕込みの細かさが面白みをかもしてる。ウェディングプランナー中越のオチもついてて、よく練られたバカリズムらしい脚本だった。

 

岩田剛典、このくらいのコメディが一番いいな。

 

★★★

 

 

 

 

制作 ホリプロ

配給 松竹

 

 

『異動辞令は音楽隊!』(2022)

原案・脚本・監督 内田英治(『下衆の愛』『獣道』『神と人との間』『ミッドナイトスワン』『タイトル、拒絶』、『湘南純愛組!』他)

 

阿部寛、清野菜名、高杉真宙、磯村勇斗、板橋駿谷、酒向芳、渋川清彦、モトーラ世理奈、六平直政、岡部たかし、光石研、見上愛、倍賞美津子、高橋侃、長内美那子、小沢仁志、他。

 

刑事歴30年の成瀬司(阿部寛)が横暴な捜査とパワハラが過ぎ、内部告発によって警察音楽隊に異動となる。ちょうど老人を狙ったアポ電詐欺強盗が頻発してる時で、成瀬は経験から西田(高橋侃)に目星をつけていたところだっただけに悔しさが収まらない。捜査本部にも現場にも駆けつけたところで部外者だ。

やる気がないまま普段は雑務、音楽隊でドラムを担当することになる。他の音楽隊員も心からやりたくてやってる人は少ない。真面目に取り組んでいるのはミュージカル経験者の警察音楽隊隊長、指揮者の沢田(酒向芳)、パンクロックが好きな交通機動隊のパーカッション担当広岡(渋川清彦)、警ら隊所属チューバの国沢(板橋駿谷)、音大を出て警察音楽隊なら仕事をしながら演奏も出来ると入った交通課の来島春子(清野菜名)くらいか。

その春子との交流で成瀬は少しずつ変わっていく。こじれていた娘法子(見上愛)との関係も良くなり、認知症の母親(倍賞美津子)にも優しくなれ、市民がどれだけ音楽隊を楽しみにしているかも知れ、警察官としての役割を再度考え直すきっかけとなる。また、成瀬の変化は音楽隊員たちの気持ちの変化にもつながる。

そんな中、音楽隊のファンの老婦人村田ハツ(長内美那子)がアポ電強盗に殺されてしまう事件が起きる。成瀬の部下だった坂本翔太(磯村勇斗)は成瀬がしつこく言っていた西田を調べ始める。そうして主犯格の男(小沢仁志)との接触日時が判明し、成瀬の作戦で音楽隊を使った犯人逮捕劇へと展開する…。

 

起承転結はっきりしたオーソドックスな内容で、次のシーンの予想がつき、どう展開するのか着地点まで想像でき、それを裏切らない。そういう意味ではつまらないけど安定感がある。なんとなく見れて楽しめる作品だった。

 

が、だからこそ、成瀬が音楽隊に一生懸命になっていく過程、音楽隊員たちが成瀬につられて楽器に向き合っていく過程の説得力の薄さ、アポ電詐欺強盗の主犯が年配の男なのにやたら力が強いとか逃げ足が速いとか、捜査一課の刑事より機敏なのが無理があって萎えた。そこらへんは地方都市という舞台が言い訳になっていそうなのがまたなんとも…。オマケのように音楽隊の存続危機も出てくるし。でもそれでいいんだろうと思えた。それくらい予定調和な映画だった。

 

★★★

 

 

 

制作 アークエンタテインメント

配給 ギャガ

 

 

『お雛様へのヘアカット』(2022)

監督・脚本 溝口稔

 

小学生の頃、真田日向(田中理来=たなかりく幼少期:江口勢梧)は重い心臓病で休みがちな坂井菜月(村山優香/幼少期:みこと)に学校のプリントを届けに行っていた。届けに行くうちに一緒に勉強や宿題をする仲良しになり、日向にとってはそれが初恋になった。

ある日、流し雛に願いを書いて川に流すとその願いが叶うという話があると、日向は一緒に書こうと誘う。日向は夢の美容師になることを書き、菜月はお嫁さんになりたいと書く。日向が美容師になるなら最初のお客さんは私ねと約束もする。でもその前に、練習に前髪を切ってと頼む菜月。日向は初めてのことにとまどいながらも切ると大失敗。菜月は大泣きしてしまう。それからなんとなく会うのが気まずく、プリントに折り鶴をそえてポストに投函して帰る日々が続く。そうしてある時から菜月はいなくなってしまった。流し雛はどうしたろうか…。

大人になって日向は美容師免許を取り、今は見習いの身だ。そこへ偶然菜月がやってくる。再会に喜び懐かしみ会話がはずむ。主治医の先生の転勤に合わせて菜月一家も引越しをして、今回も同じ理由で戻って来たのだという。流し雛はそのまま忘れて流してないというし、最初のお客さんの約束もまだまだ時間がかかりそう。その後も菜月はずっと美容室に通って来てくれていた。一度は渋られたデートがようやく実現した頃、菜月は病状が芳しくなく、入院してしまった。日向は一日も早くカットできるようにならなくてはと頑張って許可が降りた日、菜月の訃報が届く。

日向は約束のカットを前髪に施す…。菜月の母親から受け取った形見、だいじなものが入った箱には折り鶴と日向が合言葉のように帰り際に鳴らしていた風鈴、そして流し雛があった。その女雛には「ひなたくんのおよめさんに…」と書かれてあった…。

 

流し雛を流さなかったのは思い出の方が大事だったからだろうけど、日向は美容師になったわけで、流し雛の効力の意味とは…? どうせなら美容師への夢は会話にまかせて菜月の病気がよくなるよう書けば整合性がついたのに。

少女漫画っぽいが、話自体はいい話だったのに、役者が主演はもちろん、子供~脇役まで下手で、誰も上手い人がいないという珍しいパターン。うまかったらもっと脚本が活きたのになと残念だった。芝居の演出指導も詰めが甘い。情感のはしょりが多く、見る側の脳内補填に任せすぎ。

 

★★

 

 

 

 

『逢魔が時の人々』(2022)

監督・脚本 溝口稔

 

大学4年の藤山豪(杉江大志)は就活中だがまったく決まらない。本当は絵描きになりたいから美大にいった豪に、看護師の母親(大島葉子=おおしまはこは、別れた夫(団長安田)が絵師を目指し「坊主が上手に屏風に絵を…」と出家、寺の娘(田崎那奈)と再婚したと話す。豪はどんな絵を描いてるのか興味が湧き、父を訪ねると、ちょうど逢魔時の寺の鐘が鳴り、その妻が狐に取り憑かれたような奇行で大暴れしていた。妻がそんな状態だから修行さえも進まず、絵などとんでもない話だという。帰ってあらましを母親に話すと、仲の良い医者(わかばかなめ)を紹介することになった。しかし、豪の母親にも異変が起きていた…。

 

狐憑きは免疫系の疾患で服薬で改善されたが、豪の母親は認知症、仲の良い医者の息子はトランスジェンダーという、治ることのない状態にある………で? という感じで、何がしたいのか私にはわからなかった。

逢魔時は別称黄昏時で、昼と夜が交わる時のことで、魔物が現れるとか災いが起こる時とも言われているらしい。ので、人にはボーダーがあるということだろうか? だから?

 

会話劇で映像にする意味がない。コメディということで、その会話にはお笑いの要素が盛り込まれているけど、ショートムービーなんだから物語を進めてよと言いたくなるくらい無駄が多かった。

 

★★

 

 

 

 

『ロスト★マイウェイ』(2004)

監督・脚本 古澤健(『今日、恋をはじめます』『ReLIFE』『走れ!T校バスケット部』他)

アレックス・コックス監督のカルト映画『レポマン』へのオマージュ作品とのこと。

 

松重豊、上田祐一、安田尚哉、アレックス・コックス、増尾亮、杉山彩子、眞島秀和、田中要次、中村靖日、大西武志、恩田括、大河原典子、稲村優奈、川瀬陽太、宇波拓、他。




 

30歳までには世界的なバンドになることを夢みて活動(?)してきた放射性廃棄物処理施設で働くギター亮介(安田尚哉)、中古車販売所で働くドラム吾郎(松重豊)、借金を繰り返すニートのボーカル信平(植田祐一)だが、気が付けばもうアラフォー。それでもバンド練習を続け、同級生はもちろん中高生からも馬鹿にされてる始末。ある日、亮介は職場で感電事故にあい、その後川を流れてきた放射性廃棄物の入ったドラム缶を開けたことで目からビームが出るようになってしまう。そのビームは有機物であろうが無機物であろうが見たものなんでも消してしまう。その能力をめぐって政府機関や組織が動き始め、三人は友情と夢、ちっぽけな私欲に翻弄され始める…。

 

不条理コメディ。亮介の代わりにバンドに加入した大人びてるようで男たちの夢に惹かれる年相応の面も持つ中学生翔太(増尾亮)との対比が面白い。CGとか時代もあるかもだけど、ちゃちいのがまた味になってて、たぶんわざとではないかと。ナンセンス漫画のようでそれなりに楽しめた。

なにより松重豊が若い。眞島秀和も声でわかる程度。というのも、そもそも画像が荒くてぼやけてるのだ。


★★★(★)

 

 

配給 ユーロスペース





 

バンドの音楽的方向性は緩めのパンクのようだ。野坂昭如の「マリリンモンローノーリターン」を歌っている。「バージンブルース」を歌ったのは東口トルエンズだった。主題歌はばちかぶりの「未青年」。

そういえば、田口トモロヲはもともとはミュージシャンだったはず…と今さら思い出した。田口トモロヲのバンド、ばちかぶりは見たことも聴いたこともないけど名前だけは知っていた。その前身がガガーリン。それも名前だけは知っている。それで調べてみると、役者業もバンド活動もほぼ同時期から始めていたようだ。おまけに漫画家もやっていた。今でこそ名バイプレイヤーという第一認識だけど、多才だ。


 

『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』(製作2015)

ndjc(New Directions in Japanese Cinema)

文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトの作品

 

監督・脚本 佐藤快磨=さとうたくま(『歩けない僕らは』『泣く子はいねぇが』他)

 

アパート管理会社で働く木吉(太賀)はある日コンビニでレジの子が客に絡まれているのを見かける。仕事で鬱憤が溜まっていることもあり、木吉は衝動的にその客に飛び蹴りをかまし逃げ去る。後日そのコンビニに行ってみると、レジの子マコト(岸井ゆきの)から「かっこよかったです」との言葉と共にお礼を言われ、二人は交際に発展する。そしてマコトは、どんな店であれ、店員にクレームをつける客を見つけ出し、木吉に飛び蹴りを要求するようになる。木吉は徐々に芽生える罪悪感とマコトの願いの板挟みになり…。

 

木吉はちょっと気弱などこにでもいそうなキャラクターで、太賀らしい役どころだった。マコトはおかしいしうざい女の部類で、これもまた岸井ゆきのにぴったりだった。

アパート住民とのやりとりや、クレーマーの台詞など(特に家電量販店の客役ぼくもとさきこが良かった)、笑えるところもあったし、淡い恋愛青春もののようで面白かった。

 

★★★(★)

 

 

制作プロダクション アスミック・エース