『ナイツ・テイル 騎士物語 ARENA LIVE』(2025)有明ガーデンシアター
原作 ジョヴァンニ・ボッカッチョ「Teseida」、ジェフリー・チョーサー「騎士の物語」、ジョン・フレッチャー/ウィリアム・シェイクスピア「二人の貴公子」
脚本・演出 ジョン・ケアード
作詞・作曲 ポール・ゴードン
日本語脚本・歌詞 今井麻緒子
振付 デヴィッド・パーソンズ
アクションコーディネーター 諸鍛冶裕太
音楽監修・指揮 ブラッド・ハーク
演奏 東京フィルハーモニー交響楽団
アーサイト:堂本光一
バラモン:井上芳雄
エミーリア:音月桂
牢番の娘:上白石萌音
ヒポリタ:島田歌穂
シーシアス:宮川浩
ジェロルド:大澄賢也
牡鹿:松野乃知(まつのだいち)
穴井豪、岩下貴史、大山五十和(おおやまいそかず)、Seiga、西口晴乃亮(にしぐちせいのすけ)、石井亜早実、遠藤令、酒井比那、塩川ちひろ、知念紗耶、富田亜希、
植木達也、神田恭兵、小西のりゆき、茶谷健太、照井裕隆、中井智彦、広瀬斗史輝(ひろせとしき)、本田大河、青山郁代、岩瀬光世、咲花莉帆、田中真由、堤梨菜、原梓、藤咲みどり、水野貴以
アリーナライブと謳ってるだけあり、コミカルに作品解説も交えたコンサート形式のミュージカルになっていた。約2時間半ぶっ通しなのだが、途中10分程度のトークタイムがある。どうしてもという人はこの勿体無いトークを聴かずに用を済ますことになる。ということを冗談めかして面白おかしくしゃべる堂本光一と井上芳雄、ほんの数秒前まで、またこのあと一瞬でアーサイトとパラモンに戻るのが不思議でならなかった。すごいな、役者さん。
というわけで、2018年世界初演、2020年「ナイツテイル」シンフォニックコンサート、2021年完成形で再演を経ての今回のアリーナライブ。キャスト、オーケストラ、和楽器奏者、ロックバンドを合わせて100人を超えるメンバーで上演された。
テーベの騎士として誇りと名誉、厚い友情を持ち、伯父クリオン(大澄賢也)に仕えてきた従兄弟同士のアーサイト(堂本光一)とパラモン(井上芳雄)。敵国アテネとの戦いに敗れクリオンを亡くし大公シーシアス(宮川浩)に捕らえられる。牢に繋がれていようと二人でいることで案外楽天的に過ごすアーサイトとパラモン。ある日二人は同時にシーシアスの妹エミーリア(音月桂)に恋をして、恋敵となる。ところがアーサイトは放たれテーベへ戻ることになる。エミーリアと離れてしまうことでそれぞれ「パラモンに奪われてしまうのではないか」、「自由になったアーサイトに分があるのではないか」、二人は互いに疑心暗鬼になり、どちらもエミーリアを必ず手に入れると心に決める。
運よくアーサイトはテーベへ向かう途中でエミーリアの誕生日を祝う森の楽団のダンスリーダージェロルド(大澄賢也)と出会い、ダンサーとして採用される。これで再びエミーリアに会える手段を得た。そうこうしてその日がやってくる。一番ダンスの上手かった者にエミーリアが褒美を与える祝いの宴でアーサイトが選ばれる。もちろん名を変え身分を隠していたが、実はエミーリアもほのかにアーサイトに想いを寄せていたため、アーサイト本人ではないかとわかる。そして囚われてシーシアスのもとに来たアマゾンの女王ヒポリタ(嶋田果歩)が気持ちを察しアドバイスのもと、エミーリアの従者として迎えられることに。
一方パラモンは、パラモンに想いを寄せる牢番の娘(上白石萌音)の手助けによって牢獄を脱する。二人で逃げるはずがちょっとしたすれ違いによって離れ離れになり、牢番の娘はパラモンを見失い、裏切られたとショックを受ける。そして一人森に放り出されたパラモンは鹿狩りに来たシーシアス一派の中のアーサイトと再会する。かばい合いながらも二人は恋敵として対峙せざるを得ない。ついにはシーシアスにアーサイトであることがばれ、脱獄したパラモンも見つかってしまう。
アーサイトを想うエミーリアの哀願によって決闘によって勝者の命が保証されることに。唯一無二の友愛とエミーリアへの愛、騎士の矜持を賭け、アーサイトとパラモン、二人は剣を抜く…。
また、エミーリアは長年忘れられずにいる探していた心の友フラビーナとの再会を果たす。このあたりの表現が、同性愛っぽくて、これは終わりがどうなるんだろうと良からぬ結末を想像してしまった。また、血縁があろうがどれだけ信頼し友愛を持とうが男は生死をかけるもの、女は状況に翻弄されつつも本心は内包し目の前の現実に対応する存在であることや、軍神マルスとアテナとの勝負(アテナのソプラノが美しかった)によりアテナが勝利を治めたことから、ジェンダー差も匂わせていたので、革新的なラストをやはり期待してしまった。
が、結局、夢を追う心、希望に向かう歩み、何よりも人を思いやる、人とのつながりの大切さを問うていた。作品のように思った。
井上芳雄の素晴らしさを改めて実感。口跡が良く、声も通り、しっかりと歌詞が伝わってくる。音月桂も声量がすばらしかった。今回初めて観る大澄賢也も良かった。
そして何だかわからないけど、上白石萌音の情感たっぷりに歌い上げるその表現法に涙が込み上げそうになった。素晴らしい。
もう素晴らしいとしか言えない。特にエンディングでのパラモンと牢番の娘の仲睦まじい雰囲気が本当に本当に愛らしく、ついつい顔がほころぶ。逆にアーサイトとエミーリアは大人っぽく冷静沈着なムード。それもまた良しか。
トークタイムでは働き方改革の弊害とチケット代の高騰をうまく絡めて笑いに昇華していた。本当にもうS席が2万台が当たり前になるかもしれない(´;ω;`)
(観劇日20250807)
TOKYO GARDEN THEATER(東京ガーデンシアター) 0802~0810
ところで、ペンライトが公式販売されていて、曲によって色を違えて振る、という参加型イベント(?)があったのだが、これは本編からそうなのだろうか?(残念ながら本編は観たことがない)それならそれで面白い。
そうそう、コンサートらしくモニターが正面左右に設置されていて、カメラによってクローズアップされるのだけど、普通ならオペラグラスいらないじゃん!と喜ぶところだが、いや私が今見たいのはそれじゃない感が強くて、舞台って難しいなぁと思った。