大河への道 | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『大河への道』(2022)

原作は立川志の輔の著書。漫画版は柴崎侑弘

 

企画 中井貴一

監督 中西健二

脚本 森下佳子(『悪の教典』、『ごちそうさん』『べらぼう』『義母と娘のブルース』『天国と地獄』『天皇の料理番』『わたしを離さないで』『ファーストペンギン!』『だから私は推しました』他)

音楽 安川午朗(『あんのこと』『一度も合ってません』『半世界』『しゃべれどもしゃべれども』『君に届け』『八日目の蝉』『北のカナリアたち』『凶悪』『ストレイヤーズ・クロニクル』『残穢』『ちょっと今から仕事辞めてくる』『閉鎖病棟』『孤狼の血』シリーズ、他)

主題歌 玉置浩二「星路」

 

千葉県香取市役所で総務課主任を務める池本保治(中井貴一)は地元の偉人日本地図「大日本沿海輿地全図」を作った伊能忠敬に誇りを持っていた。ある日、なかなか成果の上げられない観光課の会議で思わず伊能忠敬を主人公にした大河ドラマを作ってはどうかと提案する。反応はイマイチだったものの、偶然にも知事(草刈正雄)も同じことを考えており、NHKに正式にプロットを持っていくべく、池本の指揮のもと大河ドラマ誘致が始まる。

まずは企画書を作るために、知事指定の脚本家加藤幸造(橋爪功)のところへ依頼に行くが、20年も書いてない加藤はなかなかうんと言わない。なんとか伊能忠敬の記念館まで連れ出すと、その日本地図の出来に触発され加藤は依頼を引き受けることに。さっそく池本とその部下木下浩章(松山ケンイチ)と共にシナリオハンティングに取りかかる。その過程で加藤は「大日本沿海輿地全図」が仕上がる3年前に死去していたことに気づく。ということは、地図は伊能忠敬が完成させたものではなかったのでは、という疑惑が持ち上がる。さらに加藤は、伊能忠敬の当初の目的だった子午線は出来上がっていたのにさらに測って地図までに仕上げたのはなぜなのかが気になり始める。

果たして、実際はどうだったのか…が、時代性と状況と伊能忠敬とその弟子たちとの関係性を読み解きつつフィクション織り交ぜ語られる。

そうして一通り伊能忠敬といえば「大日本沿海輿地全図」を作った人物として知れ渡っている謎を解くと、加藤は伊能忠敬を支え続け、遺志を継いで地図を完成させた弟子たち、それを立場を超えて庇い続けた高橋景保を主人公に脚本を書きたいと言い出す。しかし高橋景保は大阪出身…どうしても伊能忠敬でドラマを作りたい池本は、知事の承諾も得て自分が書くと加藤に弟子入りするのだった…。

 

安定感のある脚本で、小説を読むかのように物語が進む。あちらこちらに散らばった台詞が物語が進むにつれ意味を持ってくる。そのきれいな構成はさらっと見過ごしてしまいがちだが、気づくと唸らせられる。

脚本依頼を断る加藤の「加藤は死にました」という台詞は反意語でまま伊能忠敬に通じる。後半にいくにつれこの台詞が生きてくる。

役にしても、市役所の職員が伊能忠敬の弟子をそのままやったり、知事と徳川家斉、加藤と和尚が同一俳優だったり、その役目を現代とリンクさせている。とまあ、素晴らしい脚本だった。

 

地図を作る上で必要だった測量。数学が役立ってることに驚く。学校で教わるものに無駄なんてないと再認識する。学生時代にはこれがわからない。

 

伊能忠敬が居ること(生きていること)を地図とわらじで表すのは素敵だった。

 

★★★

 

 

 

 

制作 デスティニー

配給 松竹