ほつれる | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『ほつれる』(2023)

監督・脚本 加藤拓也(『わたしたちは大人』、『ドードーが落下する』他)

 

門脇麦、田村健太郎、染谷将太、黒木華、古舘寛治、安藤聖、佐藤ケイ、金子岳憲、秋元龍太朗、安川まり、他。

 

不倫から始まった文則(田村健太郎)との恋は結婚という形で成就したが、その後は前妻の息子ヒロムを度々預かるという面倒も多い。綿子(門脇麦)が相手をするわけではないが、都度の義母との関係も煩わしい。子供がいる分、前妻とは切っても切れない。離婚話こそ出はしないが、会話には棘もあり、文則との関係はギクシャクしていた。

そんな状況下、友人英梨(黒木華)を介して知り合った木村(染谷将太)と気が合い関係が始まる。木村にも長く付き合って結婚した妻依子(安藤聖)がいた。ダブル不倫だ。

交際が1年ほどたったある日、二人でグランピングに出かけた帰り、別れはな、木村が交通事故で亡くなってしまう…。

 

ダブル不倫という秘密の関係なだけに、綿子は初手を間違える。そのため木村の死を正面から受け入れられない綿子の心情が延々と描かれる。自責だ。

自分がどうしたいのかわからない綿子は、やり直しをしたい文則、不倫を知ってしまった木村の父哲也(古舘寛治)と依子と対峙し、ようやく一歩踏み出す。何気ない一言や話が、後から大きく効いてくる脚本。なかなかキツイ。特に木村が犬を嫌いな理由にはやられた。父子関係にまで及ぶとは。

 

加藤拓也監督はまだ30歳という若さなのに、問題に面した時の人間の心の機微を描くのがとてもうまい。芝居も口語調でナチュラル。表情にも大きな演技がない分、台詞一つ一つの意味が深い。そして感情の昂ぶりはヒリヒリするほどリアル。また、あてる台詞がうまい。のは、キャラクター設定がしっかりしてるからだろう。しかも「ああ、こういう人いる」という既視感がある。それは自分だったり友達の誰かだったりどこかで会った、見かけた人だったりするのだ。痛々しく醜く、臨場感を伴うからハラハラするしドキドキするし、自分だったらと共鳴もするし反発もする(だろう)。ごくごく一般的な人が抱く感情、内面の傾向を描いてる。

 

語彙力がなくてうまく言えないんだけど、つまりは面白かった。

 

★★★★★

 

 

 

 

男子を描いたらピカイチの松井大悟(愛おしい)、男の本音を描いたら面白い内山拓也(切ない)、そして人間の内心を描くのがうまい加藤拓也(痛い)。そんな感じ。

 

 

配給 ビターズエンド