正欲 | これ観た

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基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『正欲』(2023)

原作は朝井リョウの小説。

 

監督・編集 岸善幸(『あゝ、荒野』『前科者』他)

脚本 港岳彦(『あゝ、荒野』他)

音楽 岩代太郎(『かぞくのくに』『あゝ、荒野』『キネマの神様』『ヤクザと家族』『新聞記者』『ひらいて』『ヴィレッジ』『MOTHER』『前科者』他)

 

新垣結衣、磯村勇斗、稲垣吾郎、山田真歩、佐藤寛太、東野絢香、宇野祥平、渡辺大知、徳永えり、岩瀬亮、坂東希、山本浩司、他。

 

広島で実家住みの桐生夏月(新垣結衣)はモールの寝具売り場の販売員をしながらずっと生きにくさを感じている。夏月は「水」に異様に惹かれる。それは性的な悦びに通じる。中学時代、同じく水に惹かれる同級生佐々木佳道(磯村勇斗)と出会うが、佐々木は転校していってしまった。その佐々木が地元に帰ってきた。同級生の結婚披露宴で二人は再会し、互いに分かり合える存在と交友を深めることになる。そして二人はもっと自由に生きるために横浜で新生活を始める。

横浜に暮らす検事の寺井啓喜(稲垣吾郎)は小学生の息子が不登校となり、学校へ行かないという選択肢をめぐり妻由美(山田真歩)と子育てで対立をしている。世間的にまっとうな考えを持つ寺井と子供の気持ちを優先する由美の間の不和は加速していく。

トラウマから男性と接触するだけで過呼吸になり、まともに男性と話が出来ない大学生の神戸八重子(東野絢香)。学園祭実行委員として、ダンスサークルのトップに立つ諸橋大也(佐藤寛太)と知り合い、唯一、諸橋には恐怖心が湧かないことに気づく。どうにか繋がりを持ちたいと行動するが、諸橋は心を開かない。

その諸橋もまたほとばしる水飛沫に魅せられていた。その異常性に悩み、他人を近づけない。諸橋と佐々木、夏月は水を扱う動画サイトで互いの存在を認識していた。諸橋は、その昔、夏月らが中学生の頃、窃盗と建造物侵入の罪で捕まった異常性愛の持ち主藤原悟の名前「SATORU FUJIWARA」をハンドルネームにしていたため、夏月も佐々木もシンパシーを感じていた。

オフ会として佐々木、諸橋、そしてもう一人水フェチの谷田部陽平(岩瀬亮)とで、寺井の息子とその友達のチャンネル企画で子供らと水遊びを楽しむ。その動画が上がった頃、児童買春の事件がおこる…。

 

検察事務官の越川(宇野祥平)がひとり、全体を俯瞰して見てる役柄。おそらく私たち枠外の人間ではないかな。

いろんな問題が詰め込まれていた。Aセクとも言える他人に対して性別関係なく性欲がない人たち、代わりに何に性欲(もしくはそれに準ずるもの)を感じるか、小児性愛、性的暴力(おそらく)によるトラウマ(男性が怖い嫌なのに好きになってしまうという悩みはキツイ)、不登校からの小学生ユーチューバー、学校や勉強の意味、子育て、人間関係、信頼、等々、考えさせられるものだらけ。それら全てが一線上に繋がっていて、きれいな脚本だった。

 

寺井の気持ちも由美の気持ちも、神戸の気持ちも、同窓の言動も、夏月の職場の人間(徳永えり)の行動も、なんとなくわかるから見ていて複雑な気持ちになった。

 

「正欲」とはよくつけたなと感心。画一的な性欲というものはなく、個々別々の性欲があるということだろう。

他人にわかってもらえない特殊な性愛を持つだけに、世間一般の常識にかすりもせず、生きにくい。わかってくれる人が現れたらどんなにか嬉しいだろうし、生きていくために繋がりたい、大事にしたいと思うだろう。生物として正しい気がする。

誤認で捕まっている佐々木に夏月は「いなくならないから」という伝言を頼む。分かり合える存在以外に生きるに重要なものってあるだろうか。

 

新垣結衣がとても良かった。『リーガルハイ』でコメディもできるんだと思ったものの、以降その容姿に合った役柄しか見てこなかったので、今回のキャラクターはようやく一皮剥けたなという感じだった。長澤まさみのように今後を期待してしまう。

私の中で美人女優御三家が綾瀬はるか、長澤まさみ、新垣結衣。特に演技がうまいわけではないけど、存在感のある中堅女優って感じ。

 

稲垣吾郎も年齢もあってか、とても良かった。

 

★★★★★ 

 

 

 

 

制作 テレビマンユニオン

配給 ビターズ・エンド