もうひとつのことば | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『もうひとつのことば』(2022)

監督・脚本 堤真矢

 

菊地真琴、藤田晃輔、中山利一、連下浩隆、新井敬太、山田良介、澤麻衣子、小高えいぎ、前田薫平、藤岡有沙、他。

 

2020年のコロナ禍の夏。ワンコイン英会話カフェで出会った翻訳の仕事をしているミキ(菊地真琴)とハリウッド俳優を夢みる健二(藤田晃輔)。意気投合したかに見えたが、ミキは深入りを避ける。ミキの経歴は嘘だった。けれどそこから二人は別人になって英会話カフェに参加する遊びを思いつく。インプロ(即興芝居)だ。英語で話すことは嘘、日本語で話すことは本当、そして互いの人生に立ち入らない、という縛りを設けて。遊びは意外に楽しく、二人の距離も縮まるかのようだったが…。

 

普通に恋の話かと思ったら、然に非ず。ミキの描いていた近い将来、健二の夢はコロナによって頓挫し悶々としていたところでの出会い。向かい合うべき現実からの逃避だった。ラストを見ても、二人の関係は先に進まないだろうなと思う。それが現実的だし潔く、いい。

 

二人はもちろん、英会話カフェで出会う人らの話す内容(台詞)には監督自身の思いが込められているようで、例えば通訳観光ガイド山田(中山利一)が文句を言うコロナ対策の不備、塾講師祐樹(連下浩隆)の乾杯の音頭、それが自然に組み入れられてるところ、うまいなと思った。ミキが彼氏(新井敬太)と自分の立場を逆転して内省するところとか、見過ごしてしまうけど、物語が進むと「あ!」と振り返る仕掛けもある。

英語と日本語の嘘と本当の見極めの楽しさもある。男女間のかけひきでもあるからなお。

他にも、人類嫌いの青年とか、闊達な女性とか、頼りない流されがちの祐樹の職業が塾講師というのはきっと嘘で(あって欲しい)、ミキと健二と同じく人生が停滞している、それがコロナのせいかどうかはわからないけど、そういう誰もが心当たるキャラクターが嫌味なくいるのが良かった。

 

もうひとつ、と言わず、もっとたくさんのことばがあるように思えた。

 

★★★★

 

 

 

配給 Tick Tack Movie