すばらしき世界 | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『すばらしき世界』(2021)

原案は佐木隆三の著書「身分帳」。

 

脚本・監督 西川美和(『ゆれる』『永い言い訳』他)

原案監修 小先隆三(佐木隆三の別名)

 

役所広司、仲野太賀、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美、白鳥玉季、康すおん(かんすおん)、井上肇、山田真歩、マキタスポーツ、三浦透子、田村健太郎、桜木梨奈、松澤匠、松浦慎一郎、沖原一生、まりゑ、松角洋平、松岡依都美(まつおかいずみ)、奥野瑛太、松浦祐也、近藤洋子、田中一平、髙橋周平、小池澄子、安楽将士(あんらくまさし)、他。

 

三上正夫(役所広司)は福岡県出身で児童養護施設育ち。唯一の身内母親は迎えに来ると言ってついに来ることなく、三上は施設を出るとヤクザの世話になったりチンピラ同様の人生を送ってきた。そうして人生の大半を刑務所で過ごし、最終的に殺人罪による13年の服役を終え刑務所を出る。母親に会いたくて服役中にテレビ番組に「身分帳」なる刑務所の身上書を送り、母親探しを願い出る。面白いネタだと思ったやり手のテレビマン吉澤(長澤まさみ)は、小説家に転向しようとしてるかつての部下津乃田(仲野太賀)をつかまえ、取材を開始する。

一方で、三上は高血圧からの心臓疾患を抱えており、生活保護を受けることを余儀なくされる。本当は働きたい、その意欲から就職活動を始めるも運転免許も失効してるのでなかなか見つからない。しかも優しさが転じてカッとしやすい性格も災いする。そんな状況下、弁護士の身元引受人庄司(橋爪功)とその妻(梶芽衣子)、行きつけのスーパーのオーナー松本(六角精児)、区役所の生活保護課職員井口(北村有起哉)が親身に手助けをする。また、昔馴染みのヤクザ下稲葉夫婦(白竜、キムラ緑子)の優しさと厳しい現状、13年の服役となった大元当時の恋人久美子(安田成美)との思い出、物書きとしての津乃田との触れ合い、そして勤められることになった介護施設で社会の縮図を経験し、徐々にこの社会で生きていくということに向き合う処世術を学び変化していく…。

 

三上の出所後の生き方を、それまでの人生をなぞりながら津乃田の視線で描いたような作品。

 

母親にも会えそうになるが、まあ、年齢的に生きてる可能性は低いだろうし、会えなくても不思議はないし、逆に会えたらお約束すぎるなと思った。その時々の三上を演じる役所広司の母親を想う言葉にできない心情表現、素晴らしかった。映像作品ならでは。

また、性格の成り立ちが語られるセリフがあり、一般論だが説得力があった。遺伝含む資質と環境、どの程度の割合かわからないけど、育ちは充分影響すると思うから。

 

周りの人間たちが三上のまっすぐな面を良い方へとらえ軌道修正していくのがあたたかみがあって良かった。免許センターの職員(山田真歩)でさえわずかな会話の中で親身になっていっていた。捨てたもんじゃないぞ世の中は、と思わせる。

 

それにしても処世術は厳しい。ふだん何気なくやっていることを映像で見せられると恥ずかしくもなる(特に介護施設のシーン)。でも、そうして作られているのがこの社会なのだ。

 

ラスト、仲野太賀の泣きのシーン、迫真の演技、素晴らしかった。何がどうなのか津乃田の収拾つかない感情がよく出ていて心揺るがされた。コスモスを握った三上の手のアップも、顔、姿を映すベタな演出よりはるかにリアリティがあった。

 

梶芽衣子の歌が聴けるのは珠玉。

 

★★★★★

 

 

 

 

制作 AOI Pro.

配給 ワーナー・ブラザース映画

 

 

 

白竜はミュージシャンの時代を知って(聴いてた)るので、こうして役者業を主体的にやってるのが不思議。しかもヤクザがほとんどで。