ゴジラ−1.0 | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『ゴジラ−1.0』(2023)

ゴジラ生誕70周年記念。英題は『GODZILLA MINUS ONE』

監督・脚本・VFX 山崎貴(『永遠の0』『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、他)

音楽 佐藤直紀

 

神木隆之介、浜辺美波、安藤サクラ、青木崇高、佐々木蔵之介、吉岡秀隆、田中美央、水橋研二、平原テツ、永谷咲笑(ながたにさえ)、遠藤雄弥、飯田基祐、阿南健治、須田邦裕、谷口翔太、美濃川陽介、日下部千太郎、伊藤亜斗武、他。

 

とにかく面白かった。日本映画らしいウェットさもあり、もちろん細かく言えばあと10分あれば…とも思う箇所はあったが、最高のエンタメ作品だった。だいたい英題表記が「-1.0」ではなく「MINUS ONE」だなんて世界へ向けての邦画の誇りを感じる。そしてあのアートワーク。かっこいい。




 

1945年、第二次世界大戦末期、特攻として飛び立った敷島浩一(神木隆之介)だったが、おじけづき零戦機が故障したと海軍守備隊基地大戸島に緊急着陸する。しかし整備兵橘宗作(青木崇高)らに嘘を見破られる。そしてその夜、島の人間たちが「ゴジラ」と呼び恐れている伝説の怪獣が出現する。橘に零戦に装備されてる機銃砲でゴジラを撃つよう頼まれるが、その大きさと攻撃力に恐怖で身動きがとれなかった。気がつくと自分と橘以外は全員死亡していた。

橘に言われるまでもなく、自分が行動できなかったばかりに多くの兵の命がなくなったと、戦争だけでなくゴジラにも対峙できなかった呵責に苛まれながら迎えた終戦、東京の実家へ帰りつくと、空襲によってあたりいっぺん変わり果てていた。隣家の太田澄子(安藤サクラ)からは生きて帰ってきたことをなじられる。澄子の子供らも、敷島の両親も亡くなっていた。

闇市に出かけた敷島は、そこで他人の赤ん坊を任された同じく両親を失い天涯孤独となった大石典子(浜辺美波)と出会い、かろうじて雨風しのげる自宅に居つかれる。澄子の協力も得て、典子と赤ん坊明子との共同生活が始まる。その生活のために敷島は米軍が落とした海中の機雷撤去作業の仕事につく。そこで「新生丸」艇長秋津清治(佐々木蔵之介)、元技術者野田健治(吉岡秀隆)、秋津がかわいがっている乗組員水島四郎(山田裕貴)と出会い、意気投合していく。やがて典子との間にも特別な気持ちが芽生え絆もでき、秋津らにも囃されるが、特攻としての自分はもとより大戸島での体験が深く心の傷となっていて結婚までは踏み切れずにいた。

1946年、米国による核実験によって眠りについていたゴジラに異変が起こる。放射線によって再生、巨大化したのだ。

翌年には米艇が謎の巨大生物によって破壊される事件が多発する。この頃になると典子は銀座で職を見つけ、日中二人が仕事でいない時は澄子が明子(永谷咲笑)の面倒をみているという家族のような近所付き合いが確立されていた。そしてその謎の巨大生物が日本へと向かっていることが判明する。巡洋船「高雄」が到着するまで「新生丸」が足止めするよう極秘司令が出るが、敷島らはかろうじて助かったものの「高雄」はいとも簡単に沈められる。巨大生物は大戸島で見て以来、敷島を夢でうなされるほど恐怖のどん底へ追いやってるゴジラだった。

ついにゴジラは本土に上陸し、銀座へと向かったと聞いた敷島は典子のもとへ急ぐ。ようやく落ち合えたかと思った矢先、ゴジラの吐く熱線による爆風で典子は飛ばされ消息不明となる。

典子が生きている可能性はゼロ。米国とソ連がきな臭いうえ、米占領下にある日本は表立って軍事行動には出られないため、民間単位でゴジラ駆逐作戦を立てることになる。敷島は今度こそ自分の中の戦争終結とゴジラへの復讐のため行動することを決意する。それは野田発案、秋津や有志の元海軍兵らによる「海神作戦」。更に敷島は、完全を期する意味でも橘を探し出し特攻をかけるための協力を願い出る…。

 

敷島が普通に弱さを持った人間であり、戦争と死への恐怖が当たり前にあり、そのために自責の念に駆られ、自己嫌悪に陥る流れがわかりやすく、ヒューマンドラマのようだった。

 

神木隆之介と浜辺美波のコンビは朝ドラ『らんまん』で息のあった夫婦を演じられていて、この作品でもなるべくしてなる自然な感じだった。そうした感情を含む部分はこの作品では描く余裕がないだろうしフォーカスするところでもない。なのに自然に見えたということは、二人の中での時間経過表現が成されていたということだ。そして神木隆之介演じる特攻隊員の恐怖と苦悩の表現もみごとだった。他の演者もしっかりそのキャラクターの人生を歩んでる感じがして、それは逃げ惑うモブ(エキストラ)にも言えて、作品の中から外れない。一人の作家が描いた劇画を見てるようで素晴らしかった。

ゴジラのテーマ曲、挿入曲の盛り上げ方も素晴らしく、2時間弱の作品で、まさに手に汗握る状態だったり、胸を締め付けられるような涙を誘われた。怪獣映画で緊張と感涙とは…(^^;;

なにより、ゴジラの存在が怖かった。

 

★★★★★

 

 

 

 

VFXプロダクション 白組

制作 TOHOスタジオ、ROBOT

配給 東宝

 

 

 

佐藤直紀の音楽が良すぎて、サウンドトラックが欲しくなった。ゴジラは、うん十年前のレコード時代、トリビュートアルバム「ゴジラ伝説」を買ってるのだった(これは参加ミュージシャンが好きだったので)。伊福部昭最高だ。

 

 



 

ネタバレ。

ラスト、典子と再会できるのだが、死んで不思議ではない状況のわりには傷が浅い。典子の首筋には何やら蠢くもの。再生能力が高いゴジラの細胞だろう。典子にあればその他、ゴジラに吹き飛ばされた人々の中にも複数いるかもしれない。海中では再びゴジラの再生が起こっている。次回作があってもいいし、無ければ過去作につながるだけだ。これが「−1.0」かと感心。