『バレエ:未来への扉』(2020)
原題は『Yer Ballet』
Netflix映画 インド映画
監督 スーニー・ターラープルワーラー
実話を元にした映画で、ニシュを演じたマニッシュ・チャウハンは自身の役をやったことになるとのこと。確かに、肉体に恵まれ素質があるとされたアシフより上手かった。体幹が違う。アシフ役のアチンティア・ボースもバレエの基礎はあるけど特訓しての演技だったそう。
ラストには二人のその後もあった。マニッシュ・チャウハンはオレゴンバレエシアタースクールを終了し国際的ダンスカンパニーへ加入予定、アシフことアミルッディン・シャーは2017年奨学金を獲得してロイヤルバレエスクールへ。サウル先生ことイェフダ・メーターはムンバイで変わらずバレエを教えているそうだ。
貧困層でありスラム街に住むアシフ(アチンティア・ボース)とニシュ(マニッシュ・チャウハン)は「ムンバイ・ダンスアカデミー」で知り合い、共にアメリカから来たバレエ教師サウル(ジュリアン・サンズ)にみそめられ、共同生活をしながらバレエ留学を目指す。
アシフはブレイクダンスやヒップホップを仲間たちと楽しむストリートダンサー。収入源はやばい仕事だ。宗教観の違いでアシフ一家と叔父とは話が合わないし、ダンスで飯が食えるなど思ってもいない。でも、アシフの才能をみて兄はある日、無料でレッスンが受けられるとムンバイダンスアカデミーに連れて行く。サウルに特別扱いされようが適当にやっていたアシフだったが、大切な仲間が仕事で命を落とし、本気でダンスと向き合い、この底辺人生からの脱却を考え始める。
ニシュはスラム街に住むが、稼ぎ頭として将来を期待され大学生となった。テレビのダンス番組で特別賞をもらい、ムンバイダンスアカデミーに誘われるが、父親はタクシー運転手、妹は病気で薬が必要という極貧でシューズさえ買えない。レッスン料など工面できないが、こっそり教科書代をレッスン料にあてがい通い始める。サウルに認められたのにやる気のないアシフを見て悔しさからバレエに専念する。同じレッスンを受ける富裕層のニナの協力もあり、実力をつけていく。ようやくアシフの面倒見係として、サウルのもとで同居生活するチャンスを得る。徐々に頭角を表し始める。
サウルはイスラエル出身で、やはり恵まれない環境から実力と努力で日の目を見た人。ただ、求められなくなった=才能の枯渇という事情の持ち主。終わった自分に何が出来るかを模索していたのかもしれない。みごと二人のダンサーを開花させる。
ニューヨークの名門校のサマープログラムに奨学金を得て参加できることになるが、ビザがおりない。お金がないということ、階層があるということはそういうことなのかと思い知るところだ。そうした貧富の差も描かれる。夢を追うより生活をすることの方が大切という世界で生きる二人に、自分を信じること才能を磨くことを教え、希望を持たせるのはまさに夢物語。同時に才能の限界を知り、それ以上を望めない諦めの境地に立たされる子も描かれてる。そして宗教間の対立も描かれている。ほのかな恋の予感もある。盛りだくさんだ。
結局サマープログラムではなく留学のチャンスを得る。問題はビザだが、ダンスアカデミーの定期発表会にアメリカ総領事が見学にくる。そこで強く印象づけられればと、突如二人だけの演目をはさむことになり、みごと成功する。夢物語と言ったが、才能があり、それを開花させる出会いがあり、運命という縁があれば現実になる、というサクセスストーリー。だった。
さすがインド映画でミュージカル味もある。
起承転結しっかりしてて楽しめたけど、先が読めるので驚きがない。
バレエ映画なので、できる人を起用したのは良かった。
★★★(★)