『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』(2023)帝国劇場
Moulin Rouge! The Musical
2001年バズ・ラーマン監督によってミュージカル映画が作られ、2018年アメリカBWでミュージカル舞台化(脚本ジョン・ローガン)、2023年今回初の日本公演とのこと。
日本語版台本 瀬戸山美咲
訳詞 松任谷由実、いしわたり淳治、UA、岡嶋かな多、オカモトショウ(OKAMOTOʻS)、栗原暁(Jazzinʼpark)、KREVA、サーヤ(ラランド)、ジェーン・スー、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)、Daoko、TAX(MONKEY MAJIK)、浪岡真太郎(Penthouse)、ヒャダイン、松尾潔、宮本亞門、Mayu Wakisaka
サティーン:平原綾香、望海風斗
クリスチャン:井上芳雄、甲斐翔真
ジドラー:橋本さとし、松村雄基
ロートレック:上川一哉、上野哲也
デューク:伊礼彼方、K
サンティアゴ:中井智彦、中河内雅貴
ニニ:藤森蓮華、加賀楓
(以上ダブルキャスト)
菅谷真理恵(ショコラ)、鈴木瑛美子(ショコラ)、磯部杏莉(アラビア)、MARIA-E(アラビア)、大音智海(ベイビードール)、シュート・チェン(ベイビードール)、ICHI、乾直樹、加島茜、加藤さや香、加藤翔多郎、酒井航、杉原由梨乃、仙名立宗(せんなたつのり)、髙橋伊久磨、田川景一、田口恵那、富田亜希、平井琴望(ひらいことみ)、三岳慎之助、宮河愛一郎
(以上アンサンブル)
篠本りの、米島史子、和田真依、茶谷健太、堀田健斗、ロビンソン春輝
(以上スウィング)
1899年オープンのパリはモンマルトルの丘にある赤い風車が目印のキャバレー「ムーラン・ルージュ」。フレンチ・カンカン始め魅惑的なダンス、イリュージョンショー、歌など、そのステージは多くのファンをつけた。しかしこのとこ経営はうまくいっておらず、少しずつスタッフの首を切ってる始末。そこでオーナーのハロルド・ジドラー(橋本さとし)は一番人気のサティーン(平原綾香)にスポンサーを付けて立て直そうと考える。サティーンのパトロン候補となったのは貴族のモンロス侯爵のデューク(K)。
デュークは金で買えないものなどないという考えの持ち主。貧困にあえぐ不幸な過去を過ごしてきたサティーンも異論はない。ジドラーがいよいよ二人を引き合わせようとした日、ちょっとした手違いから、サティーンはソングライターを志す青年クリスチャン(井上芳雄)と出会い、二人は恋に落ちる。
クリスチャンはアメリカからボヘミアンに憧れてフランスにやってきたそこそこ恵まれた環境に育った。モンマルトルに着くなり、劇作家(ここでは画家ではない?)のロートレック(上川一哉)、タンゴダンサーのサンティアゴ(中河内雅貴)と出会い意気投合。それぞれの才能を開花させる友人関係となる。その日もロートレックイチオシの旧知の仲になるサティーンを観に「ムーラン・ルージュ」へ三人でやって来ていた。
実はサティーンはクリスチャンをお目当てのデュークだと思い込んでいたし、クリスチャンはサティーンに一目惚れ。けれどジドラーによって人違いだとわかったサティーンは想いを断ち切ろうとし、クリスチャンは真っ直ぐな愛を向けつつも、チャンスとばかり友人らと「ムーラン・ルージュ」の危機を救うていで新作レヴューをプレゼンする。話がこんがらがっていると察したジドラーはなんとか軌道修正するため、三人の企画を受け入れ、同時にサティーンを引き換えにデュークの「ムーラン・ルージュ」への出資を取り付ける。
けれど、サティーンとクリスチャンの前には、その関係に嫉妬心を拭えないデュークが立ちはだかる上、サティーンは結核に侵されていた…。
ジュークボックスミュージカルという、既存の楽曲を使用した本作には、2001年の映画だけあり、ビルボードに乗るような有名なヒット曲が使われている。その中でもサティーンとクリスチャンの想いを表すエルトン・ジョンの「Your Song」が、松任谷由実の訳詞で情感に訴えてくる。「なんて素晴らしい、君のいる世界」という歌詞に心をギュッとつかまれる。もちろん、平原綾香、井上芳雄のあの歌唱あってこそだ。
『ムーラン・ルージュ』はサティーンとクリスチャンのラブストーリーだけども、サンティアゴとレヴューキャストのニニ(加賀楓)の恋や、ロートレックのほのかな恋心も描かれ、19世紀末のパリの文化、世情も感じられる。きらびやかなレヴューを舞台としてるので、距離が近く、参加しているような気になってくる。なにしろジドラー始め、レヴューに出るダンサー、シンガーが客席を煽ってくるし、笑わせてくるし、開幕(いや、幕はないけど)前からすでにステージングは始まっているのだ。そしてアンコールまでがセットで、最後には銀テが飛ぶ。演劇なのかコンサートなのかナイトクラブのレヴューなのか、いやミュージカルだろうこれは…とかなんとか、なんとも不思議な世界に連れて行かれた。
素晴らしかった。
井上芳雄は『プロデューサーズ』以来だったので、クリスチャンの青臭いような坊ちゃん坊ちゃんした好青年ぶりに感嘆した。声音まで違って聞こえ、老若こんなに使い分けできるなんて…と驚いた。ミュージカル俳優なんだから当たり前と言われればそれまでなのだが、とても魅力的だった。
また、平原綾香の伸びやかな歌声とぴったりの相性を感じた。平原綾香の声音も仕草も間合いも素晴らしい。映画を観ているようだった。
シュート・チェンは『キンキーブーツ』でエンジェルスにいた人…ここでもベイビードール…と見つけた時は心踊った。この日は出ていなかったけど。
(観劇日20230718)
20230624~0831