『サンクチュアリ 聖域』(2023)
Netflixオリジナルドラマ 全8話
監督 江口カン(『ザ・ファブル』シリーズ、他)
脚本 金沢知樹(『サバカン』他)
一ノ瀬ワタル、染谷将太、忽那汐里、ピエール瀧、余貴美子、金子大地、小雪、岸谷五朗、澤田真澄、石川修平、仙道敦子、笹野高史、きたろう、佳久創、住洋樹、寺本莉緒、毎熊克哉、田口トモロヲ、松尾スズキ、中尾彬、おむすび、小林圭、菊池宇晃(きくちたかあき)、めっちゃ、義江和也、他。
福岡は北九州市門司(もじ)区出身の小瀬清/四股名は猿桜=えんおう(一ノ瀬ワタル)は柔道をやっていたこともあり、喧嘩も強く格闘技向きの体をしている。実家は昔寿司屋をやっていたが、借金が膨らみ家庭崩壊。清は足を悪くした父親(きたろう)と二人暮らしになり、身を崩した母親(余貴美子)は金の無心をよくしてくる。そんな母親を軽蔑し、警備員として働く父親の情けなさに苛つきながらも清は密かに父の店を買い戻すために金を貯めようとしていた。そんなおり、猿将(えんしょう)部屋の猿将親方(ピエール瀧)にスカウトされ、力士なら億を稼げると上京することになった。
最初は驕り昂り先輩らにも悪態をつき、最低限の社会的マナーや角界のしきたりなんか一切無視、腕っぷしに自信があるからなお練習もテキトーで、初場所でも問題を起こす。でも、相撲が好きで力士になるのが夢だったが体も小さく才能に恵まれず断念した清水(染谷将太)や、膝の故障で相撲を諦めなければならなくなった猿谷=えんや(澤田真澄)、他部屋だが偶然知り合った顔にケロイドのあることもあって「化け物のような強さ」と言われてる静内=しずうち(住洋樹)らに触発され、少しずつ相撲の世界を学んでいく。
また、ホステスの七海(寺本莉緒)と知り合い友達以上恋人未満になったり、派手な遊びをする青年実業家村田(金子大地)にタニマチを申し出され、いいように使われたり、角界の闇に巻き込まれたりと清が人間として成長していく出来事が起こる(角界追放の危機にあった時、母親が入れる喝が愛情そのもので良かった)。そして静内との一戦で清は再起不能になるかと案じられる敗退をし、清が本格的に「猿桜」として相撲に生きるきっかけを生む。
清の成長と共に描かれているのが、帰国子女ならではの感覚と今どき女子の鼻っぱしらの強さで政治班から異動になってしまった新聞社に勤める記者国嶋飛鳥(忽那汐里)の変化で、直属の上司になる時津(田口トモロヲ)に相撲の記事を書くことを言い渡されるが、すぐに政治班に戻ってやると思っているため、最初は不満タラタラで取材先の猿将部屋はもちろん、関係者にも高飛車な態度を取っていた。が、清の面白さに惹かれ、相撲に夢中になる。夢中になるほどに、記者としての礼も身について行く。
他に、清と二度当たることになる静内の過去や、注目力士である龍谷(りゅうこく)部屋龍谷親方(岸谷五朗)の息子龍貴(佳久創)の苦悩、龍谷と妻弥生(仙道敦子)、タニマチ伊東(笹野高史)との関係などのエピソードがある。
面白かった。なにより、相撲が概要であれ、知れる。まったく興味なかったけど番付くらいは覚えた。→【下から:序ノ口<序二段<三段目<幕下<幕内(十両<前頭<小結<関脇<大関<横綱)/幕下までを「若者」、幕内を「関取」】
何かと古い体質を批判されるが、もちろん改善すべきこともあろうが、古臭いしきたりにも意味があり、土俵は神聖な場所であることも描かれていてなるほどと思ったし、一概に「今どき」の流れに合わせることはないのだと思った。
猿将部屋女将さん花(小雪)と龍谷親方の関係がわからないままであること、その花の父親が日本大相撲協会理事長の熊田(中尾彬)であることの具体的利点、期待される龍貴のこれからも描かれていないこと、一度は壊れたかに見えた七海との関係も匂わせで終わってること、何より猿桜・静内戦の勝敗と、清の目標横綱までの道程が三段目で終わってることなど、シーズン2も有りかなと思わせる。逆にこれで終わりでもいいラストではあった。どうだろうか?
コミカルで笑いを誘うところもあるし、熱くなったり泣かせる場面もある、闇もある(特にフリーライター安井(毎熊克哉)の片付け方は怖かったw)、ドラマでありながら映画の余韻を残すとてもいい作品だった。
父親が事故で寝たきりにかるのだが、そのきたろうの演技が素晴らしかった。素晴らしいのは染谷将太もで、キャラをしっかり作り込んでいて役者の幅を見せられた。あと、余貴美子、あばずれ感が本当にすごい。それから金子大地、違和感がひとつもなくうまい。うますぎる。岸谷五朗だけが残念だった。
★★★★★