心と体と | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『心と体と』(2017)

原題はハンガリー語で『Testről és lélekről』(≒On Body and Soul)ほぼ原題通りのタイトルになる

ハンガリーの映画。

 

監督・脚本 イルディゴー・エニェディ

 

牛を扱う食肉工場。産休を取った品質検査官の代わりに派遣されたマーリア(アレクサンドラ・ボルベーイ)は記憶力に秀でた自閉症。他人とコミュニケーションが出来ないため、同僚からは遠巻きにされ影で軽口も叩かれている。そんなマーリアを、左腕が不自由だし部長職だし一歩引いて従業員を見ているエンドレ(ゲーザ・モルチャーニ)はなんとなく気になり始める。しかし会話を試そうも、うまくいかない。若いマーリアに対し、エンドレは離婚経験もある中年という引け目もある。

ある日工場内で動物用の薬品がなくなる事件が起き、警察が入る。仕事内容から定期的にメンタルヘルス健診をしているが、この機に犯人をやんわり炙り出すためにも全工員医者による面談をやろうということになる。すると、エンドレとマーリアが同じ夢を見ていたことが判明する。二人はそれぞれ鹿の雄と雌とで夢の中で会っているのだ。

そのことを知った二人は意識し始め、エンドレはなんやかや言い訳しつつも携帯番号を教える積極性が出てくるし、マーリアは会話のシミュレーションをし、他人に触れられることの恐怖心も克服する努力を積む。けれど結局エンドレの不器用さ、自信のなさから、マーリアの予想通りの展開にならない上、人の複雑な感情を知ったマーリアは整理できず絶望感だけが膨らんでしまう。夢の中ではとうにうまくいっている二人なのに…。

 

食肉工場なので牛を生きているところからしめて捌いていくまでのシーンはしんどかったが、話はとても良かった。

工場に新規に入ってくる従業員シャーンドル(エルヴィン・ナジ)に、動物に対して思うことはないか聞くところがある。特にないと答えると、エンドレは哀れみを感じない奴は続かないと言う。なるほどだった。そこから折り合いをつけていってやっと仕事と向き合える、上っ面だけじゃ無理、それだけ厳しい業務だということだ。

 

工員たちの下衆っぽさも味があった。それだけにマーリアの孤高さが際立ち、同時に不自由さも見える。なんとも言い難い気持ちだ。

 

夢の中の動物が鹿である意味がわからないのだけど、草食なところがいいのかな。食肉にも使われるし。それとも何か象徴的な意味があるんだろうか。神聖なものであるとか。

ネタバレになるが、二人はとりあえずうまくいく。そして結ばれたその日、鹿である夢は見なかった。心と体が一体化したということなんだろう。

 

★★★★★

 

 

全然関係ないけど牡鹿のツノは立派で、毎年春に生え変わるらしいのだけど、1年かけて育ったツノで頭重くならないのか気になってしまう。

 

 

 

 

公式サイト