『RENT』(2023)シアタークリエ
1996年オフブロードウェイ初演からブロードウェイへと移ったミュージカル。2006年には映画化。日本上演7回目とのこと。
脚本・音楽・作詞 ジョナサン・ラーソン
演出 マイケル・グライフ
振付 ラリー・ケイグィン
日本版リステージ アンディ・セニョールJr
訳詞 吉元由美
舞台監督 本田和男
製作 東宝
マーク=花村想太、平間壮一
ロジャー=古屋敬多、甲斐翔真
コリンズ=加藤潤一、SUNHEE
ミミ=遥海、八木アリサ
エンジェル=RIOSKE、百名ヒロキ
モーリーン=佐竹莉奈、鈴木瑛美子
(↑以上ダブルキャスト↑)
ベニー=吉田広大
ジョアンヌ=塚本直
チャンへ、長谷川開、小熊綸、Zinee、吉田華奈、ロビンソン春輝、他
1991年ニューヨークはイーストヴィレッジ。映像作家を目指すマーク(花村想太)は元ロックバンドのボーカルロジャー(甲斐翔真)と古いロフト(アパート)で共同生活。そこには夢と愛を求める多種多様な人間が暮らしているが、みんな家賃を滞納している。以前はマークらと同じロフト暮らしだったが、富豪の娘と結婚して今はマークらの住むこのビルのオーナーとなったベニー(吉田広大)は当然家賃取り立てに来るし、クリスマス・イブ、とうとう追い出しにかかり、暴動へと発展する。
マークはパフォーマンスアーティストのモーリーン(佐竹莉奈)にふられたばかり。そのモーリーンはバイ・セクシャルで、ハーバード大学出身の弁護士レズビアンのジョアンヌ(塚本直)と交際を始めた。
恋人をエイズで亡くした(自殺)ロジャーは気落ちしたまま、自分もHIV感染者とわかり、命のあるうちに1曲納得のいく歌が作りたいと思うがままならない。そんなロジャーの前に同じロフトに住むSMクラブのダンサーミミ(八木アリサ)が現れ、二人は恋に落ちる。ミミもまたHIV陽性者だったし、何よりドラッグがやめられなかった。そのミミは前にベニーと付き合っていて、ベニーはいまだにミミに執着していた。
コンピューターに詳しいコリンズ(SUNHEE)は暴漢に襲われたところをストリートドラマーでありドラァグクイーンのエンジェル(百名ヒロキ)に助けられ、二人は恋人同士に。でも二人ともHIV陽性者。
その日暮らしのような、でも夢だってある、愛だってわかる、恋人との別れ、再燃、大事なものはなんなのか、悩み、葛藤する彼らの1年後までを描く群像劇。ロックミュージカル。
ラストは一つの奇跡で、これから先の何もかもがパッと明るくなったように感じさせられた。実際はそう簡単なことじゃないにしても。
明日ではなく今日、今日を生きるんだというような台詞はわかってはいても、だからこそ、グサリと来たし、「No day,But Today」はジワリとする。「Seasons Of Love」は時間の重さを感じて切なくなる。とらえようなんだけど、気分が落ちてる時に観るとズキズキくるのかも。
エンジェルの死は泣ける。
花村想太、やっぱり声がいい。歌ってないのに歌っているかのような、感情が乗りやすい声質。本業はダンスボーカルグループDa-iCEの歌手だけど、ミュージカルをもっともっと観たい。このマークという役柄は傍観者的立ち位置なのでキャラクターとしての面白みはなかったけど、周りが高身長だからそれだけでも特徴づけられてたし、身体能力高いし歌唱は確かだし良かった。
甲斐翔真、話に聞いていた通りうまかった。ジョアンヌの塚本直も良かった。口跡が良く声が通る。
そしてアンサンブルの吉田華奈が最高に良かった。歌、素晴らしかった。耳に残るし心に入る。
満席。
でもなんだろう、全体的にイマイチ何かが足りない気がした。初見で言うのもなんだけど。
平間壮一もいつか観てみたい。
ヒッピーカルチャーの後、ネオボヘミアンカルチャーなんてのがあったの、知らなかった。
セクシャルマイノリティとジャンキーとホームレス、貧困が描かれているんだけど、日本でも昔からそんなような界隈はあった。今ならトー横キッズとか言われてる子たち、今はどうだか知らないけど川崎以外の地域環境を知らない子たち、古くは政治思想に傾倒した若者たち。今でも、ロジャー、ミミ、エンジェルみたいな生活をしてる人はいるだろう。
自分の生活圏内、半径3キロくらいまでがこの世界の全てだと思いがちだけど、この世に生きる人間はいくつかの層に分かれて住んでいて、悲しいかな、その層からめったにはみ出ることはない。だからカルチャーの変遷も知らない。とかなんとか考えた。
(観劇日20230322)
東京:シアタークリエ 0308~0402
大阪:新歌舞伎座 0407~0409
愛知:愛知県芸術劇場大ホール 0412~0413
1991年より前だったけど、私もニューヨーク旅行してた。夜は歩いちゃダメなんて言われていても意外に平気で、治安が安定し始めていた時。3回行って、それぞれ目的がセントラルパーク周辺にあったダンススタジオ、ニューオリンズのデキシーランドジャズ、留学してる友達を訪ねることだったから、イーストヴィレッジは興味なかった。それになんだかんだTOKYOカルチャーの方が面白かった。
時流って面白くて、一番行きたかった70年代後半のロンドン、お金を自由に出来ない子供では行けないまま興味を失っていった。あの時、大人だったら、自由に行けていたら、モードなイーストヴィレッジにも興味を持って追っていたかもしれない。そしたら今ミュージカル観てないか。