『あかり』(製作2011)
ndjc(New Directions in Japanese Cinema)
文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトの作品
監督・脚本 谷本佳織
東京で近く結婚する環(七海薫子)には知的障害のある二十歳の妹あかり(古谷ちさ)がいる。あかりは今、ひまわり園という施設に入所していて、終末だけ家で過ごす。結婚式の準備のために関西の実家に帰省した環は久しぶりにあかりと買い物に出かける。
ショッピングモールへ行くバスの中からもうあかりは全開で最初こそ奇異な目で見られていたものの、その天真爛漫なところ、環の気の利いたフォローのおかげで、乗客らはやがて微笑ましい表情に変わる。けれどショッピングモールで無遠慮で理解が及ばないあかりの言葉に環はついイラッとしてしまい、あかりを見失ってしまう。すぐに思い直して探すがなかなか見つからない。ようやく見つけたと思ったら、環にナンパしてきた男と一緒だった…。
二十歳だけどまだ大人と認めてもらえない。それがあかりに通じているのかいないのか、あかりだってウエデイングドレスを着たいし大人しか行けないと言われたお城にも行きたい。あかりをナンパしてきた淳平くんはあかりの話を聞いてくれるあかりにとってはいい人で、好意の感情も湧いてくる。結婚すればこれまで以上にあかりとは会えないかもしれない、そんな思いが環にもあったのかもしれない、あかりの願いをひとつでも多く叶えてやろうという気になる。おかげで、たった数時間であかりはたくさんのことを思い、知ったんだな、今日も楽しかったね、こうした小さい出来事の繰り返しが人生なんだね、と思わせる作品だった。
関西弁で返しもうまく、そういう点で会話が面白い。
残念だったのが、バスの中のトラブルも難なくこなしてきた環なのに、ウエディングドレスを買ってとか着たいとか言ってくるあかりに今さら不機嫌になる理由が伝わって来なかった。バスの中〜ショッピング中で、そうなるべく積み重なる負の感情が見えなかった。一番重要なとこなのに。
あと、あかりを美化しすぎとも思うけど、それはまあこの作品にはいらない思いだ。
バスで席を譲ることになった強面のおじさんが柔和な表情になっていくのが素晴らしかった(演技力)。
福本清三の単に怪しい雰囲気の人ってだけの一コマ出演は贅沢w
★★★(★)
制作プロダクション 東映京都撮影所