『FUNNY BUNNY』(2021)
原作は演出・脚本飯塚健による2012年の舞台演劇。かつ、飯塚健の小説。
監督・脚本・編集 飯塚健(『ステップ』『虹色デイズ』、『荒川アンダーザブリッジ』他)
中川大志、岡山天音、関めぐみ、森田想、レイニ、ゆうたろう、落合モトキ、山中聡、菅原大吉、角田晃広、田中俊介、佐野弘樹、他。
高校時代、剣持聡(中川大志)には田所修(ゆうたろう)という親友がいた。鉄アレイを手に入れて筋トレを始めたという田所はいじめを受けていた。夢のボタンを押してしまいそうだからそのボタンを隠したと謎めいたことを言っていた田所は、その後、いじめによって命を落とす。
それから6年、その日、自称小説家の剣持は友人の漆原聡(岡山天音)と共に、閉館間際の図書館へタクシーを飛ばす。田所の祖父が亡くなったのだが、なんでも、図書館にある絶対に借りられない本の中に宝の地図を隠したと言うのだ。それをどうしても明日の朝までに探し出し手に入れなければならないと剣持は言う…。
図書館司書服部茜(関めぐみ)、たまたま退館しそびれていた新見(レイニ)、遠藤(森田想)を巻き込み、絶対に借りられない本を探していく…。
この時仲良くなったタクシー運転手の西門(菅原大吉)、茜、新見、遠藤との付き合いは行きつけの中華屋を拠点に続くことになる。4年後、剣持は、自分と同じく大切な友人を亡くした哀惜から逃れられない元ロックバンドのギタリスト菊池(落合モトキ)の自殺を食い止め、みんなの力を借りて菊池の心を救う…。
生きる希望を与える世直し隊みたいなもんの活躍かなぁ。仲間っていいね、人は互いに支え合っているんだね、という暖かさを感じる作品。コンセプトやらキャラクター設定やらからはシリーズ化もできそうな。
だけど、
冒頭、やさぐれてるタクシー運転手に「世界を救うのはいつだって想像力だ」という一言で態度を改めさせるのだが、納得いかなかった。剣持は偉人の名言等にちょっと変化をつけて自分の言葉にするらしいのだが…。図書館に入り、いかにも会話劇的なやりとりが始まると、これはもしかして戯曲かな?と思ったらそうだった。おそらく、舞台上ならこの一言でも腑に落ちたかもしれない。映像は情報量が多すぎる。同じく、田所の夢のボタンの意味、本の中に隠した宝の地図の正体、なぜその日に探さなくてはならなかったのか、剣持は何をしようとしてるのか、全て明らかになるのだけど、台詞での謎解きがしつこい。画で見せられてないのだ。菊池のエピソードも舞台の方が感動的だったろうと思う。ラストの歌唱シーンなんか特に。タイトル意味も早々に予想つくけど回収するには弱い使い方だった。
というわけで、なぜ映像化しようと思ったかわからない。当たり前すぎるが、舞台で演ったほうが良い作品。その方が面白い作品。わざわざ映像化する意味が感じられない作品だった。
変わった中華屋店長秋尾に角田晃広。ぴったり。
落合モトキ、やはりうまい。歌下手だったけど、演出かな? 下手でかまわない、むしろその方がいい役だったんで。
★★