数多の波に埋もれる声 | これ観た

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基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『数多の波に埋もれる声』(2015)

監督・脚本 宗野健一

 

宮下ともみ、南条弘二、井川哲也、酒井雄輝、酒井勇樹、長谷川摩耶、瀬戸祐介、田島俊弥、三輝みきこ、逢川大樹、高松潤、他。

 

個人タクシー運転手の岩城蓮(南条弘二)はある夜、ただまっすぐ走り続けてくれという女(宮下ともみ)を乗せる。お金は持っていると言い、一晩中走らされるが、料金は4万を超え、いいかげん目的地を示すよう言うが、答えは同じ。女は前払いでいくらか渡してきたが、そのお札には血痕がついているものもあった。女がお腹が空いたというので立ち寄った食事処のTVニュースで、女は西本由里子というデリヘル嬢で、殺人容疑で指名手配されていることを知る。ここで由里子を捨て置くつもりだったが、体と引き換えにまだしばらく行動をともにすることにした。

岩城にも実は目的があり、出来損ないの弟亮太(田島俊弥)が薬の売人となり最終的に殺され、弟をそんな目に合わせたやつへ復讐を誓いずっと探し続けていた。その男(井川哲也)が由里子を追っているとわかってからは自分の身上も話すようになり、やがて互いに特別な感情がわいてくる。

由里子が実家を頼ろうとして母親の裏切りを知ったり、その絶望から自殺を考えてたり、幼馴染みの友達奈津実(長谷川摩耶)を頼ろうとして確執が明らかになったり、その都度岩城が助けになるロードムービー調。

 

まず、岩城役の南条弘二がなかなかのイケオジ。内野聖陽みたいな雰囲気。無敵だし。乗客の会話を聞いてるさまとか、あいづちをうつさまとか、バックミラー越しに客の行動を見ているさまとか、その都度の表情が、さもありそうでとてもいい。

あと、長谷川摩耶も水商売っ気がいい感じ。

 

それはどうなの?という点では、万策尽きた感じで、実家の母親を頼ろうとするのだが、警察が先回りして張り込んでいることを知った由里子の「裏切られた」という台詞はないわぁと思った。事情はどうあれ殺人を犯し指名手配中で、裏切ったはないだろと。また、奈津実も由里子をかくまうと言っていたのに、追手に場所を教え裏切るわけだが、ここでも「裏切ったの?!」という台詞。かくまうなんて奈津実の人生も狂わせるようなことなのに。まあ、奈津実は奈津実で高校時代の由里子に対する恨みもあったわけで、さらに今、ヤクザものに協力しなけらばならない事情もあった様子だが、奈津実は最後には由里子をかばう。でも由里子は命乞いに奈津実に「友達だよね?!」とも言う。ただただ、由里子の台詞が空々しい。

 

冒頭にある少女の成長記録的なムービーは由里子の今との落差を出したものなのかな。

地方から出てくる者たちの転落は必ず東京を悪として描かれる。魅力的な都市だが、それだけ誘惑があるということなんだろうけど、もううんざりだな。

 

声のトーンも高く性格も強め、かなり勝手な女だなと思った由里子だが、だからこそ生きることに執着するのかもと思ってみたり。結果、人間は本質的に生きることを願う生き物であるというメッセージ性があるのは良かった。(というか、そういうメッセージ性を感じた)

 

そして、ラスト、岩城と由里子は再び会えるのかどうか、信号機の赤が青になる演出をどうとらえるか、余韻を残したのは良かった。

 

★★(★)