縁側ラヴァーズ | これ観た

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基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『縁側ラヴァーズ』(2020)

監督・脚本 今野恭成(こんのやすまさ)

 

元システムエンジニアの多井(三山凌輝)は体を壊し会社を辞めた。少しゆっくりしながら、本来作りたかった見たいと願ったものが見えるスマートデバイスの特許取得に本格的に乗り出すことにした。そんな多井とともに友人で塾講師の佐々木(松田岳)は海辺の民家に引っ越してくる。そこには佐々木がずっと憧れていた縁側があり、隣りに住む酒飲みの大家岡野(岡野陽一)と少し生意気な小学生の娘美衣子(咲希)、近所の同棲カップル藤原(温水洋一)島田(樋谷怜穏)がよく縁側に集まるようになる。

なんだかんだそこで2年を過ごしたが、共同生活するうえでの喧嘩が避けられず、また多井はスマートデバイスが思うように売れなく、焦りを感じ始め、東京で再就職するため、二人はここを引き払うことにした。そんな矢先、アパレル勤務の友人白鳥(笹翼)が職場に嫌気がさして腹いせに商品を持ち逃げして二人を頼ってやってくる。さらにその上司滝沢(秋葉友佑)が追ってやってくる。不意のトラブルに見舞われながら、馴染んだ隣人らとの最後の晩餐が始まり…。

 

小学生の子供に対等に接するさまに好感がもてる。ともすると冷たいようにも感じるが、言いたいことを言える仲ということだ。朝食を一緒に食べる仲にもなってるし、佐々木は美衣子の家庭教師もやっている。だから美衣子は二人にいなくなってほしくないのだなというのがわかる。

美衣子に人を印象で決めつけてはいけないということを教えているのもいい。友達は必要だということも説いてる。そして最後には美衣子は気持ち悪いと避けていた藤原と島田と普通に挨拶する親しいご近所さん関係になっている。二人のお兄さんは美衣子にとって宝だ。

 

なんでもない感じだけど、生活に視点を置くと、時間の流れが明らかに違い、こんな生き方もあるよと見せられている感じ。確かに田舎暮らしは憧れではあるけど、意味を見いだせない確率も高い。それくらい喧騒に慣れてしまっているのかもしれないし、やはり第一にお金のことを考えてしまうきらいもある。

自分を振り返れば、人との関わりが面倒で嫌いで苦手、なるべく遠くにいたいと思ってきたから、この作品のように身近になると窮屈になるかもしれない。でも母や叔母はお茶の間会議が大好きで、しょっちゅう人が集まってきていた。社会性は年齢とともに上がってきた実感はあるし、人の存在が恋しくなることも今後出てくるかもしれないなと思った。

 

ラストにある美衣子の日常からうかがえる成長と、多井のスマートデバイスのつもりで左目を閉じて右目だけで見たいものを見る姿は、人生は出会いと別れの連続であり、思い出の蓄積であり、その中で強い結びつきもあるのだなぁと感じさせる。

人とのふれあいが嫌味なく描かれていて、むしろ愛おしく描かれていて、面白かった。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

配給 ユナイテッドエンタテインメント