『涙そうそう』(2006)
作詞森山良子、作曲BEGINの楽曲「涙そうそう」をモチーフにした作品とのこと。
監督 土井裕泰(『ハナミズキ』『罪の声』他)
脚本 吉田紀子(『ダイイング・アイ』『その女、ジルバ』『Dr.コトー診療所』シリーズ、『ハナミズキ』他)
妻夫木聡、長澤まさみ、麻生久美子、小泉今日子、塚本高史、平良とみ、森下愛子、大森南朋、船越英一郎、中村達也、橋爪功、大城美佐子、与座よしあき、他。
新垣洋太郎(広田亮平)に、母親光江(小泉今日子)の再婚で妹(佐々木麻緒)ができた。けれど間もなく父親となったミュージシャンの金城昭嘉(中村達也)は蒸発し、光江も病に倒れ、家族である妹のカオルを守ってねと言い残し、亡くなる。まだ幼かった二人は光江の実家のおばぁミト(平良とみ)のいる沖縄本島から離れた島へ渡る。
それから十数年後、洋太郎(妻夫木聡)は高校を中退し、自分の店を出すことを夢に那覇で働いていた。カオル(長澤まさみ)も那覇の高校に通うために洋太郎のもとへやって来る。カオルは素直で明るい子に育っており、成績も優秀で大学への進学もすすめられていたし、洋太郎もそのつもりだった。しかし、洋太郎が詐欺にひっかかり、店を出すための資金もなくなり借金もかかえることになった。事情を知った洋太郎の身分違いの恋人恵子(麻生久美子)の父親(橋爪功)からは実質手切れ金を渡される。もちろんつっぱねたが、恵子との交際は終止符を打つ。カオルはこっそりバイトで支えるが、バレたうえ、初めて大きな喧嘩をしてしまう。
なんだかんだカオルは大学に合格し、同時に洋太郎のもとを離れ一人暮らしを始める。洋太郎は再度店を開く夢のために身を粉にして働き、カオルは勉学とバイトに明け暮れていたある台風の夜、カオルのアパートが被害にあってしまう。カオルの声が聞こえたと洋太郎がその場にかけつけるが、これまでの無理がたたり逆に倒れてしまう。カオルは研修医となった恵子を頼り、救急車で搬送するが、持ちこたえられなく洋太郎は命を落とす…。
光江が亡くなる前に、泣く洋太郎に、涙が出て泣きそうなときは鼻をつまむのよ、と教えるのだが、これがぐっとこらえろ、我慢して乗り越えろという教えで、以降悲しい場面では洋太郎は鼻をつまむ。これはカオルにも受け継がれいて、カオルも泣けてくるときは鼻をつまむ。だけど、最後、離島で洋太郎の葬儀を終えて涙があふれかかり、でも我慢するカオルにおばぁが我慢するな、泣きたい時は思いっきり泣けと教える。タイトル回収だ。そして、思いっきり泣くことをしてこなかった洋太郎に切なさが増す。
映画のタイトルが『涙そうそう』なので、泣かせる映画なのは承知だったが、この泣くことを我慢する設定とか(結果前向きに生きることになるとか)、本、うまかった。一人暮らしを始めて初めて洋太郎に宛てた手紙の返信が、洋太郎の死後にカオルに届くのだが、手紙の内容も下手くそな字もベタだけど、これが泣かせのクライマックスで効いていた。
おばぁの「長い命、短い命、いろいろあってしかたないこと。ヨウタは25年の寿命だった」という台詞がなんの装飾もなく現実的でいい。人間は自然界の一部であることを思い知らされる。命は平等ではなく、時間だけが平等なのだ。
そして、血の繋がりのない兄と妹の、家族愛なのか男女間に芽生える特別な感情なのか、具体化せず「好き」と「愛してる」という言葉だけで終わらせたのは情愛の深さが出て良かった。
洋太郎を死なせちゃうのかぁ…と少し寂しかったけど、二人の関係性を美しいものとして持続させるためには正解だ。
とても良かった。
★★★★★
2006年の作品なので、長澤まさみはギリギリ十代か。演技がとてもしっかりしてる。妻夫木聡もうまいし、確かな俳優陣で作品に力が入ってるなと思った。クズ父の中村達也、かっこよすぎで、そりゃ光江惚れるわと思った。
血の繋がらない兄妹であることをカオルは知ってるか否かの部分にあやふやさがあって、それが台詞に影響してたところがあったのが残念だったけど、脳内補完できる程度だからまぁ…。
配給 東宝
夏川りみの歌う「涙そうそう」↓

