私は渦の底から | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『私は渦の底から』(2017)

監督・脚本 野本梢

 

橋本紗也加、岡村いずみ、長尾卓磨、藤原麻希、米元信太郎、はぐみ、他。

 

田辺・弁慶映画祭セレクション2017で上映されたものとのこと。同映画祭、レズビアン&ゲイ映画祭で受賞歴有り。

同性愛に悩む主人公が好きな子に想いを告げるまでの心の内を描いた30分のショートムービー。

 

希子(橋本紗也加)は同性愛者である自身と世間との乖離に苦しんでいる。友人のリイ(岡村いずみ)に想いを寄せていたが、同性であるし自分の気持ちは言い出せないまま、リイに同棲相手が出来たことを知る。リイとこのまま友人関係でいることが辛くなり、実家に帰ることを決め、どうせこれで会わなくなるのならと最後にリイに想いを伝えようと決意。しかしてリイは約束の店にサツキ(藤原麻希)という女性を連れてきて、恋人だと紹介する。驚きとショックで希子はその場を去ってしまう。希子の気持ちを知らないリイもまた傷つく…。

 

アパートの隣りに住む男(長尾卓磨)が毎度お気に入りのデリヘル嬢かよちゃん(はぐみ)を呼び、その行為の声が壁一枚の希子の部屋に聞こえる。たまりかねた希子は文句を言いに行くと、迷惑代にとお金を渡される。以降、デリヘル嬢かよちゃんを呼ぶ度に迷惑代を払われる顔見知りになるのだが、ある日、希子は男を知れば普通に異性と交際も可能かもと、その男に迫り寄る。その時の希子が痛々しい。男がものすごく冷静に希子に対応するから。このシーンで希子をどん底に落としながら現実を突きつけるわけで、それがとても良かった。

また、男がデリヘル嬢かよちゃんに想いを寄せてるのもきちんと描いてるので、その一生懸命さに希子も感化され、もう一度ちゃんとリイと話をしよう、想いを伝えようという気にさせる展開にも無理はなかった。リイとサツキの仲を前に、言うに言えない希子の行動に、不快感を現すサツキにも性的マイノリティの微妙な気持ちがよく現れていたと思う。女性であることの象徴に生理を使うのは姑息だけどわかりやすい。総じて、秘めておかねばならない辛さ、今後もあるであろう異性に心を動かされない希子の葛藤の重さがよく表現されてる作品だと思った。そしておそらく、このリイとのことで、一歩踏み出せたろうし、この後は明るい(同性)恋愛ができるのだと思う。

 

★★★(★)

 


でも、恋愛対象が同性であるというだけで、気持ちを伝えたいのは異性でも同じ躊躇があるんではないかと思った。結局恋心に性別なんて関係ないのだと思う。