『心が叫びたがってるんだ。』(2017)
原作は超平和バスターズ(監督:長井龍雪、脚本:岡田麿里、キャラクターデザイン&総作画監督:田中将賀)によるアニメーション。ということだが、実写映画版をまず見てしまった…。
監督 熊澤尚人(『DIVE‼』『君に届け』『ユリゴコロ』他)
脚本 まなべゆきこ(『君に届け』『オオカミ少女と黒王子』他)
中島健人、芳根京子、石井杏奈、森七菜、寛一郎、萩原みのり、荒川良々、大塚寧々、他。
子供の頃、山の上のお城に父親が母以外の女性と行くのを見た成瀬順(芳根京子)は、単純に憧れや羨ましさから母親泉(大塚寧々)に得意げに話す。お城はラブホテルだし、それによって順の両親は離婚することになった。離婚の原因を順のおしゃべりのせいだとののしられ、以降、おしゃべりで明るい性格だった順は声が出なくなり、しゃべろうとすると腹痛を起こすようになってしまった。順は地元のお寺の言い伝えにある玉子の呪いだと思うようになる。
高校3年になった順は、地域ふれあい交流会の実行委員に担任の城嶋(荒川良々)により無理に選出される。それは他に選ばれた三人も同じで、幼い頃から音楽に触れ、ピアノをやっていた坂上拓実(中島健人)は両親が自分の進路のことで意見の相違があり揉めてるのを知らずピアノが好きと言ったばかりに離婚となり、それから自分の本心を隠すようになってしまった。今は祖父母に育てられていた。チアリーダー部では頼れる存在で優等生、中学の頃拓実と交際していた仁籐菜月(石井杏奈)は本心を語らない拓実の手前、つきあってると友人らに言えず、拓実を傷つける形でその関係が中途半端に終わっていて、後悔をしていた。そしていまだに拓実を想い続けていた。野球部の主将田崎大樹(寛一郎)は腕を痛め甲子園予選に出られなくなった。自分にも部員にも厳しく、慕われてはいるものの、自分が甲子園に連れていく!と言った手前の怪我であり、中には反発する者もいて、自分の言動の責任の重圧に苦しみ居場所をなくしていた。そんなメンバーになにげに城嶋先生は先へ進むきっかけを与えようとし、四人はなんだかんだクラスの先頭に立ち、まとめ、やっていくことになる。
城嶋先生の「ミュージカルは奇跡が起こる」という言葉の魔法もあり、順が歌なら言葉が発せられることからも、出し物はミュージカルに決まる。しかも、一大決心、順の心にある気持ちを言葉にした順によるオリジナル脚本で、主人公の少女もつとめることになった。作曲はありものの曲をアレンジする形で拓実が中心となって作っていき、さらに王子役にも。仁籐はダンスを担当し、田崎は大道具全般と玉子の精を担当する。また、拓実の優しさとサポートのおかげでしゃべれない自分からの脱却を決意できた順は、拓実に惹かれていっていた。そうして迎える本番当日…。
トラウマをかかえた順を中心に、他三人も現状から一歩自由になる恋と友情の青春ドラマ。
前半は良かったけど、中盤からあやしくなり、後半に詰め込みすぎの影響が出た感じで残念だった。原作のアニメーションがどうだったのか知らないんだけど、ラストに向かう段がしつこい。例えば、野球部員とのいざこざはでかいのを1回でいいし、イベント前日に順が拓実と仁籐の会話を聞いてショックを受けるのはいいとしても、その後拓実が順を探すのに時間を割きすぎ。それだけに順の気持ちの吐露シーンが雑な感じがした。それと、拓実は作曲できても良かったんじゃないかな。ピアノからは遠ざかっていたにしてもDTM部なんだし。
でも劇のお話はいいし、いいセリフもあった。「〜のせい」と「〜のおかげ」の違いを入れるタイミングとか。
★★★
仁籐の中学時代を森七菜がやってたんだけど、たかが数年前、役者変える必要あるかな? そしておそらく森七菜のほうがうまい。
制作 シネバザール
配給 アニプレックス
それにしても、アニメーションを実写化するのってどうなんだろう。漫画でも疑問の残る部分があるし、小説でもそうなのに、すでに動画になってるものを実写化する意味って、商業性だけかな。作り手としては惚れ込んでる作品なら夢想いっぱいで楽しいかもだけど、はたから見ると脚本家にしても監督にしてもマイナスのイメージしかない。原作を超えるか別作品に昇華するか、よっぽどうまくないと。
機会に恵まれたら原作アニメも見てみようと思う。