サインー法医学者柚木貴志の事件ー(ネタバレ) | これ観た

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基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『サインー法医学者柚木貴志の事件ー』(2019 全9話)

もとは韓国のドラマで、そのリメイク版。
 
大森南朋、松雪泰子、西田敏行、仲村トオル、高杉真宙、佐津川愛美、飯豊まりえ、木下ほうか、森川葵、他。
 
法医学の向上と、警察下の法医研ではなく潤沢に予算のおりる独立した法医学研究院を作りたいと夢を持った解剖医たちが、権力に囚われていく、その中で解剖医の仕事とは何かを問う。と同時に男社会の捜査一課で初の女一課長を目指す女管理官の野心と正義、その部下の事件に真摯に向き合う本来の刑事の姿を描いたドラマ。
 
①ゲームの始まり
人気歌手の北見永士が楽屋で亡くなっていた。警視庁捜査一課管理官で課長昇進をかけてる和泉千聖とその部下で反骨精神あふれる高橋紀理人が担当し遺体を病理解剖にまわすが、解剖執刀医には警察庁上層部に忖度するなど死亡検案書を権力次第で書き換える伊達がやることになった。けれど状況が腑に落ちない柚木が勝手に遺体を持ち出し先に解剖を始めてしまう。助手はたまたま居合わせた新人解剖医の中園景。青い繊維を見つけ鼻口閉塞による窒息死、つまり他殺と診断した。その時、第一発見者のスタイリスト宮島が青酸カリで毒殺したと出頭した。検出された青酸カリの量からは肺に疾患がない限り死に至ることはない。しかし伊達による解剖が再度行われ、毒殺とされた。
柚木と中園は楽屋裏の監視カメラを調べ始め、青いぬいぐるみを持った黄色のワンピースを着た女を見つける。けれど事件は中島の自首で捜査終了。
今回の件で懲罰会議が開かれ、柚木は埼玉の分室へ飛ばされることに。伊達は法医学研究院のためだと院長の兵藤を懐柔し辞職させ、その座につくことに。中園は無断持ち出しした青い繊維を手土産に柚木に師事することに。
 
②都会の死体、田舎の死体
首吊り女性の遺体が同時期に東京と埼玉山中で発見される。東京は伊達が、埼玉は柚木が解剖。伊達は椎骨閉鎖による窒息の自殺。柚木も同じだが自殺に見せかけた他殺とした。どちらの遺体にも首元には変わったアザがあり、同一犯と見られる。調べると同じ睡眠導入剤が使われていた。
同じ頃都内では放火事件が発生し高橋が捜査に乗り出しタクシー運転手に目をつける。その後また首吊り遺体が発見され、結局埼玉3体となり、中園も巻き添えを喰らう。犯人は高橋の狙い通りタクシー運転手。放火も首吊り殺人も。恋の逆恨みが理由だった。
 
③隠蔽されたサイン
前回の功績から柚木も中園も東京に戻される。
暴力団構成員のいざこざかと思われる発砲事件が発生するも、高橋はヤクザが拳銃を人に向ける可能性はほぼないと判断し、中園に撃たれた遺体の解剖を頼み銃弾が刑事のものだと判明する。伊達は解剖医の橘を所見捏造に利用したが、結局組対4課の刑事が裏カジノ遊興で暴力団とモメたのが発端の殺人事件だったと判明。
一方伊達は法医学の地位向上目的に「捜査の結果と解剖の結果は一致させなければならない」と掲げ、警察上層部とも主体政党ともつながりがはっきりし、金や権力、組織の悪しき体質が少しずつあからさまになっていく。
 
④法医研の闇
同じ慶徳小笠原病院の医者で死亡時刻もほぼ同じ、しかし心不全としか解剖の段階ではわからない遺体が2体出る。
柚木の亡くなった父親も同病院の医者だった。父親は本来自殺だと片付けられるところを、兵藤の解剖によって脳梗塞からの転落事故と判明した。柚木はそれで兵藤に引き取られ解剖医を目指すことになったのだった。
そんなおり、いいように使われて荒れた橘が、1994年安本祥子が亡くなった医療ミスの解剖所見捏造を拡散する。その時の執刀医が現小笠原院長、助手が亡くなった2人の医師、外科部長の門田、看護師が現スナックのママ、解剖医が兵藤だった。この医療ミスが今の法医学研究院が出来上がった頃と合致していた。
当時法医学の理想を語り合った同僚が過労で死に、全てを知ってる伊達はここで兵藤と袂を分つ。そんな兵藤に伊達が頼み事をしに行ったその日、兵藤は首吊りをした。自分とも会う約束をしていたのに、と納得できない柚木は伊達が執刀医の兵藤の解剖に入るが、結局窒息死、自殺だった。
 
⑤見えない毒
行方不明だったスナックのママが河原で遺体で発見されたが、前の2人と同じ心不全と診断された。しかし特殊毒物は検出されないのもある。水銀化合物のアンチモンという毒物があり、それが使われていた。
予想通り25年前小笠原は医療ミスをして隠蔽していた。放医研設立に奔走してた兵藤は、小笠原は厚生省と深い関わりがあり兵藤は隠蔽に加担するしかなかった。しかし、柚木の父親はそれを知って告発をしようとしたところ、小笠原にアンチモンを使われたのだった。兵藤は将来のある柚木の気持ちを考え、他殺の可能性を閉じたのだった。
しかし、アンチモンの致死量ははっきりされてない。よってアンチモンだと断定はできない。柚木は何をもってして真実とするか葛藤した結果、 3人の解剖所見は心不全とした。死因が病死ならこれ以上の捜査はできない。
兵藤の名誉を守るためか、これが解剖学の限界か、遺族へ伝えるべき事は本当は何なのかを考えさせられる柚木。
事を見守ってきた安本(安本祥子の父親)が小笠原に会いに行って本当のことを聞き出そうとするがアンモチンを盛られて死ぬ。しかし安本も青酸カリを盛っていた。2人を殺したのは先の所見を出した自分のせいだと自責の念にかられる柚木。
 
⑥殺人シナリオ
中園の妹は通り魔に襲われ3年も植物状態。事件当時、景に助けてと電話したのに迎えにいかなかったことを後悔している。遺体の声を聞くことによって第二第三の犯行を防ぐことができるかもしれないから解剖医になったのだった。
ある日、女性を狙った通り魔事件が起こる。特徴は刻印を残す。死因は頭部打撲による脳挫傷。妹も同じだった。
カナヅチを持ってた男が連行されるがカナヅチに血痕はない。犯行時間のアリバイもあった。
その頃柚木は前回で出した所見に思い悩んで法医研に戻れずにいた。兵藤の著書「死者の声を聞け」や、中園の犯人を絶対許さない必死さに触れて中園の力になることにした。
しかし捜査打ち切りになり容疑者は釈放。
中園はお金も治る見込みもなく妹の生命維持装置を外すことを考えねばならない段階にきていた。
容疑者落合は以前ゲーム会社にいて殺人ゲームのシナリオを出したことがあった。そのゲームの内容が通り魔事件と酷似していた。刻印は難易度。
高橋は女性をつける落合を和泉と追ってたが、逆に和泉が狙われる。そこで共犯者の存在が明らかになる。共犯者は同じゲーム会社の野田だった。
 
⑦私は殺してない
宮島から和泉に、「私は殺してない」と電話が入る。和泉の代理で柚木が面会に行くが宮島は泣きながら記憶違いだったと否定する。そして入浴中に宮島が亡くなる。死因は感電死だが、事故ではなく計画的犯行と柚木は見立てる。
同房の話によると、中島は父が亡くなったと知らせがあり本当のことを話すことに決めたという。青酸カリは入れてないし犯人は事務所社長会田だという。
柚木は同日自分の前に主体政党次期総裁候補の娘、島崎楓の面会記録を見つける。北見の元恋人であることも。青いぬいぐるみを持つ女であることも。楓が北見殺害の犯人と知る。
 
⑧真犯人はここに
島崎楓への捜査が密かに始まる。姿をくらました会田社長が飛び降り自殺をした。会田社長の解剖は伊達が執刀だが、楓の姿がホテル内で確認されたこと、北見の件で目を背けた結果犠牲者が増えたことを悔やんでいた和泉は遺族の希望だというていで解剖に助手として柚木を入れる。死因は落下だが鈍器で殴られた痕跡も見られ他殺の可能性もあると両者共に結論づける。楓の任意聴取も決まる。しかし伊達の会見により会田の死亡推定時刻が19時から23時になった。楓のアリバイ工作に加担したのだ。
高橋と和泉は会田と楓の犯行に関わる会話が録音されたICをどうにか入手。柚木は楓を訪ね北見殺人の理由を直に聞くことに。その際青いぬいぐるみを発見する。
 
⑨真実のサイン
証拠となる青い繊維とぬいぐるみは一致しなかった。伊達の指示で繊維が入れ替えられたのだった。柚木は伊達に何をやったところで法医研は権力から逃れられない、解剖医がやることは死者の声を聞くことだと言い捨てる。
後がなくなってしまった柚木は楓をはめることにした。自分の命をかけて。柚木は楓がどうやって北見を殺したのかやってみせるよう仕向ける。万が一の時のために解毒剤も用意していたが使う間もなく命を落とす。
最初に柚木が北見の遺体を勝手に持ち出して解剖した時のように、今度は中園が柚木の遺体を運び、伊達が解剖する前に真相を明らかにすべく解剖する。柚木が北見の代わりとなって、楓の犯行をそっくり再現することとなる。カメラ映像と解剖とによって。
柚木の死によって目が覚める伊達。声なき声に耳を傾けろ。目の前の遺体が発するサインから目を逸らすな。それが全てだった。
 
 
最後、命をかけて犯人を特定、証拠保全をさせるわけだけど、元が韓国ドラマだと知って合点がいった。死ぬまでして事件の解明などしないから、日本のドラマ主人公は。
 
でも面白かった。仕掛けもだし各話ちゃんと引きがあるし、全体の構成はミステリーサスペンスとしてうまいし、結びも収まりがいい。森川葵が魔性を好演だし。
 
★★★★
 
 
飯豊まりえと蓮佛美沙子の見分けつかない^^;。
このドラマでの高杉真宙は林遣都と演技がかぶるけど、青さがありながらもデキる刑事にちゃんとなってた。