山脇百合子シリーズ最終。
今日ご紹介するのは
渡辺茂男作/山脇百合子絵
『もりのへなそうる』
山脇百合子さんは、実姉の中川李枝子とのコラボだけでなく、さまざまな作品の挿絵なども手掛けています。この作品はその1つ。
私はこちらの作者の渡辺茂男さんは知らなかったのですが、山脇さんのイラストと、「へなそうる」ってなに?という疑問とで、Amazonでポチ買いした1冊です。で、「へなそうる」とは森にすむ首長恐竜のような不思議な生き物でした。登場するのはそのへなそうるの子ども。黄色と赤のしましまで、とぼけた顔がかわいらしい。カラーイラストページは色鉛筆で彩色されていて、ほのぼのほっこりの山脇百合子ワールドです。
3歳と5歳の兄弟が探検に行った森でへなそうるに出会うんですが、へなそうるは2人の言葉をよくわかってないのにどんどん真似してきます。だからちょっとおかしい。「どうぶつ」を「どうつぶ」と言ったり、「チューインガム」を「チューインマグ」と言ったり。子供が言葉を習得するところを見ている感じ。それに気づく5歳のお兄ちゃんと、気づかない3歳の弟。だから、読んでいる子の発達段階によって、反応の仕方が違ってきます。
個人的に印象深いのは、森で遊んでいるときに3歳の弟が蚊にさされてしまったシーン。「かにさされた!」と騒ぐんですが、それを真似てへなそうるも騒ぐんです。
「カニにさされた!」
「に」が1つ多い
なつかしいなぁ。
うちの子も、ずっと「カニ」派でした
「蚊にさされた」の「蚊に」のところがそのまま「かに」という名詞として定着しちゃってるんですね。で、そこに「に」をつけるから「カニにさされた」になっちゃう。どういう思考回路でそうなるのかな、って当時から不思議だったんですよね。だって、そのまま復唱すればいいのに、わざわざ「に」を補うんですよ? 「に」の役割はわかってるんですよね。しかも、「蟹」と「蚊」の区別はついてるっぽいんですよ。
日常会話では、「学校行くね」とか、普通に助詞が省略されるので、そのあたりのルールがごっちゃになってるのかな、とか思ったり。あるいは、1音の名詞はめったにないから、勝手に名詞=複数音と理解してて、1音の「蚊」を名詞として受容できないのかな、とか想像したり。
どこかにそういう研究とかあるんでしょうか。ホント、子育ては言語習得の研究者にとっては宝箱みたいなもんなんだろうなってよく思ってました。10人くらい産んで、データを取り続けたら結構な研究になるんじゃないかしら、とか、本気で思いましたね。産みませんでしたけど
それで思い出したんですけどね、おもしろい、いや、まったくもってくだらない実験をしたりしました。
娘が言葉を覚え始めたときに「りんご」と「カップヌードル」だけは、どんなときもネイティブっぽい英語で話しかけてみるっていう。いや、文字にすると一層くだらないですね。今思うと、言葉のチョイスもアホっぽい。悪ふざけなのがバレバレ
ま、でも半分は好奇心もありまして。一般的に母音は3歳までに固定されてしまうって言われるじゃないですか。ということは、固定される前に他言語の母音を挟み込んだらそれを受け入れるのかな?とか思って。
で、結果、成功っていうんでしょうかね。まあ、みごとに、りんごとカップヌードルについては「ぇあぽう」と「かぁっぷぬーどぅー」になってましたね。ただし、それ以外の言葉で英語の[æ]とか[ʌ]っぽい音が混ざることはなかった。この2語限定。でもこの2語はとても日本人とは思えない発音。しかもそれがベッタベタな日本語にめっちゃ自然に混ざってくるのが驚くレベル
ただ、そのうちスーパーとかで、
「あ、おかあさん、『ぇあぽう』があるよ!」
とか
「『かぁっぷぬーどぅー』買ってよぉ!!!」
とか、
大声で言うようになったので(それが普通だと思ってるから仕方ない)、こっちが恥ずかしくなってやめました。やめたら、普通の日本語に戻るのは早かったですね。
ムスメよ、人体実験してごめんね!
それにしても発達段階の子供は本当におもしろい。もったいなかったなぁ。いろいろ、書き留めておけばよかった。もうほとんど忘れてしまったけど、こうして絵本を読んだりして、ふと思い出すのかもしれません。
と、大幅に脱線してしまいましたが、これで山脇百合子さんシリーズは終了です。ぐりとぐらシリーズはもっともっといっぱいあるので、また何かの機会にご紹介できたらいいなぁ、と思っています。
山脇百合子さん、ステキな挿画の数々、本当にありがとうございました。
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