薔薇 | もとろーむの徒然歳時記

もとろーむの徒然歳時記

山が好き、花が好き、クラッシック音楽や絵画、演劇に歴史好き…気ままに書かせて頂いています。

 

 

        道の辺の (うまら)(うれ)に ()ほ豆の からまる君を はかれか行かむ

       

(万葉集 巻第二十、四三五二)

 

 


 

 

道端のうまら(ノイバラ)の先に絡みつく豆のように、

 

あなたは離れたがらずに、まとわりつくけれども、

 

別れて行かなければならないのですよ。

 

と別れを惜しむ、防人の歌です。

 

茨(うまら)はイバラの古語で、棘のあるものの総称です。

 

 


 

 

「道の辺の茨(うまら)」と歌われていることから、

 

ノイバラでしょう。

 

ノイバラは花こそ小さいのですが、

 

芳香は強く、虫たちを引きつけます。

 

その実は生薬の営実(えいじつ)として

 

利尿剤や下剤、解熱剤として民間薬に用いられています。

 

ただ、

 

多量に飲むと猛烈な下痢をするそうです。

 

 

 

 

 

万葉集にみえるノイバラを書きましたが、

 

日本での歴史を遡ると平安時代、

 

清少納言の書いた随筆、『枕草子』に名前を見ることが出来るようです。

 

こちらには、

 

さうび(薔薇)は、ちかくて、枝のさまなどはむつかしけれど、

 

をかし。

 

(第七十段「草の花は」)と書かれているそうです。

 

 

 

 

 

薔薇は葉が混みあっていて、

 

枝も勢いよく四方八方に伸びて、とげもあるけれど、

 

とても趣があります。

 

と訳すれば良いのでしょうか。

 

 

 

 

この話は

 

枕草子の写本

 

能因本の系統のみに書かれているそうで、

 

他の堺本、前田本や

 

私の持っている、白子福右衛門先生の三巻本の系統には

 

草の花は」のくだりはありますが、

 

「そうび(薔薇)」の話は書かれていませんでした。

 

残念ながら、

 

この記述の確認が取れませんでした。

 

 

 

 

 

園芸種のバラは普通、結実しませんが、

 

野バラは結実します。

 

西欧ではこの野バラの赤い実を

 

砂糖漬けにしたり、

 

発酵させて果実酒にしたり、

 

野バラの実で作ったシロップを

 

ローズヒップ・シロップにするそうです。

 

第二次世界大戦中、

 

オレンジが欠乏したとき、

 

ローズヒップを集めてオレンジの代用にして

 

ビタミンCを取っていたそうです。

 

 

 

 

 

歴史上に出てくるバラとしては、

 

エジプト、ギリシャ時代に大量に生産されていたことは

 

発掘等から確かですし、

 

英国のキング・エドワードⅠ世は(在位1272年~1307年)、

 

バラを紋章にとり入れています。

 

1455年、

 

ランカスター家とヨーク家が、赤バラ、白バラを用い、

 

イングランドの王位継承権をめぐって

 

バラ戦争が行われたのは有名な話です。

 

 

 

 

 

またフランスの英雄ナポレオンの最初の妻

 

ジョゼフィーヌ皇后が

 

バラを愛好し、

 

パリ郊外のマルメイゾン城に

 

バラのコレクション園を作っています。

 

 

 

 

 

 

それだけではなく、

 

世の人々のためにと、

 

集めたバラを

 

植物画家ルドゥーテに描かせて、記録に残しています。

 

1800年頃の話です。

 

今日でもバラには

 

『ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ』

 

という品種があるそうです。

 

因みにイギリスでは薔薇を、国の花、

 

国花としています。

 

 

 

 

 

日本では古くバラがみえるのは、

 

先の万葉集ですが、

 

平安時代には古今集や

 

源氏物語には薔薇(そうび)というのがあります。

 

 

 

 

 

この薔薇を調べてみると

 

この薔薇はノイバラの事ではなく、

 

中国産の「長春」という系統のバラで、

 

既にこの頃渡来して、

 

宮廷などに植えられていたそうです。

 

 

 

 

 

西洋のバラが

 

日本で栽培されるようになったのは

 

江戸の末期で、

 

明治になってからは

 

外国文化の輸入とともに、

 

花の栽培も盛んになったようです。

 

 

 

 

 

バラは、

 

世界中で遥か古から栽培が続けられている植物なので、

 

品種改良の歴史も長く

 

現在では、
万を遥かに越すバラの種が存在するようです。

 

 

 


 

 

バラの原種(野生種)は

 

北半球のみに分布しており、

 

その基本形は花弁数が5枚ですが、

 

なぜこれが花弁数の多いバラに発展したかというと、

 

雌しべの数が影響しています。

 

 

 

 

 

バラに限らず、

 

雌しべは花弁に変化しやすい性質があり、

 

バラはこの雌しべの数が多いため、

 

長い間、改良の過程の中で

 

花弁数が多くなったようです。

 

 

 

 

 

またオールドローズの中に

 

60から80枚とあまりに多い花弁数になったために、

 

雌しべも雄しべも退化して、

 

どんなに良い形質を持っていても、

 

交配育種による親株に

 

なり得ないものも数多くあり、

 

そのため、現代バラの八重咲の花弁数は

 

30枚から40枚のものが多いそうです。

 

 

 

 

 

バラの品種名については、

 

種類が多くて、

 

名前がわかりません。

 

名前を教えて頂くと、

 

一層バラが美しく見えてきます。

 

バラの歴史を紐解くと、

 

その気品と優雅さが

 

人々を魅了し続けている事が良く分かります

 

やはり薔薇は

 

花の女王にふさわしい花ですね。