
僕が
稲森さんを観続けて20年ほどになる。舞台の上での姿に心を奪われて気がつけば20年。好き過ぎてその芸を応援したく自分が主宰する演劇イベントに東京でお呼びしたくらい好きになってしまっていた。多分あの人懐っこい性格は人たらしの素養が強い。
稲森さんは舞台でも雄弁だしどのような窮地でもとても心強い。
そのような流れで稽古場潜入!をさせて頂く事が何度もありその度に新たな気付きを与えて貰い光栄の極みであると僕は思っている。
ただシアターOMさんの公演はいつもサービス精神が旺盛でエンタメがメガ盛りのびっくり箱を思わせる。前説、本編、エンディング、と三時間を有する事もザラ。しかも撮影回は写真撮影をするし、電話も出来るだけ切って欲しい。ただこの公演を観て親の死に目に会えないかも知れないので周りを気にしてマナーモードで自分だけが分かるようにして欲しいと伝えている。
元気が欲しい時にシアターOMを摂取するのは人生において必要だと僕は思っている。これは大衆演劇を好きなファン心理に近い側面があると認識している。
話が逸れた。
また稲森さんについては演劇的なことばかりではなく
お互いの知り合いをお見舞いに病院へご一緒した事もあったり、シアターOMさんの電気工事、また関連のエアコン工事をさせて頂いたりと嬉しい関係を続けさせて貰っている。
ただふと考える。
この令和に昭和のど根性を論じかねない演劇スタイルを貫いてきたのだが、稲森さんはやはり時代に寄り添い少しずつ少しずつ変貌を遂げておられる。
そんな稲森さんを改めて
きちんと知りたくて先日お話しを聞かせて頂いた。
それを記しておこうと思い筆を取る。
シアターOM代表、稲森誠64歳。
稲森さんは岡山県出身ながら親の仕事もあり九州に居を移し中学時代から新聞配達をしながら独自で道を切り拓いていかれていた。
その新聞配達をしていたのも自立をする。言葉は悪いが社会を親を反面教師にこの先自分は1人でこの社会で生きてゆかねばならない。故に自立は必須。家出は必然であった。今現在の令和では考えられないが家出をした際、驚くべきことに稲森少年は3食寝床付きの照明オペの場所を獲得した。それから大阪に移るもその場所のツアー公演について周り名古屋、関西圏と様々な経験値を積む事になり今の稲森さんの土台を創り上げていったのである。
また大学ではその場所の業務をこなしながらBARのアルバイトを始めるも、そのお客さんからモデルの仕事も並行で始める事となる。その流れで卒業後に夢の大東京へと向い激動の人生は続いてゆく。東京では見知らぬものばかりだが人前に出る仕事と呼べるかどうかのエキストラ的なものが数え切れないくらい山ほどあった。それはギャラが貰えるものから交通費も出ないロハ的なもの。記念品だけしか貰えないものと多種多様な現場を踏んだ青春時代。だがやはりバックもチカラもない若者は搾取される対象でしかない絶望を胸に大阪に戻る事になるが、そこでは今まで培った芸が重宝され、知り合いの養成所の講師という職を得られた。そんな講師をしながら若手育成に勤しむ日々が始まった。しかし組織に属すると動きが鈍るのはどこも同じで迎合ではなく自由を取った稲森さんは遂に自らの船(創作集団)を作り上げる事に至る。
【シアターOM】の誕生である。
そして阿波座、桜川、高津、そして現在の清水へと居を変えて時代と共に歩んだ。その間、幾つかの劇団や事務所に所属するも自ら舵を切るに至るのは必然であった。
その間に『酒呑童子シリーズ』『うしおととら』『シャーロックホームズ舞台版』『からくりサーカス』『座頭市シリーズ』『活弁の世界』『怪談語り』と人気シリーズを量産。
それと並行して映画・Vシネマ・商業舞台・若手劇団の公演などにも出演しながら関西小劇場にて長年培った話術を武器に稲森さんは今日も劇場運営をしながら若手育成に努めている。という訳である。
駆け足でプロフィールを書き上げたが、これを読んだからといって全てではない事は間違いない。
自分の劇場を持つという事は365日24時間その場所を得られたという事だ。しかしそれはその場所を維持する戦いが永続的に有るという事実だ。稲森さんは劇場経営者だがプレイヤーでもある。だからこそ両輪を廻して初めて劇場経営を成り立たせている豪の者だ。
だからこそ身内には嫌なことも言わねばならない。言いたくはないが言わざるを得ない。
だからこそ言われたくないことも言われなくてはならない。様々な業界の枠組みを破壊ではなく、隙間をなんとか吹き過ぎる芸風ゆえに異端者として弾かれる。
だが稲森さんはそれらを呑み込んだ上で毎週、板の上に立ち続けている。それがどんなに凄いことか!それがどんなに素晴らしい事か僕は多くの方に分かって欲しい。
それが生きることだから当然だと言う人もいるのも分かる。
馬車馬の如く回しても廻しても立ちゆかない事も多々ある。それでも稲森さんは今日も板に立つ。
それこそが稲森さんと存在意義であり、そうする事しか出来ない演劇職人の姿がそこにあるのだ。
だから僕も自分の出来る範囲ではあるが稲森さんを観続け応援させて頂きたいと思っている。
どうかこの文章が稲森誠さん、
シアターOMさんを更に応援して下さるキッカケのひとつになれたらこんなに幸せな事はない。
皆々様、
是非また一度シアターOMへお越し下さい。全力でスタッフ一堂お待ちしております!
8月2.3日
井上ひさし先生作
『父と暮らせば』
終戦日が近い日にスプリットされる、
静かだが胸に迫る作品。
魂したたる愛ある作品。
是非、ご覧ください。
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