今朝の通勤途中の電車でのことである。
僕は一度だけ乗換えをする。
いつもの事だ。
僕は乗換駅で電車を降りて、階段を下りて下の路線で乗り換えようとした。
・・・・と、階段を下りた時である。
いつもなら電車のドアが閉まって走り出しているパターンなのに・・・・・・・
電車が止まっているのである。
いつものタイミングでいうと完璧に次の電車であるのに、電車はまだそこに居たのである。
・・・・?おかしい
そう思っていつものドアの方へ向かうと何やら人だかりが・・・
なんだなんだと思って近づいてみると、イメージ的に車椅子のお客さんが居て下りる為の板を置いたりしているのかと思った。
しかし、
それは大きな間違いだった。
『痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!!』
女の人の声が弾け飛んでいた。
【ぞわり!】とした。
何か嫌な予感がした。
走ってその人だかりの中心に向かう。
ドアが開いている。
他の場所は全部閉まっているのに、そこの部分だけ中途半端に半分だけ開いた状態。
そしてそのドアを閉めるように男の方が3人くらいヤッキになっていた。
何だ?
不可思議な意識のままその現場に辿り着く。
血がさっと引いた。
ドアの内側。
そこに女の人が立っていた。
経っていた?というより寄り添っているというか、不自然な感じがした。
『痛い、痛いい、痛いいいいいい、痛いいいいい』
そんな叫び声が耳にこびりつく。
怖い。
近づいてその部分を見詰めると・・・・・・嫌な・・・・いや、見たくない物が目の中に飛び込んできた。
扉の内側に立った女の人の右手、親指の辺りが内側ドアの隙間に呑み込まれていた。
ゾッとした!
僕は一瞬のうちに血が沸騰した!身体が動いていた。
他の男の人達同様にドアに僕も手をかけた。
力を入れるがビクともしない。
まったく動かないのだ。
声を出した。掴むところがない。
引っ掛かりがないのだ。
いや、ある。
ドアの下部、一番下のほうに互い違いに外側が下から5センチ内側にそれから5センチ上に持つ場所があった。
僕はそこを持って渾身の力を込める!
その間中女の人は呪文のように 『痛い』 を連発する。
待ってろ!
そうは思うのだが、一ミリも動かない。
力を入れ声を出すのだが、全く動かない。
くそ!
指にもっと力を!もっと力を!!
駄目だ!
ふと見ると駅員さんが何やら叫んでいる。
二人来て、何かを叫んでいる。
『どいてください、どいてください』
駅員さんは車両の中に入るとドアの下部、客席の下のカバーをはずしレバーらしきものを引っ張った。
ガション!
ぷしゅーーー!
圧縮されたガスが一気に解放されドアが動いた。
女の人が解放された。
指がありえない方向を向いているように見えた。
思わず顔をしかめてしまう。
『閉めます、閉めまあす!!』
およそ2分遅れ・・・・?くらいだったろうか?
僕は電車に乗り込みドアが閉まるのを待った。
女の人が泣きながら手を、だらりと下げたまま駅長室へと階段を上がっていく。
やがてドアが閉まって再び普通の時間、普通の通勤時間へと移行した。
しかし・・・・・
その時になって指の関節が猛烈に痛みを訴える。
痛い、痛い、痛い・・・・!
指が曲がらない。
火事場のくそ力・・・とでも言うのだろうか?
それだけの力を込めて僕は開かないドアと格闘したという証だった。
しかし・・・・・
同時に自分の無力さを思い知る。
僕は何も出来ない!
くそ!
もっと力が欲しいと強く思った。
あの女の人は大丈夫だったろうか・・・・・・ごめんね