『むにゃむにゃむにゃたの?』
運ばれて来たハンバーグピラフを口一杯に入れ
何かを言っている櫻井さん
『何を言っているのか解らないですよ』
ちょっと待って....と、言うように手で仕草をして
必死に口をモグモグさせて飲み込むと
『何をしていたの?』
『はい?・・・・・』
『俺が声を掛けた時、大学の中庭で何を
していたの?』
『ああ~~あの時は大学ってどんなところか
見に行っていたんです』
『ふぅ~~ん
あ、松本くんもうちの大学に入るんでしょ?』
『いえ、まだ解らないです
僕は自分が何がしたいのか?
どんな仕事に着きたいのか?
解らないんですだからまだ先の事は解りません』
『ふぅ~~ん・・・・・』
『櫻井さんは
なぜ医者になろうと思ったんですか?』
『ああ、モテるから』
僕は真剣に話をして聞いたのに
ふざけた答えをする櫻井さんをガン見した
『え?・・・・・なに?』
『僕は真剣に聞いているんですよ
なのになんでふざけるんですか?』
『いやいや、ふざけて無いよ』
『え?本当にそんな理由で
医者を目指しているんですか?』
『うん....ダメ?』
『ダメ?....って・・・
例えば、病んでいる人を助けたい!とか
人の役に立ちたい!とか無いんですか?』
『ははぁ~~松本くん
テレビ見るの好きでしょう?』
『はぁ?テレビ?
そりゃ~~
見ますけどぉ~~・・・?』
『そう言うセリフ テレビでよく見るよねぇ~~
まぁ~~確かにそう言う熱い思いを持って
医者を目指す人もいるけどね
俺みたいにモテたい!とか儲かるから!って
奴もいるんだよ
1番多いのは実家が病院だからとか
親が医者だからって奴だね』
『そうなんですね でも
なんだかなぁ~~って感じです』
『フフ....理由なんてなんだって良いんだよ
例えばね
俺みたいにモテたい!って理由でも
モテるためにはいい服を着ないとならない
車も良いのに乗らないとならない
その為にはある程度の収入がいる
収入を得る為には腕のいい医者に
ならないとならない
腕の良い医者は病んでいる人を助けられて
人の役に立つだろう?
入り口はどうであれ目指すところは一緒なんだよ』
『う~~ん
説得出来るような、出来ないような・・・』
『フフ・・・松本くんも理由なんて考えないで
何か無いの?』
『有れば苦労しません
僕、思うんですよねぇ
人生の羅針盤が有れば良いのに....って』
『人生の羅針盤?....なに?....それ?』
『羅針盤って知りません?』
『羅針盤って方向を示す機械でしょう?』
『そうです、船の羅針盤は
大海原で船の行き先を教えてくれるんですよ
だから、人生にも羅針盤が有れば行き先を教えて
貰えるでしょ』
『ハハ~....松本くんは面白いことを言うねぇ
人生の羅針盤かぁ~~
でも俺は嫌だなぁ~~
人に自分の人生を決められたり、ましてや
機械に人生を決められるなんて面白くも何にも無いじゃん』
『それは、櫻井さんが自分でなんでも決められるからですよぅ
僕みたいに決められない人間には便利なんです
まぁ~~実際にはそんなの無いから困っているんですが・・・』
『まぁ~~そうねぇ~~
松本くんは好きな事とか無いの?
あ、テレビが好きって言ってたじゃん』
『別に好きってことは・・・
普通に見るってくらいです』
『じゃあ、休みの日は何してるの?』
『友達と遊びに行ったり、家で本読んだり
映画見たり・・・
あ、たまぁ~~に家族でライブや舞台を観に行ったりかなぁ~~?』
『良いじゃん、映画や舞台、ライブを見ていて
それに出てみたい!とか思わない?』
『出る?・・・それって芸能人ってこと?』
『そうそう、芸能の世界に興味ない?』
『無いです
舞台を何度か観ていて舞台やライブって
どうやって作っているんだろう?って
思ったことは有りますがそれに出たいなんて
思った事は無いです』
『良いじゃん、舞台を作る人
舞台を作る人になる方法を調べてみれば?』
『え?そんな理由で?・・・』
『だから理由なんてなんだって良いんだって
ちょっとでも興味があるものに挑戦してみなよ
進んでみてやっぱり“違う!”って思ったら引き返せば良いじゃん』
『他人事だと思って簡単に言ってませんか?』
『そんな事無いよ
俺だって本当に自分が医者に向いているのか?
なんて解らないよ
でもさぁ今だけじゃん挑戦出来るのも、引き返せるのも・・・ね』
『・・・・・・・・考えてみます』
と、は、言ったが
そんな理由で・・・でも・・・
そんな気持ちでも決めても良いことなのかなぁ?
僕の心はザワザワしていた
つづく