スペイン出発前の最後の仕事 その9. | 水谷孝のブログ「つれづれなるままに」

おはようございます!

 

みなさんご機嫌いかがですか?

 

前回からの続きです、、、

 

支配人のY君が、運転免許証を持っているにもかかわらず、運転が怖くて運転をすることができなかったので、運転免許取り消し中だった兄が、営業回りに出ていた間、ずっと無免許運転をしていたとういう事実は重大でした。

 

実は僕も一度だけ、若かりし頃に、無免許運転をしたことがありました。

 

少しその時のことをお話ししますと、それは僕が20才の時のことで、ちょうど俳優養成所に通っていた頃のことでした。

 

養成所仲間たちと5人で、休憩時間の間にどこかに行くことになり(何の用事でどこに出かけたのかは全く記憶にありません)、別の仲間が乗って来ていた軽自動車を借りて、5人で出かけました。

 

運転は僕がやることになりました。

 

僕は家を出る時は、たとえ車で出かけなくても(当時、僕は軽自動車を持っていました)、念のために運転免許証だけは、常にズボンのお尻のポケットに入れて家を出ました。

 

なのでその日も、100%お尻のポケットに運転免許証が入っていると思っていました。

 

養成所仲間たちと5人でワイワイ言いながら、軽自動車に乗り込み、目的地に向かって出発しました。

 

5人とも20代前半で、仲が良く結束も固く「将来一流の俳優になろう!」と誓い合った仲間たちでしたから、5人が一緒になると、若さゆえに何も恐れず、恐いくらいにイケイケになって(こういうところが若気の至りの失敗に繋がり易いのだと思います。)、その結果白バイ(白いオートバイに乗った警察官)が、近くに隠れて信号無視の車を監視していたことにも気づかず、白バイの目の前で堂々と信号無視をしてしまったのです。

 

もちろん現行犯で捕まってしまいました。

 

交差点のだいぶ手前で、赤信号に変わったので、当然運転者としては止まろうと思ったのですが、仲間たちが「行っちゃえ!行っちゃえ!」とけしかけたので(こういうところが集団心理の恐いところです)、ちょうど横断歩道に歩行者の姿もなくて、横切って来る車も見えなかったので、僕も瞬間的に「この状況なら赤信号で突っ切っても問題ないだろう、、、」と思ってしまい、そのままスピードをあげて赤信号を無視して走り抜けてしまったのです。

 

するとすぐにサイレンの音が聞こえたのです。

 

「ヤバイ!信号無視が見つかったかな!?」と思いながら、バックミラーとサイドミラーで後方を見ると、果たして白バイがこちらに向かって走って来るのが見えたので、信号無視を現行犯で見られたと悟り観念しました。

 

白バイの警察官に止められ、「今、赤信号で止まらなかったね。免許証を出して。」と言われれたので、反射的に何か信号無視をした上手い言い訳をしなくてはと思いました。

 

人間の心理として、弁明の仕方によっては、警察官も人間なので、心が動けば少しは罪を軽くしてくれるのではないかと思いました。(基本的に僕は人の優しさを信じる性格なので。)

 

「すいません。僕たち俳優の玉子なんですけど、今から大切な撮影がありまして、遅れるわけにいかなかったので、赤信号に変わったのは気づいたのですが、ついつい信号無視してしまいました。本当にすいませんでした。」という嘘が簡単に口から出たので、自分でも驚きました。(さすが俳優の玉子です。笑)

 

と嘘の弁明をしながら、免許証を出そうと、お尻のポケットに手を入れると、何と免許証がポケットに入っていなかったのです。

 

一瞬「ヤバイ!このままだったら無免許運転と信号無視のW現行犯だ!」と思った瞬間、乗っていた軽自動車の持ち主の友達が、いつも運転免許証を車の中に置いていることを思い出し、「こうなったら友達の運転免許証を見せて、友達になりきってしまおう。顔写真が全然違うから、バレる可能性はあるけど、運よくバレなければ信号無視だけで済む。もしバレたら最悪だけど、その時は素直に謝るしかない。」と腹を決めて、友達の運転免許証を提示したのです。(友達の運転免許証がある場所を知っていたのは幸いでした。)

 

その時の白バイの警察官が、警察官とは思えぬくらい、とても優しい人だったので、その時の会話を再現したいと思います。(この時ばかりは神様が救ってくれたと思いました。冷や汗。)

 

その時の会話は次のようなものでした。

 

僕が出した運転免許証を受け取りながら、、、

 

白バイ「そうか君たちは俳優の玉子なのか。それは大変だね。でもそれはそれ、これはこれだから、信号無視は絶対にダメだよ。(と言いながら、運転免許証の顔写真と僕の顔を見比べて)それにしても免許証の写真はずいぶん違って見えるね。」

 

と言ったのです。

 

写真の友達は僕より6才年上で、しかも友達は年齢よりも老け顔だったので、当然免許証の中の友達の顔写真と僕の顔は全然違いました。(笑)

 

その白バイ警察官は、元々の性格が、警察官にしては珍しく、違反した人間のことも、けっこう優しい目で見てくれる性格のようで(警察官の中には、違反者=犯罪者のように見る人もいますから)、写真の顔と僕が別人だとは、1%も疑わなかったのですから、一瞬笑いそうになってしまいました。(こういう時は、笑ってはいけないのですが。笑)

 

それでも、一応免許証の顔写真と僕の顔が全然違う説明をしようと思いました。

 

僕「その写真を撮った時は、ちょうど病気になっていた時だったので、目もくぼんで頬もだいぶこけてました。今は元気になり、以前の顔に戻りました。」

 

さすが俳優の玉子だけあって、自分でも驚くほど、上手い嘘が口から出てしまいました。(内心で「普通はこんな嘘は通じないだろうなぁー」と思いつつ、、、笑)

 

白バイ警察官は、僕の説明に何の疑問も持たず(この時に、この警察官は人の言葉を素直に信じる人なんだなぁと思いました。)、グルーッと車の中を見渡しながら、みんなにこう言ったのです、、、

 

白バイ警察官「5人も乗ってて、誰も赤信号だって注意してあげなかったのか?」

 

と言ったのです。

 

実は軽自動車は、法律で最大4人までしか乗ってはいけないのです。

 

ですから軽自動車に5人も乗ること自体が違反なのですが、僕たちはそのことを知っていましたが「バレなければいいだろう」と思って、5人で乗っていたのですが、その白バイ警察官は、しっかりと5人乗っているのを確認した上で「5人も乗ってて、誰も赤信号だと注意してあげなかったのか?」と言ったのですから、この白バイ警察官は優しすぎるあまり、軽自動車に5人で乗ることが違反だということに全く気がつかなかったのだと思いました。

 

けっきょくその時の白バイ警察官は、罰金のためのキップも切らず、減点もせずに「今度から信号はちゃんと守るように。それから俳優の修行も頑張って。」と励ましてくれて、無罪放免してくれたのです。

 

世の中にはこんな優しい警察官もいるのだなぁと、何だかとても嬉しい気持ちになりました。

 

以上が僕の若かりし頃の、ただ一度の無免許運転の顛末なのですが、僕の場合は、典型的な「若気の至り」と言うものでしたが、兄の無免許運転は、僕のケースとは全く異なり、年齢も38才という分別のある年齢で、しかも家庭もあり、さらには部下たちのお手本となるべき、責任重大な総支配人という立場だったということを考慮したら、絶対にあってはならないことでした。

 

兄は、二度も免許取り消しになったほどでしたから(二度とも違法駐車の減点によるものでした)、僕の目から見ても、こと車に関しては責任感が薄過ぎました。

 

なのでY君から兄の無免許運転のことを聞いた時には、頭の中でいろいろなことを考えてしまいました。

 

「もしも兄貴が人身事故を起こしていたら、どう責任を取ればいいんだ、、、」とか「みんなで一生懸命に頑張って、愛され始めたホテルの信用が、自分の兄貴の不始末で一瞬で崩れ落ちたら、、、」とか「自分がいなくなったら、兄貴は大丈夫だろうか、、、」などなど。

 

兄をすぐに呼んで、厳しく自覚を促したところ、兄も自分のやったことの重大さに気づき、うなだれてしまい、強く反省していたので、もうやってしまったことは仕方がないので、前向きに考えようということになり、兄には翌日から自動車教習所に通ってもらって、可能な限りの集中講義を受けてもらい、僕が退職するまでの1ヶ月で運転免許証を取ってもらうことにしました。(運転は上手だったので、すぐに取れるだろうと思いました。)

 

当時の宇都宮の自動車教習所は、東京の自動車教習所のように混雑していなかったので、講習料さえ払えば、一日2時間でも3時間でも、実技講習を受けることが出来たのが幸運でした。

 

僕がいるうちに運転免許証を取ってもらわなければ、安心して退職出来ませんでした。

 

続きは次回のお楽しみに!

 

それではまた来週の金曜日にお会いしましょう!

 

みなさんお元気で!

 

スペインのイルンより心を込めて、、、

 

水谷孝